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2023.03.29
【執筆者プロフィール】
住宅proアドバイザーたのさん
30年地域ビルダーに勤務、現在住宅アドバイザーとして個人住宅のコンサルタントとして活動中。長年の経験を生かして、住宅購入を検討する方々に役立つこと、迷うところ、悩むところに寄り添った情報を発信していきます。
買付証明書を提出する
希望の土地が運よく見つかり、先ず取り交わす書類が「買付証明書」です。
多くの方が初めての不動産取引で最初に作成することになる買付証明書。初めてのことですし高額契約の窓口となる書類ですので緊張してしまいますよね。
買付証明書は、不動産会社によって準備されている場合が多く会社によっては「買付申込書」「購入申込書」「買受証明書」などさまざまな名称がありますが、基本的な意味合いは同じもので「私は、この物件をこの金額で購入します」という意思表示のための書類となります。
よくここで勘違いをしてしまう人もいますが一般的に「買付証明書」は購入希望者の意思表示を伝える書類であり、物件の優先順位を決めるものではありません。ですので買付証明書を作成したから、もうこの土地は自分のものなんて早合点してはいけません。
では買付証明書って何?
買付証明書は、売主や仲介している不動産会社に対して購入希望の意思表示を伝える書類ですが、法的には売買契約書と違い、法的な取り決めなどは原則的にありません。
不動産業界に昔からある慣習で提出の義務はありません。また、書式や記載内容の取り決めもありませんので、仲介する不動産会社により書式や内容も変わってきます。
それでも基本的に記載する内容には一定の共通項もあります。
主な内容は、
-------------------
①購入希望額
②購入希望物件
③希望契約日
④有効期限
⑤手付金の設定金額
⑥特約条項(ローン特約など)
-------------------
などが記載事項となっている場合が多くあります。
書式や記載内容に決めごとがありませんので作成している不動産会社によっては、勤務先、年収、住宅ローン借入金融機関、自己資金内訳などを求められるケースもあります。
また、売買契約と違い買付証明書では金銭の支払いは原則発生しません。しかし各不動産会社によって記載内容が異なるように証拠金や申込金として一定の金額が必要な場合もあります。
この場合は、売買契約が成立しなかったとき支払った金銭が無条件で返却されるかなどしっかり確認しておきましょう。
優先順位がとれないのなら買付証明書なんていらない?
買付証明書は、一物件に一枚ということはなく契約までの間に何枚も作成されることもあります。
この場合は買付証明書の作成年月日で優先順位がつくことがありませんので、売買契約が決まるまでは気を抜くことができません。
しかし、不動産会社によっては、買付証明を優先順位として扱う会社もありますので、買付証明の説明を受けるときに必ず確認しておきましょう。もしも、買付証明の日付を優先順位とするという会社であれば、内容に問題がなければ速やかに買付証明書を提出しましょう。
優先順位がないなら買付証明書なんか無くてもいいか…なんて思ってはいけません。作成日が優先順位と直結することはありませんが、買付証明書が全くの無駄なんてことは無いのです。
買付証明書は、購入意思を伝えるだけでなく、売主が販売先を決めるための大切な書類だからです。これは単に購入希望額が高い人を優先するといったことでなく、大切な資産を誰に託すのかを決める参考資料になるという一面があるからです。
以前にお手伝いさせていただいた売主様は、馴染みのあるご近所のためにも購入者は金額だけでなく家族構成や人柄も加味したいとのお話をされていました。
買付証明書には、記載事項がありますがその土地を本気で購入したい場合、買付証明書はただの書類として記載せず、その他の欄を活用して自分を知ってもらうエントリーシートだと思って記載すると、思わぬ効果が生まれる場合もあります。
土地に対する愛情や本気度を伝えるツールとして大事に活用してみてはいかがでしょう。
もちろん売主様によって重視するポイントは違いますので、仲介不動産会社の担当者に売主様の人柄などを教えてもらい相手に響く買付証明書にしてみましょう。
一般的に売主様の目線で考えるとプラスとして考慮される内容は
・職種(職業差別はありませんが属性として考慮されるケースがあります)
・勤続歴や所得(収入の安定性や資産状況の考察)
・購入希望の動機(土地にたいするこだわりや必要性の大きさ)
購入できなくても意味がある
人気の物件は、何枚も買付証明が作成され残念ながら、購入できない場合もあります。それでも買付証明書を作成した事実は残り、その後の土地探しのプラスとなることもあります。
買付証明書を作成したということは、不動産会社からみると、条件さえ合致すれば契約する意思の固いお客という位置づけになります。新しい土地があれば一から新規のお客さまを探すより、条件が合えば確実に購入する可能性のあるお客様に優先して情報を流す方が早く売却できると思うものです。
結果、良い情報を一般のお客様に先んじて知ることが出来たりしますので、買付証明書の作成は無駄にはなりません。
他に気になる土地が見つかった買付証明書のキャンセルは可能?
買付証明書は売買契約と違い、法的根拠がありませんので、原則無償キャンセルは可能です。ただし、契約行為の準備段階に入り、書類作成などの実務に入ってからの一方的なキャンセルは、損害賠償の対象になることもありますので注意が必要です。
また、一方的なキャンセルは信義を重んじる不動産の商習慣上、売主・仲介業者共に嫌がります。結果、その後の土地探しのマイナスの影響を及ぼすことがありますので慎重な判断が求められます。
ちなみに買付証明書は大切な書類ですが、実印を使用することは基本ありません。
不動産の売買契約の手続で実印が要求されるシーンは、不動産売買契約書・金銭消費貸借契約書(住宅ローン契約)が主なものですが法的には認印でも契約は有効です。
実印を求める理由は
①契約の重要性を意識づけるため
②本人確認のため(取引の安全性の確保)
以上のような理由から実印を求められたりします。かと言って、無意味に実印を拒めば手続がスムーズに進まなくなりますのでご注意ください。