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「 土地探しのコツ」 バックナンバー

危険な造成地の見分け方【土地探しのコツ 14】

2021.12.01

【執筆者プロフィール】

住宅proアドバイザーたのさん

30年地域ビルダーに勤務、現在住宅アドバイザーとして個人住宅のコンサルタントとして活動中。長年の経験を生かして、住宅購入を検討する方々に役立つこと、迷うところ、悩むところに寄り添った情報を発信していきます。

https://kura-labo.com/

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造成地における事故

激甚化する自然災害、予測を超え毎年のように繰り返される「過去に例のない豪雨」のニュース。テレビ越しに見る水害の映像から『水害は怖いし、水害の心配のない高台の見晴らしの良い土地がいいなぁ』そんな思いを持って土地探しをしている方も多いのでないでしょうか。

ところがそんな思いを持って土地を探している人が目を疑う映像が今年連続して発生しました。地面が崩れ、流れ出る衝撃…。

2021年6月25日、大阪市西成区の住宅地で擁壁が崩壊し、2棟(計4戸)の住宅が崖下に崩落する事故。当日に在宅していた3人は、事前に避難して事なきを得ましたが、住宅裏の崖が崩れ、家が倒壊し残った1棟も崖下に引っ張って解体した映像に驚いた方も多かったのでないでしょうか。

そして翌月の7月3日に静岡県熱海市の伊豆山付近で発生した大規模な土砂崩れは周辺の家屋を飲み込み多くの人命と財産を奪いました。この災害では起点付近で造成された「盛土」が法令基準を大幅に超える高さであったと指摘され元の所有者に遡って責任問題となってきています。

二つの事件は、原因も内容も違うものですが丘陵地における宅地の危険性を考えさせられる災害でした。

大阪の擁壁崩壊は、土と石のみでつくられた石積みの内側から、長い年月で土が流れ出たことが原因だと考えられています。

大阪の擁壁崩壊は、土と石のみでつくられた石積みの内側から、長い年月で土が流れ出たことが原因だと考えられています。

造成工事とは…

先に紹介した丘陵地だけでなく、宅地化にともない大小はありますが造成工事は必ず実施されていると思って間違いありません。それでは、造成工事とはどんな工事なのでしょう。

造成工事とは一般的に傾斜になっている土地や山、段差のある田んぼや畑がある土地を、宅地や駐車場など用途にあわせて活用できるように整備する工事のことです。

ただ土地を平らにすればいいという単純なものではなく、地震などの災害時でも安全性が配慮される必要があります。そのため宅地造成等規制法にもとづいて、対象となる宅地造成には区域内の都道府県に申請しなければなりません。

造成工事の種類

●土地の形状を整える

宅地化する前の土地の多くは土地の状況にあわせて変形しており、そのままでは効率的な宅地になりません。そこで土地の有効利用を進めるために造成工事を行い土地の整形化を図ります。

●土地の高低差を整える

田んぼや畑、湿地や沼など道路より一段低くなっている土地は、道路との利便性をあげるため埋め土などの造成工事をする必要があります。

また、傾斜のある土地でも平らな宅地をつくるため「切土」「盛土」と呼ばれる造成工事を行います。

●土地の土質を整える

田んぼや沼など宅地として向かない土質の場合は、現況の表土を取り除き宅地に適した土に入れ替える工事を行います。

その他に宅地の場合は、インフラと呼ばれるガス・水道・下水道の設置、宅地の排水路(側溝)や大規模な造成工事の場合は雨対策として宅地の面積に合わせた調整池の設置などを含めて造成工事と考えられます。

擁壁をチェックする

団地造成した宅地を見て歩くと、高低差のある土地に造られた擁壁を目にすることがあると思います。実は、この擁壁をよく見ることで危険な造成地を見分けることができるのです。まず見てもらいたいのが「擁壁の種類」です。擁壁の種類は大別して3つ。

■ 石積み擁壁

石積み式の中でも「空石積み擁壁」「練り石積み擁壁」の2種類があり石やブロックを積んだだけの「空石積み」に比べ石やブロックをコンクリートで固めた「練り石積み」の方が強度があるといわれています。どちらも古い住宅地で見かけられる擁壁で強度的に注意が必要な場合が多く見られます。

■ ブロック積み擁壁

正方形や長方形のブロックで作られた擁壁で一般に「間知ブロック擁壁」と呼ばれています。住宅地で5mくらいの高低差がある場所で多く見られます。

■ 鉄筋コンクリート擁壁

コンクリート擁壁は、新しい造成地で多く見かけるタイプで大別すると「鉄筋コンクリート擁壁」と「無筋コンクリート擁壁」に分かれます。現場でコンクリートを打設してつくる鉄筋コンクリート擁壁は、強度が高く垂直に立てることができるため敷地を有効に活用できます。

危険な擁壁とは

擁壁に関する法律である「宅地造成等規制法」が制定されたのが昭和36年ですので、それ以前に施工された擁壁は要注意といえます。また、宅地造成等規制法施行後であっても老朽化やその後のメンテナンス状態では危険な擁壁となっている場合がありますので注意が必要です。

それでは、どんな擁壁が要注意なのかみていきましょう。

① 空積み擁壁
擁壁の種類で説明した「空石積み擁壁」で石を積み重ねただけでコンクリートで一体化していないため高くなるほど不安定な状態になります。

ちなみに大阪市の西成で発生した崖崩れは空石積み擁壁が崩壊した結果発生した事故でした。古い石積み擁壁は、たわみや水漏れなどが発生している場合は危険な兆候で要注意といえます。

② 増し積み擁壁
もともとの擁壁の上に後から増し積みした擁壁です。このような擁壁は、全体の土圧や水を含んだ時の荷重を考慮していないことが多く、危険な擁壁といえます。

③張り出し床板付き擁壁
土地の有効活用のため、既存の擁壁の上に床板を突き出した状態の擁壁です。張り出した部分の土台が不安定です。

④二段擁壁
擁壁のすぐ上に新たな擁壁を積んだ状態の擁壁です。安全性を確認し、場合によっては擁壁をつくりなおす必要があります。

擁壁の状態をチェックする

危ない擁壁の形状を紹介しましたが、危ない擁壁の形状だけでなく擁壁の状態も注意深く観察することで危険な状態にあるか判断することも可能です。危険なシグナルとして代表的なものは…

□ 亀裂、ズレ
石積みやブロック積み擁壁では、亀裂やブロックなどがズレているケースがあります。このような擁壁は、すでに危険な状態で水害や地震の時に大きな被害を発生させる危険があります。

□ 膨らみ
石積みやブロック積みだけでなく、既製品のコンクリート擁壁を並べた場合も、土圧によってズレや膨らみがでているケースがあります。このようなケースも危険な状態といえます。

□ 水抜き
擁壁には決められた基準で水抜きが施工されています。水抜きの穴がない、詰まっていて排水されていないなどの状態が見れる場合は、土圧以上の力が加わっている場合があるので要注意です。

このような状態は、危険性だけでなく宅地内の排水がうまくいっていないケースが考えられ宅地としても要注意です。

擁壁から判断できる危険性をまとめてきましたが、造成地では擁壁だけでなく周辺環境をよく見ることで危険を回避できるケースもあります。

周辺の状況も観察する

宅地やそれに接する擁壁だけでなく、宅地の周辺も観察しながら歩いてみましょう。そこには、危険な造成地のサインが隠れているかもしれません。

観察するポイントは、①道路や側溝との段差や隙がないか②近隣家屋で基礎、犬走のクラック(ヒビ)がないか③擁壁などにがないか、ジメジメしていないかなどがわかりやすいポイントです。

造成地で起こる不同沈下の種類

擁壁にスポットを当てて危険な造成地の見分け方をみてきましたが、一見平らに見えて安全そうな宅地にも危険は隠れています。

見えないリスクのおかげで、不動沈下を起こしてしまわないように宅地の成り立ちを事前に不動産会社などに確認しておくことも大切です。

見えない不動沈下の原因としては以下のようなものがあります。

・地中の良好な地盤が傾いている
・盛土が固まっていない/地盤が軟弱
・建物が切土・盛土にまたがっている
・杭が良好な地盤に届いていない 等

いずれも、事前の調査と地盤調査で知ることが可能ですが、予め見えないリスクがあることを知って土地を検討することが大切でしょう。

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