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2021.04.14
【執筆者プロフィール】
住宅proアドバイザーたのさん
30年地域ビルダーに勤務、現在住宅アドバイザーとして個人住宅のコンサルタントとして活動中。長年の経験を生かして、住宅購入を検討する方々に役立つこと、迷うところ、悩むところに寄り添った情報を発信していきます。
通路部分で接道する危うさ
誰しも希望地で少しでも安く土地を手に入れたいもの。そんな時に目にする物件が「旗竿地」という形状の土地。
名前の通り旗竿のような形状をしており、旗の部分が広く竿状に伸びた通路部分で接道するタイプの土地です。
市価の1~2割程度安く買うことができ、条件さえ合えば、同じ総体予算で建築やエクステリアに予算を使ってより魅力的な住宅が建てられるポテンシャルを持った土地、それが「旗竿地」です。
そんなポテンシャルを持った土地ですが、その形状ゆえの注意点も存在します。事前に注意ポイントを知って、魅力的な旗竿地を見つけましょう。
良い竿が良い土地の決め手
良い竿選びの第1条件は、もちろん道路と2m以上接すること。まずこれが最低限クリアしてなければ建築もできません。
道路に2m接していれば、あとは心配ないかと言えばそうでもないのです。通路部分には条件があり、一定の条件を満たさないと建築することができません。
接道が2mの次に大切なのは、通路部分の幅員が2m未満の場所がないことです。通路部分の一部でも2m未満の場所があると建築不可となりますので通路の形状にも注意しましょう。
通路部分の取り扱いは各都道府県で条例として定められており、内容も都道府県によって違いがあります。
例えば、東京都では通路部分(竿の部分)の長さが20m超になると、道路に接する間口の幅員が3m以上必要となります。
また、この規定は建物の規模や構造により決められており、同じ20m超でも延床面積200㎡超の建物を建てようとする場合、必要となる幅員は4mとなります。ところが、別の自治体では通路部分が20mを超えていても、通路部分の幅員が2mで建築可能な場合もあります。
このように、各自治体で規定が決められているので、事前に所管する行政機関の建築課などで確認しておきましょう。
旗竿地のトラップ
住宅街の中のミニ開発した宅地には旗竿地が多く、通路部分の幅員が2mでは車の出入りも不便なため、お互いに土地を出し合って図(1)にあるような形状で販売している土地があります。
この場合に注意するべきポイントは2つ。
まず、ひとつ目は通路部分の権利形態。
一般的な旗竿地の場合は、図(2)の様に自分の敷地の延長として接道しており敷地と通路部分で一体の敷地となります。
この場合は、①と②のそれぞれの敷地単独で建築計画を進めることができます。その結果、協定書などが無い限り個々に権利があり将来的に塀などで分断される可能性もあります。
次にみられる形態としては相互持合型の通路。
この場合、通路部分を隣地と交換して所有する(図3)形態となっており建築計画をする際には、お互いに相手の同意が必要となります。
これにより通路部分一方的に使うことができず、常に一体の通路として使えるようにしています。
通路部分が、分筆されていない共有型もあります(図4)。
このようなケースだと、常に一体の通路として使うことが、建築の際には共有者の承諾が必要となります。
2つめの注意点は、複数で使用する際の取り決めについてです。
どの形態にしても、通路部分の使用規則や負担などの協定をしっかり決めておく必要があります。
協定書や覚書などの書面がないと、清掃・補修・費用負担などで後にトラブルが発生しやすいので注意しましょう。
水路には危険がいっぱい
建築をするには接道義務で道路に2m以上接する必要がありますが(前回参照)、道路と敷地の間に水路があった場合はどうなるのでしょうか。
敷地と道路の間に水路がある場合、そのままでは接道義務を果たしていませんので、家の建築は不可となります。
しかし、水路が敷地との間に存在するケースがすべて不可となるかと言えばそうではありません。自治体ごとに基準が違いますが、一定の基準を決めて建築が認められています。
例えば、水路の管理者から「水路占有許可」を得て基準に沿った構造で幅2m以上の橋を架けることで建築が認められるケースが多くあります。
このように水路をまたいだ敷地で建築するには、余分な手続きや橋の工事費用、使用料、転落防止用の手すりの設置などが発生するケースがありますので安いからと言って安易に飛びつくのは厳禁です。
また、目で見てわかる水路とは別に「暗渠(あんきょ)」と言われる地下に埋設されていたり、蓋をかけられていたりして見た目ではわからない水路もあります。
このような場合は、管轄する法務局で公図を取得し敷地と道路の間に何もないか確認する必要があります。※登記情報提供サービスを使うとオンラインで取得することも可能です。
地図だけに存在する赤や青い道
道路との接道を邪魔する存在として水路について書いてきましたが、実際に活用されている水路とは別に公図(旧絵地図)上だけに存在する赤道・青道と呼ばれる土地があります。
現在の公図では地番のない土地で今の公図の前、絵地図の時に赤や青で色分けされていた土地です。
公図を調べて道路との間に地番のない土地があった場合はどうすれば良いのでしょう。
地番の無いこのような土地は「法定外公共物」と言い、そのままでは接道がされない状態になりますので所轄官庁からの払い下げの手続きを行う必要があります。
もちろん払い下げには土地代・登記費用・測量費などの費用が余分にかかることになりますので土地の購入前に十分確認しておきましょう。
住宅を建てるうえで、守るべき『接道義務』。今まであまり意識してこなかった人も多いと思いますが、接道義務の基本である「道路」の基本を知り、「接道」のポイントを押さえることができれば、宅地購入で大きな失敗を招くことはなくなるでしょう。