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2022.01.19
【執筆者プロフィール】
住宅proアドバイザーたのさん
30年地域ビルダーに勤務、現在住宅アドバイザーとして個人住宅のコンサルタントとして活動中。長年の経験を生かして、住宅購入を検討する方々に役立つこと、迷うところ、悩むところに寄り添った情報を発信していきます。
大規模な造成住宅と災害
前回、造成地内にある擁壁にスポットをあてて造成地のリスクを解説しましたが、今回はもう少し範囲を広げて造成地に潜むリスクについて考えてみます。
造成地が被害を受ける代表的なケースとして地震による災害があります。実際、阪神・淡路大震災・中越地震や東日本大震災等において、谷や沢を埋めた造成宅地又は傾斜地盤上に盛土した大規模な造成宅地において、地滑り的変動(滑動崩落)が生じ、造成宅地における崖崩れや土砂の流出による宅地への被害が発生しました。
筆者も地震による宅地災害を中越地震発生時に体験しました。建築のお手伝いをさせていただいたお宅が何軒かある宅地で、道路や住宅が見る影もなく崩れていきました。
丘陵地を造成した約500戸の住宅が建つ造成地で開発当初は、住宅博が開催されるなど、マイホームを夢見る家族が集まる新興住宅地でした。まさか地震でこんな被害が発生するなんで誰も想像していなかったでしょう。
このような災害リスクを事前に知るには、どのようにすれば良いのでしょう。
大規模盛土造成地マップを活用する
造成が完成した後は、ほかの土地と同じように見える造成地。個人が造成地を見て、そのリスクを知るのは至難の業ですが、行政では「大規模盛土造成地マップ」を作成して、大規模盛土造成地の有無と安全性の確認を行い、危険個所には滑動崩落防止工事など予防対策を進めています。
ただし、これらのマップ化は大規模盛土造成地のみで、すべての造成地が対象ではありません。それでは、どんな造成地が対象なのでしょうか。
対象となる大規模造成地とは…
盛土造成地のうち以下の要件に該当するものを「大規模盛土造成地」とよびます。
1)谷埋め型大規模盛土造成地
盛土の面積が、3000㎡以上の造成地。
2)腹付け型大規模盛土造成地
盛土する前の地盤の水平面に対する角度が20度以上で、かつ、盛土の高さが5m以上の造成地。
その地域の大規模造成地は、行政のホームページで閲覧することができますので、まずは、検討している宅地が対象となっているかどうか確認してみましょう。また、第13回で紹介した「ハザードマップポータルサイト」(※1)を使って調べることもできます。
もしここで、検討している宅地が該当しているからと言って即危険な造成地ということではありません。
行政では対象になった大規模盛土造成地について安全性の確認(変動予測調査)を行いその結果(調査の予定も含む)を公表しています。また、全国の市町村での調査・進捗状況は、国土交通省のホームページ(※2)から確認することもできます。
重ねてチェック
大規模盛土造成地のチェック方法を述べてきましたが、危険が潜んでいるのは大規模盛土造成地だけではありません。
前述のハザードマップを活用して、過去の地形と現在の地形の変化を重ね合わせて、検討している宅地が、盛土をされている土地なのか、切土がされた土地なのかも、事前にチェックしておきましょう。
一生に一度の建築計画。土地の購入時のひと手間で、その後の安心度が大きく変わる宅地選びです。どんなに高性能な住宅を建てても、地盤から被害を受ければ元も子もありません。
販売だけを目的とした不動産会社だと、買付や仮予約など急がせる会社もありますが、土地の購入にはしっかりと時間と手間をかけて、納得と安心のできる土地を選ぶようにしましょう。
【外部リンク】
※1 ハザードマップポータルサイト
2 国土交通省 宅地防災:大規模盛土造成地マップの公表状況等について