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2021.10.13
【執筆者プロフィール】
住宅proアドバイザーたのさん
30年地域ビルダーに勤務、現在住宅アドバイザーとして個人住宅のコンサルタントとして活動中。長年の経験を生かして、住宅購入を検討する方々に役立つこと、迷うところ、悩むところに寄り添った情報を発信していきます。
自然災害の頻発・激甚化
家は「家族が安心して暮らせる場所」そんな当たり前の前提が近年大きく変化してきています。国土交通白書2020では、日本における代表的な自然災害リスクとして(1)地震・火山活動(2)地球温暖化に伴う大雨・短時間強雨による洪水・土砂災害・台風の大型化が自然災害リスクとしてあげられています。
特に、洪水や土砂災害を引き起こす大雨や短時間強雨の回数は、近年顕著に増加してきており、大雨にあたる日降水量が200㎜以上となる年間日数は「1901年から1930年」と「1990年から2019年」で比較すると約1.7倍になっており、長期的な増加傾向が見られます。
また、短時間強雨についても「1976年から1985年」と「2010年から2019年」までで比較すると約1.4倍と大雨と同様増加してきています。
近年の大雨や短時間強雨の増加は都市の排水機能を大きく上回り、都市部において頻繁に洪水が発生するケースも増えてきました。また、記憶にも新しい令和3年7月には静岡県熱海市伊豆山地区で大規模な土砂災害も発生し26名もの尊い命が失われました。
ニュース映像では、地元の住人が「今までこんなこと(災害)なんてなかった」と話されている場面もありましたが、今までにない大雨や短時間強雨が激甚化し、全国的に災害のリスクが高まっています。
事前に調べておくこと
それでは、災害から身を守れる土地をどのように探せば良いのでしょう。
土地の売買では重要事項説明で自然災害の防災に関する規定に乗っ取り、説明があり、ハザードマップ(被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図)も添付されたりしますが、契約の段になって災害リスクを知ったのでは遅すぎます。
「やっぱり今日の契約は止めます」なんてなかなか言い出し辛いですよね(本来は、もちろん契約前ですので断っても問題ないですが…)。
さらに近年の水害の増加に対応し、2020年7月17日に宅地建物取引業法施行規約の一部が改正され、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を重要事項説明として新たに義務化されました。
ハザードマップを使いこなす
繰り返しになりますが、これらの災害リスクは土地の購入を検討している段階でしっかりと事前に知っておくべき事柄です。不動産業者や建築業者任せしないで自分たちでハザードマップを活用して予め検討しておくことが大切です。
しかし、前述の説明事項の表を見て「よし!自分で調べよう」そんな風に思える人より「面倒くさい」と思ってしまう人の方が多いでしょう。
そんな人は国土交通省『ハザードマップポータルサイト』https://disaportal.gsi.go.jp/を活用してみましょう。
操作は、簡単で2つの方法があり、ひとつが「重ねるハザードマップ」さまざまな災害リスクを一枚の地図に重ねて表示することができます。
もうひとつは「わがまちハザードマップ」で各市町村が作成したハザードマップへリンクし、市町村ごとのハザードマップを閲覧できます。
重ねるハザードマップでは、通常の自然災害にともなう洪水(想定最大規模)、土砂災害、高潮(想定最大規模)、津波(想定最大規模)が重ねてチェックできるだけでなく、災害時における道路防災情報も表示することで家族で避難経路を決めることにも活用できます。
また、地形分類では検討する土地周辺の成り立ちや地形特有の自然災害リスクを知ることができ、近年の地震で聞く機会が増えた液状化の危険リスクも知ることができるなど知っておいて損は無いツールとなっています。
過去を知り見えないリスクを回避
多様な機能を持つ「ハザードマップポータルサイト」ですが、特筆すべき機能がもうひとつ。
それが重ねるハザードマップ内にある並べて比較機能です。この機能を使うと画面を二分割して現在の最新航空写真と過去の古い写真を同じ尺度で比較することが可能になります。
現在では知りえることのできない土地の歴史を写真で見ることができ、検討している土地が宅地になる前何だったか知ることができます。
宅地造成する前が田んぼだったり、谷間を埋めて造成したなんてことも写真で視覚的に確認することができて、隠れた災害リスクを見つけられたりします。
過去の建物も重要
過去の歴史を見ていく時に、特に注意してもらいたいのが地形的な変化だけでなく過去どのような建物が建っていたかも非常に重要なポイントとなります。
私が過去に体験した事例だと大きな製造工場跡地の造成地で新築しようとしたときに地中深くから工場の基礎の一部が発見されて柱状改良ができなかったケースがありました。
また、木材工場跡地ではおが屑が大量に埋設されていて同じく柱状改良ができなかったケース、薬品工場で土壌が汚染されていたケースなどがありました。
現在は、埋設物・土壌汚染に関しては売主に撤去・告知義務がありますので状況は違いますが、検討している土地に過去どのような建物がたっていたかも事前に調べておきましょう。