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2022.08.03
【執筆者プロフィール】
住宅proアドバイザーたのさん
30年地域ビルダーに勤務、現在住宅アドバイザーとして個人住宅のコンサルタントとして活動中。長年の経験を生かして、住宅購入を検討する方々に役立つこと、迷うところ、悩むところに寄り添った情報を発信していきます。
業界ルールじゃ当たり前!?
マイホームを取得しようとすれば、まず最初に探し始めるのが私だけの理想の土地。住み慣れた実家の周辺で探したり、職場へのアクセスが良いエリアで探したり、探す基準は人それぞれです。
自分の希望に合わせて土地を探して、不動産情報サイトや不動産会社などをまわっていると、ときどき目にする「建築条件付き」の文字。
比較的に条件の良い分譲地だと、多くの土地が「建築条件付き」に指定されていることも珍しくありません。
建築条件ってナニ?
それでは「建築条件付き宅地」とは、どのような土地なのか見ていきましょう。
建築条件付き宅地販売とは、文字どおり販売に際し「条件」のある土地のことを指します。
その条件とは、端的にいうと「この土地に家を建てる場合、一定期間内に指定された施工会社に依頼して家を建てる契約をする」。これが土地の購入に際して課せられた条件となっています。
「条件」を具体的に分けると「指定された施工会社に依頼すること」と「その会社と一定期間内に請負契約を結ぶこと」の2つあるということが分かります。
建築会社はどこになるの?
指定された施工会社とは、どこになるのでしょう?一般的に多い形態は、ハウスメーカーが分譲地を一定規模で購入して、自社の建築条件付きで販売しているケースや、ハウスメーカーの子会社や関連会社の不動産会社が購入して建築条件付きで販売している土地です。
自分が検討している建築会社が売主の場合は問題がありませんが、まったく違う会社で建築を考えていた場合は、指定されている会社と、ご自分たちが望んでいる建築会社とを比較検討することが必要となります。
一定期間ってどのくらい?
指定された建築会社が希望していた会社と一致していた場合は良いですが、違っていた場合は大変です。まずは、指定された会社の建物を知ることから始めなければいけない事態ですし、なおかつ間取り、見積もりと確認することが多岐にわたり、直ぐに決めるなんて難しいというケースが多く見受けられます。
また、一定期間内とは、たいてい3カ月程度などが多く設定されております。ただし販売されている土地ごとに異なる場合がありますので具体的な検討の前に、予め確認しておくことが重要です。
売建住宅と呼ばれることも
このように土地の売買契約をしてから3カ月という期間内に、家の間取りや仕様をほぼ決めて、指定された施工会社と請負契約を結ぶ必要がある土地を、建築条件付き土地と呼び、業界では「売建住宅」とも言われます。
「建売住宅」は住宅を建築(確認許可)したあと決められた建物で、土地と一体で販売されている形態に対し、建築条件付きは土地を販売した後に指定された施工会社が家を建てる形態となっているためです。
違法じゃないの?
購入した土地なのに条件を付けられなんて納得できない!「違法なんじゃないの?」。そんな疑問を持たれる人もいらっしゃるかもしれません。ここで問題になる可能性がある法律は、独占禁止法(正しくは「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といいます)です。
建築条件付き宅地販売において抵触する可能性でいうと「抱き合わせ販売」と「不必要な商品の強要」が考えられます。しかし、現段階では建築条件付き宅地販売が独占禁止法に問われた事例はありません。
宅地の提供が少なく希少性のあるエリアにおいては、構成要件が満たされるケースもあるのではと思われますが、不動産業界的には違法性がないとされています。
そうは言っても、建築条件付き宅地販売には一定の業界ルールが存在します。基本となっているのは、業界が自主規制により制定した「業界ルールの3原則」です。
その3原則がこちら。
①土地契約後 3カ月程度で建築請負契約を締結する。
②建築を請負う業者は土地の「売主」(その子会社含む)またはその代理人。
③建築請負契約が成立しない場合は、手数料や預かり金、手付金等の受領金は返還する。
業界ルールの改正
いま現在も、建築条件付きの基本的なルールとして、上記の3原則に乗っ取った契約条件で販売している宅地が多く存在します。土地を探したことのある人で、建築条件付きの土地を検討して詳細を調べたことのある人なら、見たことがあるのではないでしょうか。
しかし、2003年(平成15年)4月10日付、社団法人首都圏不動産公正取引協議会による構成団体長宛通知、および7月23日付 『不動産の表示に関する公正競争規約施行規則』 の改正により、業界ルールの3原則は、次のように取り扱われることとなりました。
①建築請負契約までの期間を設けず一定期間とする。
②建築を請け負う業者を指定しない(自己の指定する建設業を営む者とする)。
③建築請負契約が成立しない場合は、停止条件だけでなく解除条件付きも可。
この変更内容を見るとずいぶん消費者寄りの内容になったと思えるのですが、実際の運用では、そこまで大きな変更がないのが実情ではないでしょうか。期間を設けずとは、書きながら一定期間という一文を入れたところに業界に対する配慮が感じられます。まあ、いつまでも建築をしないということでは宅地販売の目的から考えてもやむを得ない内容だともいえます。
また、②の業者を指定しないと書くと、自由に施工会社を決められるように感じる方もいるかもしれませんが、自己の指定する建築業を営む業者としていますので実際は何も変わっていないともいえます。
この改正の中で特に注意してほしいのが、③の停止条件だけでなく解除条件付も可となったところです。一般には馴染みが無い停止条件と解除条件という言葉。不動産業界にいる人間でも混同している人がいるほど分かりづらい言葉ですので、改めて言葉の意味を解説していきましょう。
まず、停止条件付き売買契約とは、条件が成就したときに初めて、契約締結日までさかのぼって効力が発生します。これは逆に言えば、売買契約を締結しても、停止条件が成就しない限りは、契約の法的効力は発生しないのです。
もし条件が成就できないことが確定したら、契約そのものが不成立となり、最初からなかったことになります。改定前の業界ルールの三原則の③の項目に該当し、建築の条件が整わない場合、契約自体がなかったものとなり、手数料や預かり金、手付金等の受領金は全て返還されます。
これに対し解除条件付き売買契約では、一定の条件が発生した場合には、契約の効力が消滅し、契約が解除となります。当然、条件が発生しない限り契約は有効で、契約書に定める義務を履行しなければなりません。契約解除の場合、契約約款で定められた契約解除に係る費用が発生するケースがあります。
このように停止条件と解除条件では違いがありますので建築条件の内容をしっかりと確認しておくことが重要となります。
土地広告の表示ルール
前述のような契約解除によって、消費者が不利益を被ることが無いように建築条件付き土地広告には表示ルールがあります(表示規約第6条)。
建築条件付き宅地販売で、表示規約第6条のウの項目(建築条件が成就しない場合においては、土地売買契約は解除され、かつ土地購入者から受領した金銭は、名目のいかんにかかわらず、全て遅滞なく返還する旨)が表示されている場合、解除条件であっても、実質的には白紙解除となり消費者が不利益を被ることほぼない状態といえます。
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「不動産の表示に関する公正競争規約」第6条
ア.取引の対象が建築条件付き土地である旨
イ.建築請負契約を締結すべき期限(土地購入者が表示された建物の設計プランを採用するか否か問わず、土地購入者が自己の希望する建物の設計協議をするために必要な相当の期間を経過した日以降に設定される期限)
ウ.建築条件が成就しない場合においては、土地売買契約は解除され、かつ土地購入者から受領した金銭は、名目のいかんにかかわらず、全て遅滞なく返還する旨
エ.表示に関わる建物の設計プランについて、次に掲げる事項
ⅰ)当該プランは土地の購入者の設計プランの参考に資するための一例であって、当該プランの採用するか否かは土地購入者の自由な判断に委ねられている
ⅱ)当該プランに関わる建物の建築代金並びにこれ意外に必要となる費用の内容及びその額
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気を付けるべきポイント
■土地の契約と一緒に建築の契約を迫る業者は要注意!
土地売買契約と建物の建築請負契約は、同時であってはいけません。なぜなら同時に行われると、独占禁止法19条に抵触する抱き合わせ販売の可能性が高いからです。
また、宅建業界の自主規制ルールである「不動産の表示に関する公正競争規約」においても、未建築の建物は、広告表示してはいけないことになっていますし、建築条件付土地の広告内容についても厳しく規制されています。
もし、土地売買契約と建物の建築請負契約を同時に締結すると、こうした規約による広告規制にも違反する可能性がありますので要注意です。
■建築の請負契約には仲介手数料不要です!
建築条件付土地の場合、不動産業者の仲介手数料は土地の分にしかかかりません。悪質業者の場合、建築予定の建物の分も含めて仲介手数料を計算してくることがあるので、そういった業者にはひっかからないよう、注意しましょう。