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2026.06.03
この連載では、世界にひとつの自分らしいインテリアデザインを室内に。インテリアデザインの先進国イギリスで学ばれ、現在日本で活躍されている安藤さんに、ムードボードの重要性を紐解きながら、楽しくプランニングを解説いただきます。
【執筆者プロフィール】
安藤 眞代
美術大学、日本画学科を卒業後、大手インテリアメーカー住江織物でデザイン業務に従事。
ロンドンインテリア留学、Interior Design School London Professional Development Course卒。
業界での豊富な経験と、英国での学びを活かしたトータルな空間コーディネートや、日本では数少ないオーダーカーペットデザインも得意とする。
毎年 ミラノ、ロンドン等海外インテリア展示会を視察し、海外トレンドレポートを多数講演。
https://studio-ma.jp/
その㉕欧州インテリア視察から~その1 “芸術が街に溶け込む都市”ブリュッセルのアールヌーボー
昨年もご紹介したイタリアミラノ市内で開催される、世界最大規模の家具とデザインの祭典「ミラノデザインウィーク」 に、今年度も視察に行きましたので、その速報記事を交えて、何回かに渡ってお伝えしていきたいと思います。
今年は、ミラノに入る前にベルギーのブリュッセルに行きました。
なぜこの都市を選んだかと言うと、19世紀末の1890年代に花開いた、装飾と構造が美しく融合する“アールヌーボー建築”が点在する街だからです。
アールヌーボーとは、植物の蔓や、花のようなやわらかな曲線、鉄やガラスを使った軽やかな空間、自然を感じさせる装飾が特徴のデザインです。
パリのアールヌーボーが、地下鉄の駅や、装飾文化など“華やかな都市デザイン”として発展したのに対し、ブリュッセルでは住宅建築そのものにアールヌーボーが深く浸透しました(写真①)。
写真①:植物の蔓や、花のようなやわらかな曲線、鉄やガラスを使った軽やかなアールヌーボー建築のファザード。
アールヌーボーの巨匠オルタ
“建築を芸術に変えた”アールヌーボーの先駆者として知られる巨匠オルタ(Victor Horta)は、それまでの重厚な建物とは違い、光が入り(写真②)、曲線が流れるような美しい住宅をブリュッセルに数多く残しました。そのためブリュッセルは、今も街を歩きながらアールヌーボー建築に出会える“建築そのものがアートのような街”として知られています。アール・ヌーボー建築は、ベルギーからその後、パリ、ウィーンに伝播していきました。
ブリュッセルは、2000年「建築家ヴィクトル・オルタの主な都市邸宅群」(写真③)として世界遺産にも登録されました。
写真②:オルタの自邸、下のホールに光が入るように、建築時から工夫されています。
写真③:建築家ヴィクトル・オルタの主な都市邸宅群の一つ、オルタの自邸件アトリエのMaison & Atelier Horta。建築を芸術に変えた、光が入り、曲線が流れるような美しい住宅。
住宅街に残る名建築
ブリュッセルでは、当時の富裕層が新しいデザイン文化に積極的だったため、個人住宅としてアールヌーボー建築が多く建てられました。その結果、普通の住宅街の中にも名建築が自然に残る街になったのです。
住宅街を歩くと、重厚な石造建築やネオクラシック、アールデコ、そして オルタ に代表される優雅なアールヌーボー建築など、さまざまな時代の建築が通りに自然に混在しています(写真④)。
特徴的なのは1軒ごとの間口が細く、日本の京都のように奥行きが長い住宅が多いことです。これは昔、道路に面した幅によって税金が決まる時代があり、建物の幅を抑え、その代わり奥へ長く建てる住宅形式が発展したためです。その細長いファサードの中で、それぞれの建築家や住まい手が個性を競い合うように装飾やデザインを施したことで、ブリュッセルの街並みは、まるで建築のカタログを歩いているような魅力的な景観になったということです。
写真④:住宅街を歩くと、重厚な石造建築やネオクラシック、アールデコ、そして オルタ に代表される優雅なアールヌーボー建築など、さまざまな時代の建築が通りに自然に混在しています。
今回、アールヌーボー建築を巡るパスポートを購入、オルタの自邸件アトリエのMaison & Atelier Hortaや、タッセル邸、ヴァン・エトヴェルド邸(写真⑤)、建築家ジュール・ブリュンフォーが設計し、内装は当時の代表的なデザイナーたちが手がけた、アノン邸(Maison Hannon)(写真⑥)、画家・装飾家ポール・コーシーが1905年に自邸として建てたコーシー邸(写真⑦)などを視察しました。
写真⑤: ヴィクトール・オルタの代表作の一つ、ヴァン・エトヴェルド邸。当時の高級住宅では珍しかった鉄骨とガラスを、構造そのものとして美しく見せた点が革新的でした。植物の茎のような細い鉄柱が、空間に軽やかさを与えています。 八角形の吹き抜け空間「ウィンターガーデン」に、ステンドグラスの天窓から柔らかな自然光が降り注ぎ、
空間全体が“光でつながる”ように設計されています。
写真⑥:ベルギーのアール・ヌーヴォーとフランスのアール・ヌーヴォーが融合した、象徴主義的で、夢のような世界観が表現されている、アノン邸(Maison Hannon)。
写真⑦:画家・装飾家ポール・コーシーが1905年に自邸として建てたファサードが美しいコーシー邸。
世界で最も美しい広場「グラン・プラス(Grand-Place)」
また、旧市街に今回宿泊したのですが、近くには1998年にユネスコ世界遺産に登録された「世界で最も美しい広場」と称される観光中心地「グラン・プラス(Grand-Place)」(写真⑧)があり、広場の周囲には、かつて職人や商人たちの組合が使用していた豪華なギルドハウスや、繊細な装飾が美しいゴシック様式の市庁舎、そして華やかなバロック建築が立ち並び、17世紀の繁栄を今に伝える壮麗な街並みを形成していました。
特に、金色の装飾が施された建物が並ぶ景観は圧巻で、昼と夜でまったく違う表情を見せます(写真⑨)。
写真⑧:「世界で最も美しい広場」と称される観光中心地「グラン・プラス(Grand-Place)のお昼。
写真⑨:グラン・プラス(Grand-Place)の圧巻の夜景。
この後にベルギー、ネロのアントワープにも行っていますが、ブリュッセルだけで長くなってしまったので、「ミラノデザインウィーク」も交えて、次号以後にお伝えしたいと思います。



























