2019.02.02
スウェーデン出身の建築士であるご主人が設計したご自宅で、料理教室を開催している道田聖子さん。「この場所がお気に入り」というキッチンは、広い間口にゆったりとしたつくり。
「キッチンのなかには見せたくない部分もある」と、棚や冷蔵庫などは壁で隠し、ダイニングから見てもスッキリとした印象です。
イエマガ(以下・イ):ご主人がご自宅を設計される際、キッチンに関してどのようなお願いをされましたか?
道田さん(以下・道):まず、見晴らしを良くしてほしいということ。ちょうど家の前に公園があるので、その風景を楽めるように。
それと、「いつか料理教室を開くかもしれないので、数名で使えるようにしてほしい」ということ。
スウェーデンでは2、3人で料理ができるくらいの広さを取る家が多いのですが、念のため数人が入れるような余裕を持たせてほしいとリクエストしました。
イ:日本ではダイニングと間仕切りのない対面式キッチンが人気ですが、道田さんは壁付けのI型を選択ばれているんですね。これは、ご自身で希望されたことですか?
道:そうなんです。全部リビング・ダイニングから丸見えなのはちょっと…。キッチンには見せたくない部分もあるから、半分ぐらい見えるけれど、隠したい部分は見えないという空間にしたかったんです。
イ:広めの間口から、まさに半分見えるキッチンですね。
道:この間口は、テーブルを置くことを想定して、設計してもらったんです。ここで、朝ごはんを食べたり、盛り付け台として使ったり、カウンターのような使い方をしたいと。サイズもはじめから決めていました。
イ:ずっとダイニングに背を向けて料理しているわけではなく、開口を活用されてオープンキッチンのような使い方もされているんですね。I型というのにもなにか理由が?
道:いえ。これは悩んだ結果です。コの字型かパラレルか…と、夢は広がったのですが、予算がかさんだり無駄なスペースが生まれたりするので、最終的にI型で落ち着きました。
イ:それにしても、男前なキッチンですね。設備本体もタイルも。ずしっと重量感があって。
道:そう、男前にしたかったんです!システムキッチンは、ドイツの「ミーレ」のもの。実家もドイツ製を使っていて、私自身も海外の住宅設備に携わる仕事をしていたので、外国製のキッチンがいいな、と思っていたんです。
なかでもドイツ製は、丈夫でモデルチェンジが少なく、パーツを取り寄せやすいのが魅力。私自身、料理が好きですし、料理教室もしたいと考えていたので、普通の人よりもタフに使うことを想定して、頑丈なミーレを選びました。ただ、ミーレを選ぶことで予算の都合上、L型やコの字型にするのはあきらめることになりましたが…。
イ:丈夫さ以外に、設備に求められたことはありますか?
道:そうですね。コンロでしょうか。フランスの「ロジェール」のものを入れてもらっています。コンロは三つ口が主流ですが、これは四つ口なのが気に入りました。しかも、五徳を上げて掃除ができるんですよ。
日本製も検討しましたが、魚焼きグリルが必ずついているでしょう? グリルを開けたら魚の臭いがするのはイヤですし、掃除も面倒。蓋を取って掃除がしやす市販のいロースターで、魚は焼くことにして、グリル付きではない外国製から選ぶことにしたんです。
イ:確かに、グリルは掃除が面倒。匂いもなかなかとれないですし。あるのが当たり前で、考えたことはなかったですが、なくしてしまうというのも一つの選択肢ですね。ところで、コンロ横のスペースが、一般的なものより広くないですか?通常はスパイスラック程度の幅ですが、その倍はありそう。これは、ミーレの規格ですか?
道:いいえ、お鍋などを置くスペースが欲しかったので、この幅を指定したんです。これぐらい広さがあると、生徒さんたちにコンロで調理する様子を両側から見てもらえるんですよ
イ:使い勝手をよくするように、なにか工夫されたことはありますか?
道:シンクをステップシンクにしてもらったことでしょうか。シンク内は3段になっていて、専用まな板ステンレスプレート、水切りプレートを段違いに設置して、野菜を置いたり、鍋を冷やしたりするのに使っています。シンク全体にプレートで蓋をすると、作業面が広くなるのも便利です。
イ:シンクを自由にオーダーするって、そんなことできるんですね。
道:できるんですよ。このシンクとつながったワークトップは、広島の業者さんにオーダーして、ミーレに取り付けてもらいました。
イ:特注ですか! すべてにこだわりがつまってますね!
道:自分ではそのつもりはなかったのですが、言われてみれば…(笑)。システムキッチンにお金がかかっている分、棚はホームセンターで買った板とIKEAのパーツで自作しました。
イ:食器や食品の収納はどうされていますか?
道:調理器具や掃除道具はシンクの下に、お茶やグラスなど日常的に使うものは吊戸棚に入れて、食品はパントリーの半面にまとめて、もう一方の半面には食器を収納しています。
イ:いろいろな所に食品が入っているとウロウロしてしまいますが、パントリーにまとまっているとわかりやすいですね。
道:その点は彼も考えて、このパントリーは食品用として設計してくれました。本当は、ドアを開けて入るような、ゆったりしたパントリーがほしかったのですが、間取り的に無理でした。
もともと、設計段階では両面に食品を入れるイメージだったそうです。食器はダイニングに置く食器棚に収まると考えていたみたい。でも、食器棚におさまる量ではなくて…。食器がこんなに多かったのは、彼にとって想定外でした(笑)。
イ:料理が好きだと、食器も増えていきますよね。今日は、初めて見せていただくキッチン設備ばかりでワクワクして楽しかったです。
それに、自分の使い方と向き合って、なにが大切か、なにを優先させるかを見極めて、キッチンをつくっていくことが大切だな、と改めて思いました。どんなものが自分に合っているか下調べをしておくことも役立ちますね。道田さんのプラニングのお話、とても参考になりました。