2019.12.26
1年3カ月かけてDIYでカレー屋づくりに挑戦されたというお話(前編はこちら)に続いて、後編は店舗の内装デザインについてお聞きしたいと思います。
店舗内装の経験のないオーナー・古市さんが、どのようにコンセプトを決めて仕上げたのでしょうか?そこには、インテリアコーディネーターの方からの非常に役立つアドバイがあったそうです。
イエマガ(以下・イ):内装はカレー屋さんというより、カフェのようなの温かみのあるインテリアですね。これもすべてご自分で考えられたのですか?
古市さん(以下・古):はい。でも、何人かのインテリアコーディネーターさんにどうしたらいいかアドバイスをもらいました。
もともと、センスのいい部屋をつくるということがわからなかったし、「インテリアってなに?」というぐらいで、お金もかけたことがなかったんです。でも、こんな自分でもコツをつかめばできる!という自負は、ありました(笑)。
だから、ここははじめて、インテリアにこだわってつくった空間なんです。
イ:コツさえわかれば…(笑)。確かにそうかもしれません。コーディネータの方からは、どんなアドバイスをもらったんですか?
古:インテリアの色を揃えたほうがいいという話はよく聞いていたんですが、あるとき、色を揃えるだけでなく、素材とか時代も揃えればいいよと言われたんです。
その言葉にビビッときて、まずは素材を、「木と鉄とコンクリート」にしようと決めました。そして、このルールに合わないプラスッチクの物はいっさい置かないことにしました。
イ:そういったテイストが好きだったんですか?
古:そうですね。いろんなお店を見てまわって、気に入ったインテリアも参考にしました。あまりかわいくならないように、自然素材の中に鉄やコンクリートの無骨さも出したかったんです。
イ:アドバイスの時代というのは、どういう意味ですか?
古:どれぐらいの年代の物を置くかということです。いろいろと見てまわった中でいいな思った、30~50年ぐらい前から使われてきたような懐かしく感じる日本の物で揃えることにしました。
イ:国も限定されたんですね。
古:そうなんです。時代だけでなく地域も日本に決めて、古い漆の樽を椅子として使ったり、学校で使われていた黒板を壁に掛けたり。小物も西洋とかアジアンテイストのものは置かないようにしました。
イ:徹底してルールを守られたということですね。
古:ただ1点だけ。このルールから外したのがカレー皿です。白・黒・茶・グレー色の空間の中で、お皿だけブルーにしました。カレー屋なので、特別に色を使って存在感を出そうと思って。
イ:きれいなブルーのお皿。ダークな色合いの空間で、主役感がでています。
イ:気になるのがこのソーファー席の床…。ここけどうして、床が高くなっているんですか?
古:最初にレイアウトを考えるときに、お客樣とこちらの距離感や、ここでどういう風に過ごしてもらいかを考えました。
そのときに、厨房前のカウンターはスタッフと近く気軽にしゃべれる席、窓に面したカウンターは開放感のある席、そしてこのソファ席はゆったり長くおしゃべりを楽しめるスペースにしたいと思いました。
そして、このソファー席でくつろいでいるところに、通路に立った人から見下ろされて圧迫感がないように、床を高くすることにしたんです。このおかげで、カウンターテーブルにいる人とも話しやすくなります。
イ:そんな理由があったんですね。確かに座っている人と立っている人との目線の高さが近くなりますね。それにしても研究熱心。
古:実験的にいろいろと試してみたくて(笑)。このテーブルも、どれぐらいの高さが食べやすいか調べました。
だいたい椅子の座面とテーブルの差が30~35㎝ぐらいあると食べやすい高さなんですが、40㎝ぐらいの膝ぐらいの高さのソファーテーブルしか売っていなかったんです。そこで、自分で高さ65cm(ソファーの座面は約35㎝)のものをつくることにしました。
イ:厨房だけでなく、家具まで手づくりとは驚きました!テーブルの高さへの不満、よくわかります。ソファーでなにか食べたり、書き物をしたりするときに、もう少し高かったらなぁと思うことがよくあります。ちなみにどれぐらいの金額でつくれるのですか?
古:そうですね…。脚が4本で8000円、木の板は1500円ぐらい。だいたい1万円でつくれますよ。
イ:お安い。ひとつ販売していただきたいです(笑)。
「コツさえつかめば」という言葉どおり、ナチュラルな雰囲気で居心地いい空間を完成させられたのですね。
自分の好きなものを集めたインテリア、というのも素敵ですが、自分でテーマとルールを決めて、揃えていくという作業もとっても楽しそうです。
まったくこだわりのない人が、こだわりを生み出す方法。家づくりをはじめいろんなことに役立ちそうです。
貴重なお話、ありがとうございました。