2019.01.25
ご自宅が完成したのは2010年。建築当初から1階部分はいつかカフェにしたいと、竣工時には最低限の工事だけに。そこからじっくり手をかけてつくり上げたそうです。
できるだけコストを抑えるために、DIYや建材の施主支給などをたくさん取り入れられ、新築から3年後にお店をオープンされました。
手づくりのところだけでなく、素材探しにも苦労されたとか…そのあたりも詳しくお聞きしたいと思います。
イエマガ(以下・イ):このキッチンの広さはどのように決められたのですか?カフェの中どれだけをホールにするのか、キッチン部分にどれだけ必要かの判断が難しかったのではないでしょうか?
喫茶ムギ店主(以下・ムギ):厨房設備は、これまで務めていたカフェを通して購入することが決まっていたんです。通常より安く手に入るもので、設備を選ぶということはなくて(笑)。それを置いたら、どれぐらいのスペースが必要かを考えました。
設備同士の間の通路は狭め(約68cm)に。2人で作業するとすれ違うときにぶつかります。でも、その分ひとりで料理するときは、振り返ると後のカウンターにすぐ手が届くので便利です。もともと、ひとりで料理するつもりだったので、この広さで十分だと思いました。
イ:やっぱり厨房機器は、家庭用のキッチンより大きいですね(コンロ側のカンター68cm、シンク側45cm)。厨房一式とはなにが含まれているのでしょうか?
ムギ:コンロと下のオーブン、その横は冷蔵庫で温度管理ができるもの。向かいはシンクに製氷機。この2つとは別に冷凍庫があります。
イ:冷蔵庫が思ってたより小さい気がします…。この冷蔵庫だけで足りていましたか?
ムギ:だいたいは。でも足りないときは2階にある家用の冷蔵庫があるので。
イ:なるほど。家のキッチンが使えるというのは、自宅にあるカフェならではの利点ですね。
イ:温もりを感じる内装ですね。厨房以外、木材を中心に自然素材を使われていて。
ムギ:内装はかなり自分と手伝ってくれた主人とでがんばったんです。壁を塗ったり、扉も塗ったり貼ったり(笑)。
イ:扉も塗ったり?貼ったり?
ムギ:この勝手口の扉は、本当はアルミ素材のものだったのですが、木材を貼ってアルミが見えないように。こちらのお店の面だけ。
イ:すごい。お店に入ったときからインテリアのアクセントになっている扉のデザインだなぁと思っていたのですが、装飾が手づくりとは。
イ:ほかにもなにか予算を抑えるためにされたことはありますか?
ムギ:カンターの木材はホームセンターで手頃な値段のものを購入しました。工務店さんが採用されるものよりずっと安かったので。
イ:キッチン前の間仕切りのカウンターのことですか?
ムギ:いえ。背面の棚もホールのカウンターテーブルも、すべてこちらで準備しました。結構、節約できたと思います。
ムギ:そう言えば、この間仕切りのカウンターは、後から主人にキッチン側のほうに板を追加してもらったんです。幅が広くなって、下に物を吊るすスペースができたので使いやすくなりました。
イ:ちょっとした奥行きの違いで変わるんですね。
ムギ:それと高さも。初めの設計図より立ち上がりを10cmほど高くしてもらいました。カウンターに座られるお客様と料理をしているわたしが、カウンターを通してほどよい距離感になるように。あまりお互いが見えすぎると緊張すると思って(笑)。
イ:キッチンから離れますが…。入り口近くの雑貨コーナーの床のタイル、素敵ですね。木の色合いに合っているし、ビンテージものという感じがして入ってきたときから気になっていました。
ムギ:このタイル、最初は外壁に使われている光沢のあるタイルを敷くことに決まってました。でももう少しマットで落ち着いた雰囲気のものがいいなぁと思って探していたところ、ネットであるタイル会社が工場を閉められるという情報をたまたま見つけたんです。
もしかしたら、探しているようなタイルの在庫にあるかも?と思って、ご連絡したところ「こんなのがありますよ」とイメージ通りのタイルの写真を送ってくださって。ぜひ譲ってくださいとお願いしました。さらに金額は1枚10円でいいですよと…ありがたいお話でした。
イ:焼き物の風合いがでてるすごくいいタイルだと思いました。タイル好きなので、そんなお値段で買えたとはうらやましいです(笑)。もっともっと高いものだと思います。
イ:居住部分と同時に考えずに、暮らしながらつくられたことで、じっくり検討できたり、予算を抑えつつ納得するものを選ぶことができたんですね。カフェをつくりたいという人にとって勇気のでるお話、ありがとうございました。
こちらの忙しくても効率よく作業ができるように、レンジまわりのフライパンや鍋、カウンターに掛けられた調理器具、よく使う食器も、いつでもすぐに手元に取れるように工夫されたキッチンを拝見して、わたしもこんなキッチンなら手際よく料理ができるのでは?!と勇気づけられました…。
次回は、自宅につくられたお菓子工房にお邪魔します。