2019.01.25
髙谷さんが主催するベトナム・タイ料理教室は、京都市内の趣のある町家で開催されています。以前は同市内にある別の場所で教室を開かれていましたが、半年前の2018年6月に古民家をリフォームしてキッチン・スタジオをつくられました。
今回おじゃましたスタジオ内には、窓辺にゆったりと6~7人ほど腰掛けられる椅子とテーブルが置かれ、部屋の中央にはガスコンロの乗った大きなタイル張りのカウンター、その奥にはシンクが2つ並んだ壁面カウンターが設置されています。
イエマガ(以下・イ):アジアのイメージに合った小さいタイルが敷き詰められたカウンター。ここで生徒のみなさんと料理されているんですね。建築士さんにこのカウンターについて、どういった設計をお願いされたのでしょうか?
高谷さん(以下・高):最初に設計事務所の方に、これまでのキッチンで使いづらかったところをすべて伝えました。
一番はコンロの位置。以前のキッチンは壁付きのコンロ台で、壁を向いて調理をするしかなく、みなさんから作業が見づらかったんです。大切なところは、よく見えるようにテーブルで、カセットコンロを使って説明していました。なので、新しいキッチンは、コンロが全員からよく見えるように。
次に、5人(教室の定員は6人)が、それぞれまな板を使って作業するスペースがとれるようにお願いしました。6人参加されたときは、コンロの横に小さなテーブル出して、そこを調理台として使います。
イ:この配置だと、カウンターのどの位置からも見やすいですね。でも…このど真ん中の柱?
髙:これは大黒柱で動かせなかったんです…。これがなかったらもっと良かっんですけど…。
イ:奥の壁付けカウンターにも普通のお宅とは違うところが。大きなシンクが2つ。カウンターにも手洗いシンクがひとつあるので、全部で3つもありますね。
髙:料理に取り掛かる前に全員で手を洗ったり、途中でまな板に包丁、ボールなどを洗ったり、なにかとシンク回りが混み合うので2つほしいと希望しました。
さらにもうひとつ手洗い用も。料理の途中にちょっと手だけ洗いたいということが結構多いので、カウンターに設置してもらいました。でも今になって思うと、手を洗うだけのためなのでもっと小さいサイズのものでもよかったかも…。
イ:キッチン・スタジオと言っても、タイルや木を使った温かみのあるインテリアですね。このようなコーディネートにされた理由はあるのでしょうか。
髙:はい。いわゆる「厨房」を思わせるステンレスのシンクや調理台で、生徒さんたちが料理の途中に仕事をしているような雰囲気にならないように。手入れがラクで丈夫な木材を使って、できるだけ家で料理をしているような気持ちになってもらえるキッチンにしたかったからです。
イ:確かに、厨房のようなスペースで黙々と作業すると、仕事のような感覚になりそうですね。
イ:ほかに、使いやすくなるよう気をつけられたところはありますか?
髙:そうですね。料理している間は、さっとものが置ける「なにも置いていないスペース」が、思った以上にたくさん必要になるんです。コンロで料理をしている最中に、「置くところがない!」となって慌てることがないようにカウンターやシンクの横など、空けておけるスペースを大切に考えました。
イ:なるほど。私の家でも何品か急いで料理をつくっているときに、驚くほど調理台の隙間がなくなっています。ダイニングテーブルまで広がることも。これも今までのキッチンで体験されたことなんですね。
髙:できる限り改善するようにしましたが、まだ完成していない、まだまだこれから…という感じです。使いやすい配置や、先程のさっと置けるスペースも、料理中にここが使えると便利、ここにはこれを置いたほうがいいのでは?と、いろいろ試していくと思います。
ちょっとしたことで使いやすくなって、「なんで今までこうしなかったんだろう…」という経験が何度もありますから(笑)
イ:それ、わかります。これはここにあるものと長い間ずーっと定位置にいるものがたくさんあります。見直したら劇的に機能的になるところがたくさんありそう…。キッチンのつくり方と考え方、とても参考になるお話ありがとうございました。