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2025.11.12
この連載では、世界にひとつの自分らしいインテリアデザインを室内に。インテリアデザインの先進国イギリスで学ばれ、現在日本で活躍されている安藤さんに、ムードボードの重要性を紐解きながら、楽しくプランニングを解説いただきます。
【執筆者プロフィール】
安藤 眞代
美術大学、日本画学科を卒業後、大手インテリアメーカー住江織物でデザイン業務に従事。
ロンドンインテリア留学、Interior Design School London Professional Development Course卒。
業界での豊富な経験と、英国での学びを活かしたトータルな空間コーディネートや、日本では数少ないオーダーカーペットデザインも得意とする。
毎年 ミラノ、ロンドン等海外インテリア展示会を視察し、海外トレンドレポートを多数講演。
https://studio-ma.jp/
⑲番外編 その2、マラッカのプラナカン文化とクアラルンプールの美しいモスク建築
マレーシア番外編その1で、イギリス植民地時代のコロニアル建築様式の、ホテルインテリアをご紹介いたしました。その2では、文化が混ざり合う多民族国家のマレーシアの様々なユニークなインテリアをご紹介いたします。
首都のクアラルンプールからバスで2時間ほど、日帰りでマラッカにも足を伸ばしました。マラッカは15世紀にマレー王国として栄え、その後ポルトガル、オランダ、イギリスの植民地支配を受けました。その過程で独自の東西文化が融合した優美なスタイル「プラナカン文化」が生まれ、街は2008年に世界遺産に登録されています。
メインの広場には、キリスト教会やスタダイス(旧オランダ総督邸)などが特徴的なサーモンピンク(赤褐色)のレンガ造りの建物があり(写真①)、オランダ植民地時代のものです。
写真①:マラッカのキリスト教会やスタダイスの、サーモンピンクのレンガ造りの建物。
街中にあるプラナカン屋敷は、ショップハウス (植民地時代の長屋式の歴史的建造物)が代表的です(写真②)。もともと中国南部から広がった、店舗と住居としての機能を兼ね備えた建築様式です。長い植民地時代、間口の幅で税金が決まったことから、間口は狭く、奥行きが驚くほど長い構造が特徴的です。
写真②:マラッカのショップハウスが集まる通り。
ショップハウスには、ヨーロッパのネオ・ゴシック様式やバロック様式の窓枠、中華風の彫刻やレリーフが混在しています(写真③)。窓の下やファサード(建物の正面)や床に、ヨーロッパや日本から輸入された鮮やかなパステルカラーのタイル(*マジョリカタイル)が装飾として施され、現地ではプラナカン・タイルとして外観装飾に多く見られました(写真④)。
プラナカン文化は、その華やかでカラフルなデザインや、レトロで優美な雰囲気でインスタ映えがするので、特に若い女性の間で人気が高まっています。
*マジョリカタイル:花や鳥などの鮮やかな色彩と、表面に施された凹凸のあるレリーフ(浮き彫り)です。当時の高級品として、アジア各地の建物(特にプラナカン建築など)を華やかに彩りました。
写真③:ヨーロッパのネオ・ゴシック様式やバロック様式の窓枠、中華風の彫刻やレリーフが混在プする、プラナカン屋敷。
写真④:美しいプラナカン・タイル
鮮やかでポップな色彩が使われており、SNS映えするフォトスポットとして人気のマラッカのウォールアート。
クアラルンプールの美しいイスラム建築
マレーシアの独立宣言(1957年)が行われた、首都クアラルンプールのムルデカ広場に建つ、インド・サラセン・リバイバル様式(ムガール様式)の「国立繊維博物館」(写真⑤)は、1905年に旧鉄道事務局として建てられました。
赤レンガと白い石材の対比が鮮やかで、イスラム建築の要素であるタマネギ型ドームや馬蹄形アーチを特徴としています。
写真⑤:インド・サラセン・リバイバル様式(ムガール様式)の国立繊維博物館
クアラルンプールのモスク建築は、マレーシアの歴史的な変遷と独立後の国家的なアイデンティティを反映し、伝統的なイスラム要素と植民地様式、そしてモダンなデザインが融合しているのが大きな特徴です。特に主要なモスクは、異なる建築様式を表現しています。
モスク「マスジッド・ジャメ」
クアラルンプールで最古(1909年築)のモスクの「マスジッド・ジャメ」は(写真⑥)、ムガール様式(インドのイスラム王朝建築)とムーア様式の融合された建築様式です。白亜のタマネギ型ドームと尖塔、そして美しいアーチの回廊が特徴的です。
写真⑥:クアラルンプールで最古のマスジッド・ジャメとその美しい内部の回廊。
国立モスク「マスジッド・ネガラ」
国立モスクの「マスジッド・ネガラ」1965年に完成したモダン・イスラム建築の代表例です。伝統的なドームの代わりに、マレーシアの独立を象徴する16角(または18角)の星形の屋根が特徴的(写真⑦)です。
73mのミナレット(尖塔)は折り畳まれた傘を、メインルーフは開いた傘をモチーフとしており、当時の国家の大胆な近代化への志向を表現しています。
写真⑦:マレーシアの独立を象徴する、16角(または18角)の星形の屋根が特徴的なモダンイスラム建築。
内部には、日本でも大人気の**モロッカン柄や、植物をモチーフにしたアラベスク柄が多用されており、豪華で洗練された装飾が特徴です。
**モロッカン柄:モロッコの伝統的な幾何学模様から生まれたデザインで、イスラム文化とヨーロッパ文化が融合したエキゾチックで彩り豊かな雰囲気が特徴です。主にモザイクタイル装飾の植物や直線、円などを組み合わせた模様が多く見られます。
写真⑧:マスジッド・ネガラの豪華なモザイクタイル
アジア・西洋を融合させたマレーシア建築
このように多民族国家のマレーシアの建築とインテリアは、マレー系のルーツを基礎に置きながらも、中華系、インド系、そして植民地の歴史から、西洋の要素を柔軟に取り入れ、融合させることで、独自の「マレーシアらしい」多様な美を生み出していることをご紹介いたしました。
次回の⑳では、インテリアのカラーについて、様々な海外のインテリの事例を用いて紐解いて行きたいと思います。
イスラム教美術館展示の美しく豪華な展示



























