2025.06.18
この連載では、世界にひとつの自分らしいインテリアデザインを室内に。インテリアデザインの先進国イギリスで学ばれ、現在日本で活躍されている安藤さんに、ムードボードの重要性を紐解きながら、楽しくプランニングを解説いただきます。
【執筆者プロフィール】
安藤 眞代
美術大学、日本画学科を卒業後、大手インテリアメーカー住江織物でデザイン業務に従事。
ロンドンインテリア留学、Interior Design School London Professional Development Course卒。
業界での豊富な経験と、英国での学びを活かしたトータルな空間コーディネートや、日本では数少ないオーダーカーペットデザインも得意とする。
毎年 ミラノ、ロンドン等海外インテリア展示会を視察し、海外トレンドレポートを多数講演。
https://studio-ma.jp/
その⑮ 2025 ミラノデザインウィーク視察よりトピックス vol.2
前号で、毎年4月の1週間、イタリアミラノ市内で行われる、世界最大規模家具のデザインの祭典、「Milano Design Week」ミラノデザインウィークのお話をさせていただきました。毎年日程は、欧米の人の大切な行事「復活祭」の前に行なわれるので、4月の前半や、中旬とその年によって変わります。
そんなミラノで見る、ラグジュアリーブランドの近年の家具は、アウトドアを意識した物が増え、室内、屋外どちらでも使用可能なファブリック(生地)を使用しています。
なので外での空間展示も多いのですが、この時期のミラノは、朝夕は肌寒く、お昼はグッと気温が上がりますが、ミラノデザインウィーク中は、不思議なくらい、ほとんど雨が降らないのです。

ラグジュアリーブランドのアウトドア家具

「Paola Lenti」パオラ・レンティ
そのアウトドア家具で、ここ数年大注目は「Paola Lenti」パオラ・レンティです。イタリア国内外のセレブの個人邸や、高級クルーザー、リゾートホテルなど、様々な所に納められています。パオラ・レンティは、工業用コードのリサイクルから始まったアウトドア家具のブランドですが、美しい色彩と豊富なカラーバリエーションで、色の魔術師とも言われています。

色の魔術師と言われる、素晴らしいカラーリングの家具。
昨年ミラノ中心部から少し離れた地区に、4000平方メートルという広さで多目的なフラッグシップストアをオープンしました。元繊維工場の跡地を使ったショールームは、自然にあふれたとても気持ちの良い場所で、ショールームに併設してホテルも建設される予定です。
最近は、室内用の家具にも力を入れていています。デザイナーのパオラは日本が大好きで、イタリア人でありながら、日本の価値観や美意識に親近感を持っていて、今回は全体的に日本らしさを感じさせるような、落ち着いたグリーンやベージュのカラースキームの家具を発表しました。

日本らしさを感じさせるような家具やカーペット。
さらに、社内研究チームが、しっかりと素材研究を重ね、単一素材で完全にリサイクル可能な素材を活用し、室内と屋外の両方に特化した、幅広い種類のテクニカルファブリックを生み出しています。
ヨーロッパのインテリア業界では「サステイナブル」であることは、もはや当たり前で、パオラ・レンティの日本名がついた生地の端材を使用したMottainai「モッタイナイ」シリーズも、生産工程で発生する糸や生地、コードの切れ端など、今まで端材として処分していたものを回収し、ユニークな家具として蘇らせています。現在東京、麻布にショールームがあります。

「モッタイナイ」シリーズ
美しさBest! 一番心に響いた展示
今回のミラノで様々視察した中の、インテリア空間としては、この会場が芸術とデザイン性、クオリティと共に、今回の美しさBest! 一番心に響いた展示をご紹介します。
「L’Appartamento by Artemest 2025」は、イタリアの伝統工芸職人や、アーテスト、メーカーなどを、キュレーターの立場である「アルテメスト」という会社が、世界で活躍する6つのインテリアデザインスタジオと、コラボレーションした素晴らしい邸宅での空間展示です。

写真(左):19世紀の建築の傑作、パラッツォ・ドニゼッティの螺旋階段。(中・右):邸宅の持つ空間魅力を、マテリアルとインテリアの複雑でハイレベルなコーディネート提案で、唯一無二の空間に!
19世紀の建築の傑作、パラッツォ・ドニゼッティを会場に、その建物が持つ芸術的遺産の物語が息づく空間魅力を、各デザイナーが最大限に活かし、デザインの美しさ、独自性、創造性を優雅に、イタリアの卓越性を象徴する芸術性と伝統を体感できる空間を作り上げていました。
イタリアの職人技、伝統工芸品に圧倒的なデザイン力を組み合わせることで、(デザインプロデュースを組み合わせることで)唯一無二のアイテムを、より価値のあるものへと進化させていました。
それぞれの部屋でマテリアルとインテリアの複雑でハイレベルなコーディネートを提案し、魅惑的な音楽の演出とともに唯一無二のインテリア空間を作り上げていた「アルテメスト」は、今年のデザインウィークの中でも強いインパクトを残したインスタレーションの一つでした。

オブジェのようなデザインのペンダントライト、アートピースのような家具、不思議な形をしたソファやチェアなど、ミュージアムで見られそうなユニークなデザインで、各部屋で、その空間で物語を見ているかのよう。
2回にわたって、2025年のミラノデザインウィークの速報をお伝えして参りました。
ミラノは、街全体の歴史的遺産をも使い、伝統工芸、職人技を盛り上げ、さらに都市自体が長期的かつ戦略的なブランディングすることでデザイン都市として活性化し続けています。
日本も様々な素晴らしい伝統工芸、職人技が多く、それを後世に残し、引き継いで行くための一つのヒントが、ミラノかも知れません。
次の⑯は、お知らせしていましたロンドンアフタヌーンティーの素敵なホテル紹介から〜インテリアの極意を紐解く編を、お届けしたいと思います。