2024.05.01
この連載では、世界にひとつの自分らしいインテリアデザインを室内に。インテリアデザインの先進国イギリスで学ばれ、現在日本で活躍されている安藤さんに、ムードボードの重要性を紐解きながら、楽しくプランニングを解説いただきます。
【執筆者プロフィール】
安藤 眞代
大手インテリアメーカー住江織物にて、デザイン業務に従事。その後多数キャリアを積み、大阪にてインテリアデザインスタジオ「studio Ma」を創業。英国での経験をいかしたトータル空間コーディネートや日本では数少ないオーダーカーペットデザイン(タフトカーペット、手織り多数種類)も得意とする。
ミラノやロンドン等インテリア展示会を毎年視察し、海外トレンドレポートも多数講演。
https://studio-ma.jp/
その② 足していく事で美しい、イギリスのインテリアデザイン・スタイル
エクレクティック(eclectic)スタイル〜とは
その①で、イギリスのMood Board(ムードボード)の重要性について書きました。
インテリアの軸となるムードボードでスタイルを確認してプロジェクトを進めるのですが、そのスタイルにおいて、エクレクティック(eclectic)スタイルというのものがあります。
イギリスではかなり前からスタンダードに使われるスタイルで、「eclectic」は直訳すると「折衷的な」という意味になります。さまざまなインテリアスタイルを掛け合わす事で、その空間を唯一無二のスタイル、オリジナリティあふれる雰囲気を作ることができます。
インテリアには大きな基本となるナチュラル、モダン、エレガンス、クラシックなどありますが、一つのスタイルやテイストでまとめるインテリアも素敵ですが、エクレクティックスタイルは、より素敵なインテリアの実現が可能です。
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ハムヤードホテル(Ham Yard Hotel)は、デザイナー&オーナーのキットケンプの魅力的な独特のスタイルを作り出している。
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自分だけのスタイルをつくりだす
イギリスは古い物や、おばあちゃんから受け継いだ大事な家具など、代々物を大切に受け継いで行く国です。日本では少し前、お片付けブームがありました。確かに物を無くすことで、物をおかないスッキリとしたミニマムインテリアは完成します。しかし、それでは物を処分する必要も出て、さらに何か物足りない空間になってしまいがちです。
そこでエクレクティックスタイルで、古いものを大事にしながら、新しいものを取り入れて自分スタイルを作り出すのです。ただエクレクティックスタイルだからといって、何でもありと言うわけではありません。
私が所属する英国インテリアデザイン協会(BIID)のトップデザイナーである、スティーブン・ライアン(Stephen Ryan) の手がけたインテリアを、ロンドンで見せていただける機会がありました。
リビングからダイニング、寝室においても、アンティークとアートや、異なる時代・地域のものを自由に組み合わせるセンス、空間設計、何を取っても大変レベルが高い超一流のデザイナーです。
写真のリビングのソファスペースは、壁にかけられた絵を中心に、左右シンメトリーの構図。アートをデザインの起点とし、計算し尽くされています。
このように何かカラーや素材、時代など、ひとつでも良いのでどこかで統一感を出す、または全く相反する物をM I Xしても、その中で似たカラー(同系色・類似色)でつないでいくと、一気に統一感が生まれます。
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壁にかけられた絵を中心に左右シンメトリーの構図で、 アートをデザインの起点とし計算し尽くされているリビング。
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相反するものの融合から新しい世界観を創造する、スティーブン・ライアン(Stephen Ryan) 。
このように上級と思われがちなエクレクティックスタイルも、少しの法則を抑えるだけで、他にはない、魅了的な空間を作ることが出来るスタイルです。
ロンドンの高級ショップが立ち並ぶメイフェアにあるスケッチ(Sketch)は、18世紀の歴史的建造物を大胆にリノベーションした、5つの異なるインテリアスタイルを持つ、お洒落なレストラン&ティールームです。どのお部屋も遊び心に溢れていて、何時訪れてもワクワクした楽しい気持ちになり、非日常的でエキサイティングなエクレクティックスタイルで纏められています。
先に書いたように、日本はスッキリさっぱりのインテリアがまだまだ多く主流ですが、英国のデザイナーが作る、足して美しい空間を作るインテリアを、①でお話ししたMood Board(ムードボード)を利用して作ることが可能なのです。
次回③では、エクレクティックスタイルも作ることが出来る、Mood Board(ムードボード)の作成のポイントをお話したいと思います。
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外観からは想像できない、ユニークな 18 世紀の邸宅のカフェ、レストラン「スケッチ(scketch)」。