2025.07.23
この連載では、世界にひとつの自分らしいインテリアデザインを室内に。インテリアデザインの先進国イギリスで学ばれ、現在日本で活躍されている安藤さんに、ムードボードの重要性を紐解きながら、楽しくプランニングを解説いただきます。
【執筆者プロフィール】
安藤 眞代
美術大学、日本画学科を卒業後、大手インテリアメーカー住江織物でデザイン業務に従事。
ロンドンインテリア留学、Interior Design School London Professional Development Course卒。
業界での豊富な経験と、英国での学びを活かしたトータルな空間コーディネートや、日本では数少ないオーダーカーペットデザインも得意とする。
毎年 ミラノ、ロンドン等海外インテリア展示会を視察し、海外トレンドレポートを多数講演。
https://studio-ma.jp/
その⑯ ロンドンアフタヌーンティーの素敵なホテル紹介から〜 インテリアの極意を紐解く
その②「足していくことで美しいインテリア」のご紹介で、ロンドン、ハムヤードホテル(Ham Yard Hotel)のご紹介をしました。デザイナー&オーナーのキットケンプの独特のスタイルは、ブティックホテルでもかなり魅力的です。
イギリスでのブティックホテルとは、大手ホテルチェーンとは異なる個性的なコンセプトとデザインを重視した、比較的小規模なホテルを指します。
ナンバー シックスティーンホテル「Number Sixteen Hotel」
ロンドン中心部、ケンジントンエリアの高級住宅エリアにある、「ナンバー シックスティーンホテル(Number Sixteen Hotel)」もキットケンプデザインのアットホームなブティックホテルです。
ビクトリア朝中期の白壁のタウンハウスの一角にあり、建物の奥には緑豊かなプライベートガーデン、共有エリアのリビングルームなど、客室以外の場所でもゆったりと過ごすことができるホテルです。小規模なので派手さはありませんが、アフタヌーンティーもゆっくり楽しめる、隠れ家的なホテルです。
ここの各部屋は少し小さめですが、だからこそ共用部分のラウンジは、お家に帰ったようなほっこりと寛げるインテリアが素敵な空間になっています。

ケンジントンの高級住宅エリアにある、ビクトリア朝中期の白壁のタウンハウスの一角に、ナンバー シックスティーンホテル外観。
その⑦「フォーカルポイント」空間に素敵なインテリアを施し、視線を集中させることにより空間全体が素敵に見えるという、インテリアのディスプレイのテクニック例として、その際もこちらのラウンジ写真を掲載しました。
ソファと両サイドのスタンド照明がシンメトリーに配置され、その後ろの壁の大きな印象的なアート、カラーコーディネートされているクッションやカーテンなど、たくさんの要素が入っているにも関わらず、素敵なインテリア空間を作っています。

ナンバー シックスティーンホテル、共用部分のラウンジインテリア。

建物の奥には緑豊かなプライベートガーデンで、アフタヌーンティーもゆっくり楽しめる。
ザ レインズボロウ「The Lanesborough」
同じロンドンのホテルでも、歴史と格式のあるホテルはまた別格です。英国貴族の別荘を改装したクラシカルなホテル「ザ レインズボロウ(The Lanesborough)」は、貴族の邸宅に招かれたかのような雰囲気を残した、かつて中庭だったという「ザ レインズボロウグリル」で格式あるアフタヌーンティーをいただくことができます。
ロンドンの中心部に位置する「ザ レインズボロウ」は、ハイドパークまで歩いてすぐ、 5 km 圏内にバッキンガム宮殿、セルフリッジがある素晴らしい立地です。

「ザ レインズボロウ」の貴族の邸宅の雰囲気を醸し出すクラシカルなインテリア。

中庭だった場所に造られた「ザ レインズボロウグリル」でアフタヌーンティーをいただくことができます。
ハートウェルハウス&スパ「Hartwell House&Spa」
そして郊外に多い、イギリスらしいマナーハウスでのアフタヌーンティーも、また全く違います。
イギリスのマナーハウスは、中世から近世にかけて、領主が建てた邸宅です。城ほど大規模ではなく、住居用の豪邸として建てられました。その邸宅をホテルとして改修したものが、マナーハウスです。
バッキンガムシャーの丘陵、ロンドン市内から車で1時間ほどの場所に建つ「ハートウェルハウス&スパ(Hartwell House&Spa)」は、グレード1指定建造物で、元々ウィリアム1世の所有地だったが、ハートウェル家に譲渡され現在の名前になり、1989年にホテルとして開業しました。

ハートウェルハウス&スパの豪華な外観。
館内のドローイング ルーム、または1700年代から1900年代に出版された古書が壁一面に並ぶ圧巻のライブラリールームで、エレガントで歴史的な雰囲気の中で贅沢なアフタヌーン ティーを楽しむことができます。

圧巻のライブラリールーム(写真右)、館内のドローイング ルーム(写真左)。
廊下を出ると、ジャコビアン様式の豪華な階段「Great Staircase」があり、様々な中世の騎士の像が階段の支柱に立ち、厳かな雰囲気を感じられます。

ジャコビアン様式の豪華な階段「Great Staircase」。
客間「The Great Hall」は1740年に完成した当時のままの姿で、その優雅で重厚な美しさに圧倒されます。

当時の家具配置からもマントルピース(暖炉)を挟んでアートとコンソールテーブルが飾られ、シンメトリーにインテリアが構成されているのが伺い見えます。家具をまとめて配置することで、存在感のあるフォーカルポイントを作ることができるのです。
ということで、様々なアフタヌーンティーの素敵なホテルインテリアから、空間を美しく見せる極意を復習しました。
次回⑰は、⑦でご紹介し、上記で復習したインテリアの重要な「フォーカルポイント」、そしてフィニッシングタッチを施すインテリア空間を、更に深く法則を用いて、素敵に見せる方法を書きたいと思います。