2023.01.25
この連載では、個性豊かなインテリア、充実した機能を持つ設備等、イメージづくりのヒントになる製品と、その魅力を紹介していきます。
ウィリアム・モリスの グリーンルームをイメージ
十九世紀英国「モダンデザインの父」と称されたウィリアム・モリス。植物をモチーフにした壁紙やテキスタイルには生活と芸術を融合させようとする彼のデザイン思想が反映されています。
N様は、彼が内装を手がけた世界初の美術館内食堂「グリーン・ダイニングルーム」に心を奪われ、それを新築するリビングのデザインコンセプトとしました。
吹き抜けのリビングは、全体を気品あふれるウィリアム・モリスの壁紙とグリーンの色調に統一。モリスの壁紙はドア上の部分からモールディングで切り替えを入れているため、単調にならず壁に表情が生まれています。
「遊び心のある家にしたかった」と言うN様。吹き抜けの上部には2階の出窓がせり出しており、そこにもモールディングの装飾が施されています。それが、ここが家の外なのか中なのか迷ってしまうような、不思議な空間をつくりあげていました。
サーキュラー階段も、こだわりの一つです。日本の建築では、本来玄関にあるのが一般的ですが、あえてリビングに配置。まるで、クラシカルな美術館にでもいるようなリビングとなっています。
イメージを実現させるモールディングの楽しみ
建築にあたっては、写真集やネットから非常にたくさんの西洋建築の画像を集め、イメージを膨らませました。そのイメージを設計会社に伝えるとともに、内装に関しては自らも研究しデザインをしました。そして、そのイメージを実現させる大きなエレメントがモールディングだったと言います。
「モールディングのカタログは、何冊も何冊も取り寄せて、毎日、ずーっと読んでいました。もう愛読書といってもいいくらいです(笑)。青山のショールームにも足を運びました。カタログは今見ても飽きません!」(N様)
ご自宅完成前は社宅暮らしでしたが、その部屋でも、自分で板を買ってきてモールディングを施していたそうです。
「無意識のうちにやっていましたね。今も、自作でデザインしたモールディングがいくつかあります。デザイン次第で、いろんな様式のイメージができあがるのがモールディングの楽しいところ。
どちらかというとアール・ヌーヴォーですが、僕は全体の統一感があれば、様式にはこだわりません。庭に面した窓は、フランク・ロイド・ライトを意識して直線的なモールディングを施しています」(N様)
芸術を日常に取り込み、 心豊かに暮らす
これでもまだ完成形ではありません。
「リビングは想いを形にできました。それだけに、もっとこだわりたい部屋もでてきました。例えば、ダイニングは英国のパブのようにしたいし、庭もイングリッシュガーデニングのようにしたい。あれこれ考えると夢がふくらみます」(N様)
芸術を日常生活の中に取り入れようとしたモリス思想が息づくN邸。洗練されたアンティークの家具や絵画もその一つです。想いを表現した心豊かなくつろぎの空間が広がり、奥様と3人のお子さんと愛犬が集うリビングには、家族の笑顔が絶えません。