昔から「餅は餅屋」と言うように、土地探しや売買契約などは不動産業者に任せるのが無難です。
とはいえ、ちまたには悪徳業者もいるとかで、どんな不動産業者なら信頼できるのか不安。
そこで、今回は不動産業者に関する一般的な知識の紹介だけでなく、実際に土地の売買に携わるプロの方々からも話をうかがってみました。
●不動産業者の仕事
私たちが一般に「不動産業者」と呼んでいるのは、宅地建物取引主任者がいる会社や事務所のこと。
彼らの主な仕事は、土地や建物などの不動産物件の情報を入手して、売り主(貸し主)と買い主(借り主)の売買契約(賃貸契約)を媒介(仲介)すること。その際に受け取る報酬(手数料)が収入となります。
通常は、都道府県知事(国土交通大臣のこともある)が認定した不動産免許(宅地建物取引業免許)が事務所に掲げられており、例えば<東京都知事免許(#)第……号>と番号表示されています。免許は5年ごと(1996年以前は3年ごと)に更新されるため、#の数字が大きいほど長く営業しているわけです。
ただし、個人が法人として新たに申請したような場合には更新回数が(1)となるので、番号が若いから歴史が浅いとも限りません。
●不動産業者の種類
不動産業者と言ってもその規模や特徴によって、いくつかに分類できます。
ニュータウンや大規模なマンションを建設して分譲する「デベロッパー系」、ハウスメーカーの子会社や系列会社として不動産の売買や仲介を行う「ハウスメーカー系」、不動産業者間にネットワークを築いて不動産情報を提供する「情報流通系」、金融機関の不動産部門が独立した「金融機関系」、長年にわたり地域に根ざして信用を築いてきた「地域密着型」(いわゆる不動産屋)などに分けられます。
このほか、企業ではありませんが、不動産業界の健全な発展を目指して設立された業界団体なども、土地探しの情報提供に関わっています。
それぞれの特徴を知ったうえで「土地探し」を任せると、効率よく、またお得な土地が見つかるのではないでしょうか。
●契約形態と仲介手数料
土地や建物の売り主が不動産業者に売買を依頼する際には、一つの不動産業者にだけ仲介を依頼する「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」もしくは、複数の不動産業者に仲介を依頼する「一般媒介契約」を結びます。
では、購入希望者にとっては、どちらの契約形態のほうが得なのでしょうか。
「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」の場合、扱える不動産業者が1社なので、その物件に出会う確率が低くなりますが、信頼できる不動産業者が扱っているという安心感が得られます。
一方、複数の不動産業者に仲介を依頼する「一般媒介契約」では、A社とB社が同じ物件を扱っている可能性があり、よい物件ほど早く売れてしまうことになります。
400万円を超える売買契約での手数料の上限は、不動産価格の3%+60,000円(消費税別)と定められていますが、「デベロッパー系」や「ハウスメーカー系」の不動産業者では、自身が売り主である場合があります。またまれなケースですが、売り主が不動産業者をスルーして自ら買い主と売買契約を結ぶことができます。
このような場合には基本的※に仲介手数料は発生しません。なお、手数料が必要な物件には「仲介物件」などの表記があるので容易にわかります。
※ 契約形態によっては手数料や違約金が必要になることもあるので注意。
●不動産業者が行うサービスの範囲
不動産業者の本来業務は不動産の売買や賃貸の仲介でしたが、「デベロッパー系」や「ハウスメーカー系」の不動産業者の場合には、宅地建物取引主任者のほかに不動産鑑定士、土地家屋調査士、司法書士、税理士、弁護士などもいることが多く、仲介以外のサービスに応じてくれることがあります。
なかでも、ありがたいのは「融資の相談や紹介」「建築業者の紹介や斡旋」「登記手続き」「税金の相談」など。
賃貸住宅を建てる場合には、一括借り上げや家賃の管理にも応じてくれるなど、家づくり全般に関わるサービスが受けられます。
こうしたサービスには別途費用を必要とするものもありますが、あちこち駆けずり回らなくても済むという利便性は捨てがたいものです。
●不動産業者にニーズを伝える
これから土地を手に入れようとする人の多くは不動産業者との接点がなく、何をどの程度まで話してよいのか、不安や戸惑いを感じているのではないでしょうか?
しかし、よい土地を紹介してもらうためには、自分たちのニーズを明確に伝えなくてはなりません。
最低限の条件として、「どの沿線(地域)に住みたいか」「予算はいくらか」「どれくらいの広さが必要か」といったことは決めておきたいものです。
さらに、駅に近い、学校が近い、買い物が便利、緑が多いなど、ライフスタイルやこだわりなどが絞り込みのポイントとなります。
慣れた担当者であれば、そのあたりをうまく聞き出してくれますが、なかには不慣れな担当者にあたることもあるため、あなたからも積極的に希望を伝えるようにします。
ある程度絞り込みが終われば、物件の所在地や条件などを教えてもらい、現地へ赴き確認しましょう。この工程で時間や労力を惜しんではいけません。
●こんな不動産業者には気をつけよう
契約済みの物件情報を店先に掲示したままで、一種の「おとり」として利用する不動産業者もいます。
このようなケースでは、たいてい別の物件を勧めてきますが、気に入らなければはっきりと断りましょう。
「よい物件だからすぐに決まってしまうよ」とか「手付けだけでも払っておいたほうが安心なんじゃないかな」といった具合に、契約を急がせたり手付け金を稼ごうとする不動産業者もいます。
気に入った物件でも迷いがあるようであれば、簡単に「YES」と言ってはいけません。
なお、東京都のHPには、「よい業者の選び方」というコンテンツがあります。参考にしてください。
●重要事項の説明
いよいよ契約という段階までくると、仲介をする不動産業者は、物件に関する重要事項の説明を行わなくてはなりません。
例えば、取引の態様、所在地、登記簿に記載された事項(地目、面積、所有権など)、都市計画・建築基準法に基づく制限(用途地域、建ぺい率、容積率、敷地と道路との関係など)、取引条件などを明記した書類を用意して説明してくれます。
すべての項目に記載が必要とは限りませんが、あまりにも項目が少ないものや不審な点が多いのは要注意。遠慮せずに必ず確認しましょう。
なお、重要事項を説明する際の様式は法的に定められたものがありません。そのため、各不動産業者でフォーマットはまちまち。
そこで、参考になるのが国土交通省の「重要事項説明の様式例(PDFファイル)」。できれば、事前にダウンロードしておき、物件の候補を絞り込んだ段階でこのひな形に書き込んでおくと、比較する際にもわかりやすく安心です。
最後に、不動産業者や関連団体など、それぞれ異なる立場の方を訪問!
インタビューを行い、その特徴と施主へのアドバイスをいただきました。
(インタビュアー:住宅ライター 西村弘志)
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今回の土地探しに関するチェックシートを用意しました。これまでの要件をもとにして書き込んでみましょう。