立地、広さ、地盤などの条件がそろった土地が見つかっても、法規制の厳しい都市部では思い通りの家づくりができないことがあります。
このようなことのないよう、法規制をあらかじめ知っておけば後悔せずにすむのではないでしょうか。
なお、ここでは一般的な住宅を建てるという前提で法規制を見ていきます。
また、自治体によっては規制の内容が異なる場合があるので、詳細は自治体や建築のプロに尋ねてください。
「土地があれば家が建てられる」とは限りません。土地の利用方法を定めた都市計画法という法律があるからです。
そのため、市街化区域内では比較的自由に建築できますが、市街化調整区域内では特別な場合を除き建築が許されていません。
一方、無指定区域や都市計画区域外の土地は、農地法や自然公園法などの規制がなければ原則として建築可。しかし、電気や水道などが敷設されていない原野のような所もあり、現実的には建てられないことがあります。
用途地域 | 住宅 | |
---|---|---|
住居系 | 第1種低層住居専用地域 |
◎ |
第2種低層住居専用地域 | ◎ | |
第1種中高層住居専用地域 | ◎ | |
第2種中高層住居専用地域 | ◎ | |
第1種住居地域 | ◎ | |
第2種住居地域 |
◎ | |
準住居地域 | ◎ | |
商業系 | 近隣商業地域 |
○ |
商業地域 | ○ | |
工業系 | 準工業地域 |
△ |
工業地域 | △ | |
工業専用地域 | × |
用途地域は、その地域をもっぱらどのような目的※で利用するかによって12に分けられ、ちなみに工業専用地域内では住宅は建てられません。
また、良好な住宅環境を目的としている住居系の地域では床面積、高さ、構造などの厳しい規制があり、道路や敷地が狭いほど建築の自由度が低くなります。
用途地域に関しては、各自治体が独自に地域分けを行っており、ひと目でわかる地図などの販売や閲覧のサービスを行っているので、ぜひ活用しましょう。
※ 住宅だけでなく、店舗やオフィスなどの商業施設、倉庫や工場などの工業施設も制限を受けます。このほか、住居系では自治体が定めた条例や「建築協定」という規制が設けられていることがあります。
敷地の面積については、都市計画によって最小規模が定められている場合があります。
例えば、東京・世田谷区の第一種低層および第二種低層住居専用地域内では、建ぺい率に応じて最低敷地面積が、40%で100m2、50%で80m2、60%で70m2と定められています。
さらに、その敷地内の建物の床面積に関しては、過密化を防ぎ良好な敷地環境や住宅環境を守るために、建ぺい率と容積率という制限が定められています。
建ぺい率=建築面積÷敷地面積 容積率=延べ床面積÷敷地面積 |
いずれの制限も、用途地域によってあらかじめ数値が定められていますが、同じ用途地域であっても地区によって異なることがあるので、必ず各自治体の資料で調べてください。
また、容積率は前面道路の幅が12m未満の場合には、より厳しい数値が適用されることがあるので注意しましょう。
では、建ぺい率や容積率が土地探しにどのように影響するか、図1のような敷地面積168m2の土地に建築面積56m2の家を建てる場合(第4回「土地の形状と周辺立地」で使ったモデル)をもとにして考えてみましょう。
例えば、この土地が第1種低層住居専用地域(最も制限が厳しい)にあり、建ぺい率40%、容積率80%が限度(原則)であっても、図1では建ぺい率が33%、容積率は67%と制限を下回りクリアします。ところが、もし敷地面積が140m2より狭ければ制限オーバー。
つまり、住宅の最低限の規模が決まれば、おのずと敷地の最小面積も決まるというわけです。
もうひとつ重要なのが前面道路の幅。
住居系の用途地域における容積率の限度は、原則に基づいて計算される値と、道路幅に0.4を掛けた値とを比べてより厳しい方の値を容積率とします。
第1種低層住居専用地域のように容積率が厳しい地域では、道路幅が容積率に影響することはほとんどありませんが、もし図1の土地が容積率300%以上となる規制の緩やかな用途地域にあると、道路幅から求められる240%(道路幅6m×0.4)が容積率の限度となるので注意しましょう。
ところで、建ぺい率や容積率を計算する際の敷地面積は、第4回で取り上げた「道路幅が狭いと利用できない敷地」(図2)のように、道路とみなされた部分は敷地面積※に含まれません。前面道路が4m※※未満の場合には、この点に注意しましょう。
※ 角地のすみ切り部分も敷地面積に含まれないことがあります。
※※ 6mと定められている地域もあります。
面積だけでなく、住宅の高さに関する法規制もあります。これは、主に近隣の日照環境を守るために定められたもので、戸建て住宅で気になるのは斜線制限と高さ制限です。
限られた敷地内では、南側に庭を設けて住宅の日当たりをよくしたいものです。そのため、敷地の北寄りに建物を建てます。図3(a)は、北側が道路に面している敷地で、道路側の境界線から1m離れた※ところに2階建ての住宅を建てた例。
前面道路の反対側の境界から1:1.25(1:1.5の場合もある)の勾配の斜線を引き、その線からはみ出して建てることができないという制限があります。これが「道路斜線制限」です。
※ 通常は敷地いっぱいまで建てることはありませんが、もし境界線ぎりぎりまで建てると、道路斜線の起点は前面道路の反対側の境界となり、図3(a)に比べ斜線制限がより建物側に迫ってきて不利です。
一方、図3(b)は、敷地の北側に隣地があり建物を北寄りに建てる場合の例。図のように北側の隣地境界から5m※立ち上げた地点から1:1.25の勾配の斜線を引き、その線からはみ出して建てることができないという制限が「北側斜線制限」。
これは、南側に位置する建物が北側の敷地への日差しを遮ることのないように設けられたもので、道路斜線と並ぶ厳しい制限です。 このほか、隣地斜線制限がありますが、高さ20m超の建物に対する制限なので考慮する必要はないでしょう。
※ 第1種・第2種低層住居専用地域では5m、第1種・第2種中高層住居専用地域では10m、それ以外では北側斜線制限はありません。
高さに関する制限は、斜線制限だけではありません。第1種・第2種低層住居専用地域では「絶対高さ制限」があり、10m(12mの場合もある)以上の建物はダメ。
また、「高度地区※」の規定が設けられている自治体では、独自の高さ制限がある場合もあります。
さらに、第1種・第2種低層住居専用地域では、軒高7m以上または3階建ての場合に「日影規制」※※が適用されますが、これはまれなケースです。
※ 東京都の第一種高度地区では、北側斜線制限が1:0.6と極めて厳しくなっています。
※※ 日影規制の計算はかなり難しいので、プロの手に委ねましょう。
高さの制限のうち、斜線制限に関しては建物を境界線から離して建てることで、また絶対高さ制限は3階建てにせず、2階建てにすることでクリアできます。
容積率に関しては、制限が緩和される場合があります。対象となるのは、地下室※と車庫です。
図4のような敷地に、各階の床面積が56m2で延べ床面積が168m2の住宅を建てようとすると、3階建てにすると容積率は100%となりますが、2階建て+地下室にすれば、延べ床面積の1/3以下の地下室は容積率では算入しないという制限の緩和(特例)があり、容積率の厳しい地域でも広い家が建てられます。
車庫の場合には、延べ床面積の1/5以下は容積率では算入しないという制限の緩和(特例)があり、図5の場合には28m2までの車庫ならば大丈夫です。
なお、図5のように住宅の一部を車庫とするほか、いわゆるカーポートでも屋根がある場合には、その規模によって建築面積に加えられることがあり、建ぺい率に影響するので注意しましょう。
※ 地下室の要件は、各自治体によって多少異なることがあるので、事前に調べておくことをおすすめします。
今回の土地探しに関するチェックシートを用意しました。これまでの要件をもとにして書き込んでみましょう。