せっかく手に入れた土地が実は軟弱地盤で、建てた家が傾いたということがあってはいけません。また近年では、地震対策への関心がより高まってきています。「地盤」も土地探し上重要なポイントです。
今回は、家を支える地盤を中心に自然災害や造成の問題点などをチェックしてみることにします。
地盤の良しあしは、地盤の強さを示すN値※1で判断します。
マンションなど規模の大きな建築物では、ボーリング調査によりこのN値を測定しますが、戸建て住宅の規模であれば手軽にできるスウェーデン式サウンディング試験(以下SS試験)で十分。
費用も10万円以内でおさまるとあって、SS試験による地盤調査を行うケースが増えています。
大手ハウスメーカーでは工事費に含まれていることが多く、中小規模でも積極的に取り入れているようです。もし、施工者が地盤調査を行わないのであれば、施主自ら地盤調査会社に依頼することをおすすめします。
例えば、地盤保証検査協会では指定地盤調査会社による地盤調査をもとにして審査・適合と判断すると、不同沈下※2で地盤が崩壊したとき10年間にわたり建物と地盤の保証を行います。
このほか、「一般社団法人 住宅構造・基礎・地盤保証支援機構」も候補として挙げておきます。
しかし、地盤調査は土地を購入してからの工程。もし、地盤調査で軟弱地盤と判定されると基礎をより強固なものにする必要があり、予算をオーバーすることもあります。
このようなリスクを少しでも減らすためには、土地探しの段階で、地盤に問題がないかどうかあらかじめ調べておくと安心ですね。
※1 N値
地盤の強さを示す数値で、地盤調査を行うことにより、知ることができます。
硬い地盤は、N値が高く、軟らかい地盤は、N値が低くなります。
※2 不同沈下
地盤が不均等に沈下すること。ピサの斜塔のように、その上の建物が傾く原因となります。
日本は世界的にも軟弱地盤が多いと言われています。海、河川、池や湖沼のそばは要注意です。
都市部では、「暗きょ」※を見落としがち。
坂のある街並みでは、坂の下ほど土地が低く水が集まりやすいので気を付けましょう。また、池や湖沼、田んぼを埋め立てた土地も軟弱地盤の可能性が大です。
このような土地では、地震の揺れにより個体であった地盤が液体のように変化する「液状化」現象が起こり、その上の建物が沈下したり傾いたりすることがあります。
これらは見た目にわかりにくいのですが、公図(登記所に保管されている土地台帳付属地図)で調べるとわかる場合があります。手っ取り早いのは、その周辺に古くから住んでいる方へのヒアリング。環境と合わせて、有力な手掛かりとなるのではないでしょうか。
では、比較的地盤が安定している所はというと台地や丘陵地帯。開発されて時間の経過した所はリスクが少なく、人気も高いようです。
※ 暗きょ
地上に建物や施設を設けるために、小規模な河川や水路を地下に埋めたもの。また地下水を流すためのパイプなどを、土の中に埋めたもの。
傾斜地はそのままでは有効に利用できないため、通常は盛土または切り土によって平らな土地に造成します。
切り土は、元の地山を切り取った部分なので比較的地盤は安定していますが、造成されてまもない盛土部分は土が十分に締め固められていないことが多く、軟弱地盤の可能性があります(高さ2m以上の盛土はとくに注意)。
下の図では、土地Aはもとの地山のままですが、土地Bは切り土と盛土が混在しており、盛土部分の締め固めが不十分な場合には地盤の強さが(赤と青の部分で)異なるため不同沈下を起こすかもしれません。
できれば、土地Aか切り土だけの安定した土地を選んだ方がリスクは少なくなります。
造成前の地形がわからなくても、現況をよく観察するとおよそのことがわかります。
右の写真では、道路に面した石積みの上の空き地は、明らかに上の図の土地Bのように切り土と盛土によって造成された土地であると判断できるのです。
第1回「環境のよい土地とは?」で「土地を必ず見て歩くこと」と言いましたが、地盤の良しあしも同様。土地探しでは現地を調べることが大切です。
例えば、造成されてまもない土地であれば、雨が降っている時やその直後に地面を見ましょう。
水たまりができていないようなら、土の締め固めが十分でないため水を吸い込んでいる可能性があります。また、鉄の棒などを地面深く簡単に突き刺せるようであれば要注意です。
周囲に家屋が建っている場合には、その基礎のコンクリート部分を見てみましょう。
比較的築年数が短い(数年以内)にもかかわらず、ひび割れがあるようであれば、不同沈下を起こしているかもしれません。
その地盤の性質がこれから住む土地と同じなら、将来不同沈下するリスクがあるという信号です。また基礎に限らず、ブロック塀の傾きや道路の亀裂なども参考になります。
地図は、土地探しには欠かせないものですが、国土地理院が発行している25,000分の1「土地条件図」を見ると、台地、傾斜地、盛土など、その土地のおよその特徴がわかります。
「土地条件図」は、日本地図センターをはじめ全国の大手書店で購入できますが、首都圏や名古屋、京阪神などの地域に関しては、Web上から閲覧することも可能です。
このほか、古地図、自治体のハザードマップなども有力な手掛かりとなります。
また、首都圏では「池袋」「浦和」「渋谷」「浅草」「荻窪」「亀有」、近畿圏では「住之江」「大津」「貝塚」など、水辺の地形を表す字や水と関係の深い動植物を表す字を含んだ地名は、軟弱地盤を疑ってみたほうが無難です。
国土地理院の主題図
購入できる書店一覧もあります。
軟弱地盤か否かの見分け方についていくつかポイントを挙げてきましたが、実際に地盤調査をしたわけではなく確証はありません。
そこで、参考になるのが過去に行われた地盤調査の結果。
地盤や地質の調査などを専門に行っているジオテック(株)では、過去16年間の住宅地盤データベースGEODAS(ジオダス)をもとにして、1件に付き 3,150円(税込)で「簡易地盤診断書」の作成サービスを行っています(首都圏のみ)。
また、同社のWebサイトの「地形で見る軟弱地盤マップ」を利用すれば、無料で過去の調査結果を閲覧することができるので、良好な地盤か軟弱地盤かのおよその目安になるのではないでしょうか。
ジオテック
過去の調査結果のほか、軟弱地盤の見分け方などのノウハウも満載。
軟弱地盤は地震の揺れが大きくなる傾向にあります。
また、軟弱地盤に多くの雨が降ると傾斜地では土砂崩れの恐れが高くなります。
地震に関しては、そのメカニズムなどがかなり解明されてきましたが、予知はまだできません。
現段階では、地震の起こりやすい活断層の位置を表した「日本の活断層図」(東京大学出版会)や「都市圏活断層地図」※(国土地理院)、各自治体のWebサイトにある地震関連情報を参考にして、リスクを回避するのが最善です。
とはいえ、『東日本大震災』のような巨大津波は200年に一度、いや1000年に一度ともいわれており、そのために過度な安全性を求めるのも考えものです。
地震による揺れもさることながら、海から近い地域では津波が心配です。10mを超える津波が襲ってきても安全な建物を建てようとすると、建築費がとても高くなります。
やはり、標高10m以上の高台を選ぶのがオススメです。どうしても標高10m以下の土地に住まうときには、あらかじめ避難するルートを確かめておきましょう。
埋め立て地や干拓地など、地盤が主に砂でかつ水分が多く含まれている場合には、地震の振動により地盤が液状化する恐れがあり、やはり不同沈下を起こします。
台風や集中豪雨による水害は、雨の多い地域、しばしば台風の通り道となる地域、氾濫しやすい河川の沿線、周りより土地の低い所など、過去の災害の記録や地図から予想がつくものです。
こうした土地は、水害に遭いやすいだけでなく、水はけが悪いことからすでに軟弱地盤であることが多く、なるべく避けた方が無難ではないでしょうか。
※ 「地図センター」からも購入できます。
今回の土地探しに関するチェックシートを用意しました。これまでの要件をもとにして書き込んでみましょう。