オランダに上陸した日を今も忘れません。飛行機から下を覗くと海の中に無数の洋上風力発電のブレードが見えました。
同じ風車でも、チューリップに風車というわたしのオランダのイメージとは全く違いました。ガスや石油への依存から風力と太陽エネルギーの活用が進められていたのです。
空港に降り立ちタクシーを呼ぶと、なんとテスラのタクシーが来ました。当時日本ではまだ珍しい高級電気自動車。「テスラが来るなんてラッキー!幸先のいいスタートだわー」などと思っていたら、次のタクシーもテスラ、その次も。気づけばテスラだらけ。オランダは電気自動車(EV)へのシフトがとっくに始まっていたのでした。
オランダは自転車道が整備されています。政府は明確に自転車利用を勧め、CO2を排出する車には厳しい政策を打ち出しています。
アムステルダム市内の駐車料金は、個人的な感覚ですがここ数年で2倍になったと言っても過言ではありません。日曜日は無料で駐車できた区域もいつの間にか有料に。無料の区域に駐車したはずなのに、同じ日に2回も駐車違反のレター(罰金52ユーロ×2回!)が来て目を疑いました。
市のホームページで確認したところ、しれっと有料区域に大幅に変更されていました。これはつまり、もう市街地に車で来るなという警告です。それ以来、アムス中心地へはトラムやメトロを使っています。お金で痛い目に遭うと効果絶大。思うツボです(苦笑)。
また、アムステルダムの市営駐車場も驚くほど高くなりました。ダム広場付近は一時間7.5ユーロ(約900円)。一泊64ユーロ(8000円弱)です。罰金よりも高いので、車で出かける気がどんどん失せます。
そこでオススメしたいのがP&R (パーク&ライド)。中心地から少し離れた指定駐車場に車を停め、そこから公共の交通機関に乗ると駐車場代がなんと1ユーロです。この金額の差たるや、明確な政策の意図を感じます。ちなみにその収益は、道路整備、子供の遊び場や緑地化にも使われています。
飛行機は鉄道に比べ約5倍の温室効果ガスを排出します。世界の航空会社が排出するCO2は、なんと全体の約2%とも言われています。
スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの登場以来、ヨーロッパでは飛行機の利用を避ける「飛び恥」の気運が高まっています。そんな中、KLMオランダ航空はベルギーなどの短距離路線は鉄道を利用するよう促していて、KLMの窓口で乗り継ぎ便のごとく鉄道のチケットが買えるのです。
さすが世界最古の航空会社。創業100年でも時代の流れに柔軟に対応するところがオランダらしいです。 更に、2022年からヨーロッパと日本を結ぶ長距離路線で、使用済みの食用の植物油からつくるバイオ燃料の利用を拡大するそうです。
アムステルダム市はサーキュラーエコノミー(循環型経済)の世界最先端都市として注目されています。
サーキュラーエコノミーとは、今までは廃棄処分されていた不要なものも資源としてリサイクルシステムをビジネスに取り入れて、環境にも経済にも持続可能性を持たせる新しい経済活動です。つまり、サスティナブル(持続可能)であることが基本です。
従来、建築現場はかなりの量の廃材がでることが大きな問題でした。これからは、何に使い回しができるのかまで最初からプランに盛り込んだ設計が求められるのです。つくるだけつくって、あとは取り壊そうが関係ない、という日本の業界とあまりに違います。
オランダの大手銀行【ABN AMRO】の施設「CIRCL(サークル)」は、銀行とは思えないほどスタイリッシュ。 カフェ、バー、アートの展示、会議室などが入る複合施設ですが、駅前ということもあり誰もが気軽に入れる開かれた銀行施設。特に金曜の夜はいつも人で賑わっています。
この施設は解体時をまず考えて設計されているのが特徴。例えば、その後も再利用できるよう接着剤は使わず、金具のみで建設されていること。材料の木材やインテリアも今後再利用できる物で構成されています。
特に、床はなんとも美しい。これは、アムステルダム市内の他の解体現場から出た様々な木材を敷き詰めたものです。アートまで廃材を使って作られたという徹底ぶり。銀行が関わることで、サーキュラーエコノミーを取り入れたい他の業界との資金的な連携もしやすくなるのではないでしょうか。
例えば、2017年のDDW(ダッチデザインウィーク)のメインパビリオンの材料はすべて借り物です。最初から、使い終わったら返せるように設計されました。
同じくアイントホーフェンにあるピートハインイークのアトリエもDDWの会場になっています。スクラップ木材や工場廃棄物などを利用した個性的な家具を創り出す世界的オランダ人デザイナー Piet Hein Eek(ピート・ハイン・イーク)。その事務所兼工房を見ることができます。
ピートの作品はもともとは廃材やゴミ同然だったものを彼のデザインというフィルターを通すことで価値を生み出している。まさに、デザインの力が付加価値を与えています。
衣食住様々な分野で、オランダのエコロジー、サステイナブル、サーキュラーエコノミーを意識した地球環境への取り組みについてお伝えしてきましたが、根底にあるのはすべて高い「デザイン力」だと思うのです。
これやったら面白そう。環境にも優しい上に逆におしゃれ的な発想です。何事も人生を根っから楽しもうとするオランダ人の前向きな姿勢が無理なく地球環境問題に取り組める所以だと思います。いくらやれやれ言われても、ダッサイことしたくないですよね。やるなら日々楽しく好奇心旺盛に、地球全体のことを考えて、長期的に取り組む。日本人としても受け入れ、応用できる部分はたくさんあるように思います。
実は、「ヨーロッパに暮らしながら旅をして」は今回で最終回。20回もオランダ、その他の国からお伝えすることができ、心から感謝申し上げます。最後にお伝えしたいことを改めて考えたとき、オランダの地球環境問題への取り組みが真っ先に思い浮かびました。
昨年7月、オランダは観測史上最高気温の40.7度を記録。例年は24度前後なので、冷房のない中で40度は地獄の暑さでした。このまま地球は終わるのかも…、と真剣に危機感を覚えた年でもありました。
オランダは2050年までにサーキュラーエコノミーの確立を目指しています。それほど長期的な視野で取り組む問題です。そんな今こそ地球環境問題について考えたい。20年後、30年後にどのような世の中になるかは、今現在の私たちの取り組み方次第で大きく変わるはずですから。
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