高石陽子さん
これまでインテリアデザイナーとしてモデルルームや新築住宅、マンションリフォームなどのインテリアデザインに携わる。
さらに現在は個人邸の整理収納計画から音や香り、食器の選定なども含む店舗デザイン、セミナー講師など幅広い分野で活躍。インテリアの基礎を教えるインテリアサロンCASAも主宰。オランダ在住。
Yoko Takaishi Design 代表
インテリアデザイナー
/整理収納アドバイザー
/The Interior Design School Diploma
取得 /BIID 英国インテリアデザイン協会 正会員
前編に引き続き、後編もベルサイユのドメストルさんのお宅からお届けします。
〈ドメストル美紀さんは、仏人のご主人、14歳と12歳の息子さん達、そして猫のマエストロ君と、フランス・ベルサイユにお住まいの文筆家です。著書『フランス伯爵夫人に学ぶ 美しく、上質に暮らす45のルール』〉
高石:この家で一番気に入っているところを教えてください。
美紀さん:立地条件です。高台で風通しがよく、地下室も湿気はありません。近くに学校がいくつかあるのですが、キッチンでコーヒーを淹れているとき、窓から街路樹の下を学生たちが通学する風景を眺めるのが好きです。朝から晩まで、街の喧騒しか聞こえなかったパリのアパルトマン時代とは大違い。
高石:家全体のインテリアのテーマや大切にしていることはありますか?
美紀さん:「ノスタルジー」をテーマにしました。子どもたちは、間もなく思春期という不安定なフェーズに入ります。夫も私も人生の折り返し地点を通過。家に帰れば家族皆がほっとできる、そういうインテリアにしたいです。
また、「しっくりくる」ということも大切にしています。新しいものも、古いものもしっくり。家と家族がしっくり。新しいものが新しく見えないように、古いものが古ぼけて見えないように、バランスに気をつけています。
高石:このソファもインテリアにしっくりと合っていますね。長く使われているものですか?
美紀さん:昔、「ロッシュボボア」で購入したものです。実は、オフホワイトのソファなのですが、自分で赤いカバーを縫いました。
リフォームを始めたとき、壁を布張りにしたいと考えて、モンマルトルの布地街で何種類かの布を試し用に買っていたんです。でも結局、壁の布張り職人が見つからず、諦めたのですが、「この布を何にも使わないのはもったいないなぁ。そうだ、ソファーに掛けて猫のひっかき除けにしよう」と。
裏を表にして畳んでいた布を見つめていたとき、ふと、表の白地ではなく裏の赤地のほうが素敵かも、と考えました。ジャガード織り風の生地なので、よく見れば裏だとバレますが、大ざっぱな性格なので気になりません(笑)。
それから早速、お菓子の包装紙をアームに当てて切り取り、まるで折り紙か工作のように、アーム部分を縫ってみました。背もたれの部分も同じように塗っていき、なんとか及第点の仕上がりに。ただ、クッションは、同生地でつくりましたが今ひとつで…。
高石:ソファが柄もののときは、クッションは無地の濃い同系色(グラデーション)にするか、同じトーンで反対色、例えばモスグリーンをアクセントカラーに入れるのもいいと思いますよ。多色柄の場合、クッションに一色取り入れると馴染みます。
高石:こちらのマントルピースも、赤色で個性的ですね。
美紀さん:これは数年前のクリスマスに訪れた教会の司祭館の暖炉からインスピレーションを貰いました。あまりの素敵さに陶然となったそのマントルピースは、赤いクリスマス・オーナメントで飾られていました。
暖炉のレンガ、薪の炎、と全てが赤く、その温かい色に何だか子どものように幸せな気持ちになったのです。それで、子どもたちにもそんなクリスマスの情景を持って貰えるような、レンガの暖炉にしようと決めました。
高石:でも、全面をレンガにされなかったのは?
美紀さん:夫や建築家、工事の人たちに「唐突」「存在感ありすぎ」「飽きる」などと反対されて。でも、私としてはクリスマスの赤が頭から離れない。それで代替案としてレンガ色の大理石なんてどうかしら、となりました。でも値段を調べたら気絶しそうに…。
ちょうどそんな頃、義理の両親が「マントルピースなら別荘の屋根裏にたくさんあるから持っていって」と。行って見てみると、黒大理石、白大理石に、ラングドック・マーブルと言われる赤大理石のものがあったんです。それを譲り受けて、職人さんに取り付けてもらうことなりました。
高石:暖炉をつくる職人さんは、見つかりましたか?
美紀さん:それがなかなか見つかりませんでした。今のフランスは職人不足。特に暖炉づくりは専門職で、普通の石大工さんはだめなんです。結局、インターネットで見つけたルーマニアから移民の職人さんにお願いし、無事施工してもらえました。できあがった暖炉はとても良く火が焚けますし、ジョイントはコンクリートのようなグレーではなく、石灰を使ったので、チョークのような白くきれいな仕上がりとなり、満足しています。
高石:今後、改善したいところはありますか?
美紀さん:屋根裏にある倉庫です。元は2階建てでしたが、今回のリノベーションで屋根裏に行く階段をつくってもらいました。ホビールームにするつもりでしたが、子どもたちの遊び部屋になりそうです。
あと、ここの壁紙は自分で貼ろうと考えています。こちらの職人さん、とても雑なので… (苦笑)。モリスの壁紙でユニコーンが出てくる少し物語風な図柄があるのですが、それを自分で貼ってみたいんです。
高石:壁紙までDIYとは素晴らしい。日本でもこんな風に気軽に壁を楽しめるといいですね。
自分で貼るならフリース壁紙(不織布)がオススメです。海外の壁紙は、巾48〜53cmと狭いので扱いやすいです(日本は巾約90cm)。 プロの職人さんでも紙素材は難しいですし、柄合わせがあると更に難易度は高くなります。
美紀さん:なるほど。実は、ダイニングのモリスの壁紙は職人さんが失敗したので剥がして貰いました。私がトライしようとしているのは、1ユニットで1柄で柄合わせがない絵みたいなものなので簡単だといいのですが。
高石:最後の質問です。あなたにとって家とは?
美紀さん:「『帰る場所』があるから、安心して冒険してこよう」と、家族が思える場所であって欲しいです。
−−−インタビューを終えて−−−
フランス伯爵家らしい、真の豊かさを知る大人の空間でした。使えるものは代々受け継ぎ丁寧に長く使う。物は持ち過ぎず、上質なもの、こだわり抜いた自分のお気に入りに囲まれる暮らし。これぞ真の豊かさです。
一方で、自分で何でもトライする気さくなお人柄が住まいにも感じられました。まさに品格あるエレガントな暮らし。この品格の正体とは一体何なのでしょうか。内面から滲み出るオーラのような?年月を重ねる程に深まるそれは、まるで赤ワインのよう。家も人も、品格や深みを出すにはある程度の熟成が必要なのかもしれません。
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