高石陽子さん
これまでインテリアデザイナーとしてモデルルームや新築住宅、マンションリフォームなどのインテリアデザインに携わる。
さらに現在は個人邸の整理収納計画から音や香り、食器の選定なども含む店舗デザイン、セミナー講師など幅広い分野で活躍。インテリアの基礎を教えるインテリアサロンCASAも主宰。オランダ在住。
Yoko Takaishi Design 代表
インテリアデザイナー
/整理収納アドバイザー
/The Interior Design School Diploma
取得 /BIID 英国インテリアデザイン協会 正会員
夏休みはいかがお過ごしでしたでしょうか?
この夏は、今できることを満喫する!と決め、思い切ってフランス、ドイツ、ベルギー、ルクセンブルク、モナコ、北欧、オーストリア、スロバキアなど、様々な国を旅しました。なんて贅沢〜!と思われたそこのあなた。実は全く逆なのですよ。
ヨーロッパでこういう旅は貧乏性の夏の過ごし方。確かに疲れました(苦笑)。本当に贅沢な夏休みとは、何もしないでのんびりする(しかも3週間!)とオランダ人は言います。いつかそんな豊かな夏を過ごしてみたいものです。
今回はオランダを飛び出しフランスのベルサイユへ。ベルサイユ宮殿に行かれたことがある方もいらっしゃると思います。パリから1時間弱の風光明媚な街です。
ドメストルさんはフランス伯爵家のご出身。奥様とお二人の息子さんの4人家族です。フランスの大学院 INSEADで二人は出会い、フランス伯爵家に嫁がれた美紀さん。『フランス伯爵夫人に学ぶ 美しく、上質に暮らす45のルール』の著者でもあります。どんなお宅かご興味ありますよね?
リノベーションが終わるので遊びにいらっしゃいませんか?とご連絡をいただき、早速夏休みに訪れました。
ドメストル氏の祖母は、ブルターニュ地方のゲランド産の塩を世に売り出した方。ゲランド一帯の不要な土地開発を避けるため、アソシエーションとしてその一帯の塩田を乱開発から守ったのだそう。 美紀さんの著書は こちら
高石:こちらのお宅の広さと、住み始めたきっかけは?
美紀さん:180平米の7ベッドルームです。以前、横浜に駐在していたのですが、フランスに帰国することになり、緑が多く学区の評判が高いところに住みたいと思ったのがきっかけです。学校が決まり、子どもたちの足で通えるエリアで家を探しました。なかなかいい売り物件がなく、結局賃貸でここを借りました。
30年も賃貸に出していた家なので、メンテナンスも最小限という劣悪物件。でも、昨今はベルサイユ・エリアが人気で、良い買い物件が見つかりませんでした。しばらく住みながら探すことになったのですが、97歳のオーナーが他界したのを機にこちらを購入することになりました。
高石:素敵なフローリングですね。
美紀さん:今回のリノベーションで、ダイニングルームを新たに作りました。フローリングのことをパーケと言うのですが、このパーケは「ベルサイユ」という名前の張り方です。
実際ベルサイユ宮殿にたくさん使われています。こちらでは、樫の木のパーケが一番よいものとされています。床材は、組み合わせが無限にあるから楽しいですが選ぶのは大変です。
高石:キッチンの面材は、ワインの木箱ですか?
美紀さん:キッチンは最初にペンキを剥がしてみて、何かおもしろいことできないかな?どうせゴミとして捨てるはずなので失敗してもいいや!と思い、ワインの木箱を自分で貼ってみました。
扉も古いオーク素材で探していましたが、真新しい薄い色のオークばかりで、上からラジウム外用の塗料で古さを出すように自分で塗りました。30年待てばいい飴色になるかもしれないですが、それまで待てそうもないので(笑) 。
高石:根性で階段のペンキを、自分で剥がされたとか?
美紀さん:あるお宅で見かけた樫材の階段に惹かれていました。この階段の古いペンキの下が樫材で作られているとわかり、ペンキを剥がして木材を見せたいと思いました。
子どもがペタペタと裸足のことが多く、木肌の感触を足裏に感じてもらいたくて。ところが工事業者に委託しても一向に話が進まず。ペンキを剥がしてヤスリをかけるという根気のいる作業を果たしてこの人たちがやってくれるのか?怪しいぞ!と思いました。機械で木部まで必要以上に削るとか、莫大な費用を請求されるとか、そんなパターンになるだろうと諦めました。
でも、せめて自分でやってみようと。代替案はカーペットを貼ることだったので多少しくじってもいいと思い、試しにDecapaintという化学製品でペンギを剥がしました。6割がた剥がしてから、ヤスリをかけるという果てしない作業。二度とやりたくないほど大変でした。
高石:ウィリアムモリスの壁紙が、素敵なお部屋ですね。
美紀さん:本当にたくさんある図柄から選びましたが、失敗もしました。先ほどのダイニングエリアの白い壁。実は、色をつけたら奥行きが出るんじゃないか?とベージュグレーのペンキを塗りました。
ところが、光の加減で紫に見えてしまい、二人とも気に入らなくて壁紙にすることにしました。そこで、今度は彼が選んだ壁紙が山吹色でした。それが暖色過ぎたと思うのです。こちらに向かってきているような気がして狭く見えて。
高石:部屋の奥の壁は寒色を選ばないと狭く見えますよ。寒色は後退色と言って、後ろに下がっているように見えるので奥行きを感じるのですが、暖色(進出色)はこちらに飛び出してくるように感じ、お部屋が狭く見えるのです。
美紀さん:まさにそれをやってしまいました。結局剥がしてまた白に戻したのですが、私の心の中ではまたチャレンジしたいと思っています。
次に、この寝室は私が選んだのですが、クラシカルなウィリアムモリスの壁紙にしました。モリスのウェブサイトやカタログを見た時、その美しさに感動して絶対モリスと思いました。いつかモリスの家にも行ってみたいです。
高石:私はロンドンに住んでいた頃、レッドハウス(モリスの新婚時代の家)に行ったことがありますが、モリスの原点を感じる素晴らしい場所でした。「モダンデザインの父」と呼ばれていますが、彼は元々裕福な家庭で生まれ育っているのですよね。
「役に立つかわからないもの、あるいは美しいと思えないものを、家の中に置いてはならない」と1800年代でこんなことを考えるなんて、豊かな人にしか言えない言葉だと思うのです。
美紀さん:そうですね。ちなみに、今日はクッションを茶系にしましたが、他のものを製作中です。
モリスは壁紙と同じ柄のファブリックも多数ありますが、この壁紙のファブリックはまだ出ていないです。発売になったらここに同柄のカーテンを作ろうと思っています。
高石:こちらの部屋はドレッシングルームですか?
美紀さん:将来的にそうするつもりです。この洗面台、実はわたしが作りました。この家具は、ワインや酒を入れる機能もあるビュッフェと呼ばれる食器棚でした。ブロカントで見つけました。
奥行きがあり過ぎて使いづらいなあと思い、洗面台にすることを思い付きました。 アンティーク家具なので、水がかかっても大丈夫な大理石に天板を変えたかったのですが、材料ではなく加工する職人さんが人手不足で全然みつからなくて。
結局、薄いシートのようなものを貼ってもらいました。 洗面台が意外に高い割に特にコレ!と思うものがなかったので、加工費にお金がかかっても自分で好きなものを作る方がいいと思ったのです。
水栓金具はアンティーク風のものを探しています。IKEAも見てみようかな。
高石:素晴らしい。まずこれを自分で作ろうと考えるところが素敵です。ヨーロッパの方はDIYみんな大好きですよね。壁紙やペイントも気軽に変えます。日本は10年、20年、同じ壁紙を使うことも多々あるので(しかも白!)インテリアをもっと自由に楽しんでほしいですね。
まずは自分でやってみよう、ダメなら次の策を考えよう!と、インテリアを前向きに楽しんでいらっしゃる姿勢に好感が持てる素敵なドメストル邸。環境のために無駄なものはなるべく出さない、使えるものは再利用するという精神も見習いたいものです。
次回は屋根裏部屋や子ども部屋、素敵なお庭へ案内していただいた様子をお届けします。愛猫マエストロくんも登場。お楽しみに。
イエマガで人気のキーワード 間取り:「間取り」のもくじ >> 太陽光発電:太陽光発電のある家 >> |
キッチン:わが家のキッチンプラン >> |
土地探し:土地探しの10のコツ >> 地盤改良:調査と口コミ >> 業者選び:業者との出会い >> 構造・建材:耐震ワンポイント講座 >> |
マンガ:おうち大好き >> お役立ち:家づくりノート >> |
|||||