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まっしん はやぶさ さん
関西から関東に転職を機にお引っ越し。関西で暮らしていた分譲の戸建ては賃貸に出すものの、住宅ローンの支払いは赤字に…。さらに関東での家賃も加わって…。
それならば!と、二軒目の家を建てることに。住宅ローンをできるだけ抑え、かつ、土地も建物も満足のいく家づくりに挑戦されました。コストを抑えるコツ、納得のいくまで調べられた知識をこの連載にまとめていきます。
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イラスト:天野勢津子さん
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今度こそ、満足のいく1階と2階の間取りができあがりました。
ところが、間取り作成ソフト(※)の「収納スペース診断」でチェックすると、延床面積の9%未満で注意が必要と指摘されてしましいます。確かに…。居住スペースの広さを優先し、収納スペースは最低限しか取っていません。
実は、このように極端に収納が少ないことには、理由がありました。当初から希望していた固定階段付きの小屋裏収納(第5回)の採用を予定していたからです!
当然、固定階段を取り付けたり、通常の部屋と同じようにクロスで仕上げたりする分、コスト上がるので悩みましたが、貴重な居室を広く使うため、採用を決断しました。このお陰で、約30坪の延床面積でも、比較的広いリビングや和室が取れたのです。
階段を2階の中央に配置したことは、効率よく小屋裏収納を取るという狙いがありました。小屋裏収納は、その名のとおり屋根裏のスペースを活用するのですが、屋根の中央部分が最も空間が広くなります。
そこで、1階から2階の階段をあらかじめ、家の中央に配置しておけば、そのまま真上に階段をかけることができます。2階から小屋裏収納に上がるための階段スペースを別途消費してしまう無駄がないように、最初から「階段の配置は家の中央」でこだわっていました。
思い返すと、タンスストリート(第11回)が生まれたのは、階段を中央にすることにこだわった副次的効果だったかもしれません。
しかし、ここで思わぬ事態で、小屋裏収納計画がピンチとなります。それは、道路斜線と屋根をかける方向に関係していました。
評判の工務店から、東西に下ろす屋根(第4回)を提案されていましたが、この屋根の向きには建築法の「斜線制限」に関わる理由があったようです。
もし、屋根が「道路斜線」の制限を超えるときに、東西向きの屋根なら、道路側の屋根を下げる「母屋(もや)下げ」ことで、比較的簡単に対応ができるからだと…。
ところが、「この屋根の方向では、小屋裏までの階段を上ることが難しいので、階段の位置を変更する必要」だと太っ腹社長は、言うのです!
その理由は、階段側が屋根の勾配で天井が低くなってしまうことにありました。確かに階段を登ると天井につっかえることになるのは理解できます…。
とはいえ、また別の場所に階段を移動することになると、せっかく完成した間取りがまた崩れてしまいます。それだけは避けなければなりません!
たとえば、階段側(西側)の屋根の高さを全体的に高くしてしまえば、階段の位置を変更しなくても、なんとかなるのではと考えたのですが…。
小屋裏収納の階段に悩む私の様子を見かねたのか、またしても太っ腹社長から手を差し伸べる言葉が…
「天空率を使えば、屋根方向を変えて小屋裏収納をお望みの階段にでますよ」
なんですと?天空率?聞きなれない言葉をすぐには理解できなかったのですが、暗闇に灯す一筋の光のようでした。
後で、調べて理解したことですが…。斜線制限は、通風や採風を確保するために、その名の通り一定の勾配で示された斜線の内側に収まるように建物を制限することを建築基準法で定められています。
一方、天空率は、空が見える割合で採光や通風を確保し、斜線に制限されないことで建物の設計と空間利用の自由度を向上させる緩和規定です。
太っ腹社長によると、この土地と間取りを見て、斜線制限は問題になるだろうと最初から予想していたそうです。天空率を使えば、斜線を気にせず南側に勾配した大きな屋根が取れるので、将来太陽光発電を取り付けるのにも有利とのこと。
この時点では、太陽光のことはまったく考えにありませんでしたが、とにかく小屋裏収納と間取りを予定通りにできるのであれば、選択の余地はありません。
そういえば、商談中に他の工務店でも屋根形状は、後から相談が必要と言われた記憶がありますが、当時は他のことが気になって関心を持っていませんでした。工務店やハウスメーカーとの契約前に、斜線規制の影響を受けずに希望どおりに建てられるかどうか、よく聞いておいたほうがよいかもしれませんね。
ただし、全てを丸く解決してくれるように見えた天空率の利用にも紆余曲折がありました。斜線の中に建物を納めれば良いシンプルな考え方の斜線制限に比較して、天空率はかなり複雑な計算が必要とのこと。このため間取りやプランの検討時点では、はっきりと大丈夫と言えず、計算してみるまで、手放しで安心はできないようです。
また、意外にも天空率の影響を受けることがありました。それは、建物の配置です。天空率を使うと北側に1.7メートルを空けて建てなければならないというのです。少しでも南側の庭スペースを広く取りたかったため、これには相当悩みました。
やはり、建物を北側いっぱい寄せられる東西の屋根で、斜線制限と小屋裏の階段問題を乗り越えようとがんっばったのですが、なかなかうまくいきません。
しかし、太っ腹社長の方で天空率の緩和条件を正確に計算したところ、北側の空きは1mまで寄せられるという結果が出たとの連絡が!
これで、ようやく希望通りの屋根で建てられることとなり決着がつきました。約8畳もの小屋裏収納は、1階2階の収納不足の不安を十分補ってくれそうです。
収納の問題が解決したところで、次回は「照明プラン」についてです。快適、かつできるだけ予算を抑えて…いろいろと工夫したところをまとめたいと思います。
〜編集後記〜
「天空率」という言葉、知らないかたも多いかも? より一般的な、斜線制限を超えないように屋根の勾配を変える、ということで対応できればよかったのですが…。まっしんさんのお家の間取りは、小屋裏収納あってこそ。大きな集中収納ができないとなると大変なことになってしまいます。どうしてもほしい、でもこのままではつくられない。「天空率」で解決できて本当によかったです。
それにしても創刊以来、天空率という言葉が、イエマガ内に載ったのはたったの2回。随分前に口コミの中で1回登場しました。次はいつ登場するでしょうか…?
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