高石陽子さん
これまでインテリアデザイナーとしてモデルルームや新築住宅、マンションリフォームなどのインテリアデザインに携わる。
さらに現在は個人邸の整理収納計画から音や香り、食器の選定なども含む店舗デザイン、セミナー講師など幅広い分野で活躍。インテリアの基礎を教えるインテリアサロンCASAも主宰。オランダ在住。
Yoko Takaishi Design 代表
インテリアデザイナー
/整理収納アドバイザー
/The Interior Design School Diploma
取得 /BIID 英国インテリアデザイン協会 正会員
オランダと言えば、運河が張り巡らされた水の国。今回はオランダならではの水に浮かぶ家、フローティングハウスに伺いました。
「世界は神が作ったが、オランダはオランダ人が作った」という言葉をご存知でしょうか。 オランダは海岸沿いに広がる湿地や干潟を自ら埋め立てて小さい土地を広げてきたという歴史があります。
初めて来蘭した日、飛行機から大陸を見て驚きました。ほとんど水浸しと言っていいほど大地に運河が張り巡らされていました。
オランダの国名は、オランダ語でNederland(ネーデルラント)、英語でthe Netherlands(ザ・ネザーランズ)、フランス語でPays Bas(ペイバ)と言います。これらは全て「低地の国」という意味です。他国から低い国なんて言われるのはあまり気持ちのいいものではないのでは?と思いますが、実際に国土の1/4が海抜0メートル地帯。本当に低い国なのです。
干拓は11世紀頃から始まり、13世紀にはアムステル川の河口にダムができて街となりました。16世紀には、当時世界の中心となる海運貿易の一大都市に発展。アムステルダムの地名の由来は「アムステル川のダム」そのままです。
現在、アムステルダム中央駅を中心に運河が張り巡らされていますが、その長さは100km以上、橋は1500あります。2010年にこの運河地区が世界遺産として登録されました。
第二次世界大戦後の住宅不足を解消するため、ボートが居住地として認められました。現在、アムステルダムには約2500のハウスボートがありますが、これ以上増えないよう「ligplaats」という居住許可証の発行を制限しています。
ですので、誰かが権利を手放さない限りボートには住めません。水辺生活は今や大人気となり、この許可証は高級物件同様、非常に高い価値あるものとなっています。ボートと言えども特定の住所があり、もちろん郵便物や宅配便も届きます。
1960〜70年代頃から、船ではなくエンジン搭載のない箱型の住宅が作られるようになりました。フローティングハウスです。ハウスボートと違い、二層、三層構造も可能。しかも、基本的にメンテナンスフリーを前提に作られています。
今回は、フローティングハウスに実際に住んでいるクリスさんのお宅にお邪魔させていただきました。
アムステルダム中央駅からトラムで15分。アイブルクという地域にクリスさんの家はあります。10年前に一大プロジェクトとしてこの地域が開発されました。このフローティングハウスは水上で建築したのではなく、フリースラントで製造された家を引っ張って来てここに設置されたそうです。
アイブルクのフローティングハウスは何度も雑誌やメディアに取り上げられています。休日、下着一枚でブランチを食べていると、見学者の集団がバスから降りてきてお構いなしに写真を撮りまくるのだとか。
でも、全く気にならないそうです。少なくとも週に一度は見学者がくるので慣れたそうです。私も便乗して遠慮なく撮らせていただきました。
現在18歳の息子さんタインくんと一緒に暮らしていらっしゃるクリスさんのお宅は賃貸物件です。 賃料は大きさによって1200ユーロ(約15万円)〜1500ユーロ(約18.5万円)くらい。
近所の売り物件は、最近45万ユーロ(約5500万円)で売れたそうです。憧れの水辺の家は、意外にも手が届きそうな価格です。
完全に水に浮いている為、家が流れ出ていかないよう両サイドはポールでしっかり固定されています。電気の供給や上下水道も完備。嵐の日は流石に揺れを感じますが、日常生活で揺れは気にならないそうです。実際、私もたまに揺れてるかな?と感じる程度で普通の家とほぼ変わりありませんでした。
ただ、床は少し斜めになっている感覚がありお聞きしたところ、屋根に水が溜まらないよう片側に流れる勾配をつけているからとのことでした。そして、最大の原因はお隣りに住むナイスガイがメタボだから傾いてきたんだと笑うクリスさん。水辺に住むなら細かいことは気にしないのが良さそうです。
何階建てか伺うと3層という答え。説明が難しいので実際に家の中を案内するとのこと。ダイニングキッチンは中間層で、最下層に寝室とバスルームがありました。
何気なく窓の外を見ると、なんとお風呂より水面が上にあるではありませんか!地下(というか水面下)の部屋は少しひんやりしていて涼しそうです。
家の横には自家用車のごとく、ボートが停泊しています。住民は係留料が無料。船好きにぴったりの環境です。ただし、船で出るときはいちいち通路の橋を跳ね橋のように自分で上げて戻す必要があります。
意外に面倒ですが、一家に一隻とはなんとも豊かな環境です。
近年、画期的なフローティングハウスがオランダのデザインスタジオStudio OBA から発表されました。その名も「Prenuptial Housing」離婚の際、財産分与が非常に難しい問題であることをヒントに、均等に二分割できるフローティングハウスが開発されました。
同じサイズのユニットがブロックのようにピタリと土台の上で合体して一つの家として完成。つまり、二人の心が離れたら家も離せる、いや離れる前提のフローティングハウスです。
さすがはオランダ人、超合理的。でも、その発想の前に離婚しない方法も考えた方がいいのでは?と思いますが、どんな局面に置いても人生を楽しく無駄なく過ごそうとする姿勢、発想力には毎回脱帽です。オランダ人のそういうところ、わたしは結構気に入っています。
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