スウェーデンでは、キッチンと家の間取りは切り離して考えることはできません。スウェーデンのキッチンは、同時に家族のダイニングスペースでもあります。

キッチンという『部屋』の中に、キッチンユニットと食器棚などの収納キャビネット、家族用のダイニングテーブルと椅子、これらが一つのスペースにおさまって、はじめてキッチンが完成する、とスウェーデンの人は考えるのです。

もし間取りにゆとりがあれば、さらに別にダイニングルームも計画することもありますが、あくまでそれは非日常的な場所として。来客が訪れたときや、クリスマスなどの家族行事など、きちんとテーブルコーディネートをしてあらたまった食卓を囲む時のための特別な空間なのです。

ですから、スウェーデンの人が思い浮かべる日々の食卓といえば、キッチンの中での風景です。小さな子供たちをそこで遊ばせながら食事を作り、一日の出来事を家族で話しながら食事を楽しみ、夫婦で片づけをする後ろ姿を子供たちはキッチンの中で見て育つのです。そこは家族が一番時間を共に過ごす場所、まさにキッチンはスウェーデンの家の中心であり、ハートなのです。

食べるだけではなく、くつろぐということも視野に入れているキッチンでは、インテリア性の高さも重視されます。キッチンの印象を決める扉のデザインにも様々なバリエーションが用意されています。

ひと昔前は無垢の木の扉のフレームに彫りを施して塗装をしたロマンチックでカントリーなスタイルも流行りましたが、最近のトレンドはシンプルでプレーンなモダンな印象のもの。色も白や落ち着きのあるアースカラーが中心です。

また、ステンレス仕様などのプロの厨房さながらのクールなスタイルも人気です。男性も食事を作ることがごく当たり前になりつつあるスウェーデンでは、女性からの目線だけではなく、男性からも指示されるデザインが求められているようです。