初めてスウェーデンの街を歩いたとき「なんて窓辺が美しい国だろう」と思いました。スウェーデンの家の綺麗に飾られた窓辺は、そこに住む人のものであり、また同時に外を行く人を楽しませるためのささやかな演出です。

北欧の国、スウェーデンは冬が長い国です。そのため、寒さへの備えとして家の外壁そのものも厚く、また壁の間のスペースにはたくさんの断熱材が入れられています。省エネルギーで冬暖かく暮らすための工夫がなされているのです。
そして、この外壁の厚みを利用してできる出窓のようなスペースに、人々はさまざまな飾りものを置いて楽しみます。ヴィンテージのランプ、写真、ガラスのオブジェ、キャンドルスタンド、花瓶など、季節やその時々の気分によって住人は窓辺を気軽に模様替えするのです。

スウェーデンの窓は歴史と共に変化してきたようです。現在のスウェーデン窓の標準規格は『３枚ガラス窓木製サッシ』（写真左）です。丈夫で厚みのある３枚のガラスの間に、さらに熱伝導率の低いアルゴンガスが入っているタイプが流通していて、外がどんなに寒くなっても、ガラス面がほとんど結露することがないという、寒い国ならではの優れた窓です。しかも180度窓が回転するようなしくみになっていて、室内側から窓の外側もラクラクお掃除できるようになっているのも魅力的です（写真下）。

しかし、100年程前のスウェーデンの住宅の窓は、現在ほど性能の高いものではありませんでした。職人さんが手作りする２枚のガラス（１枚だけのことも・・・）が木製サッシに取り付けられているといったものが普通でした。

スウェーデンの田舎で夏のコテージとして使われているような古い家には、そのような仕様のものが現存しています。でもそうした窓にも、ちょっとしたアイデアがありました。ガラスの間に、湿気を取るために乾燥した苔やドライフラワーなどをバランスよく詰めて、空気の層をつくることで、なるべく窓が直接的に冷えず、結露しにくいような工夫をしていたのです（写真下）。

しかも、窓辺はまるで素敵なフラワーアレンジメントの飾りを敷き詰めたかのよう。防寒対策をしつつも、窓辺も美しく飾ることができます。そして夏になれば、２枚のうち外側のガラスを取り外せるようにもなっていて、実に合理的。美しさと実用性を兼ね備えた、なんともスウェーデン的な発想です。