家事に育児に仕事に……毎日忙しいお母さんのホンネとは? 「お母さんのひとりごと」は、一般公募で選ばれたお母さんたちによるリレーエッセイです。
昔から子供は大好きだった。
好きな人との子供が欲しい、そう思っていた。
「大丈夫。赤ちゃんはできるわよ。」
手術をした病院の看護師さんはそう言った。
当時子供だった私は「普通の女性に比べたら子供はできにくい身体かもしれない」と、なんとなく悲しい気持ちになった。
子供がいない人生、それもまたいいじゃない。
そう思えるようになったのはいつからだろうか。
それから約10年後。
ある一人の男性と出会い、結婚。
私の身体のことは既に話してある。身体には手術した傷が残っているから、話さないわけにいかないのだが。
「子供がいなくたっていいじゃない」
私たちはとても楽しい二人暮らしを始めた。
しかし。
長男の嫁ということで、帰省するたびに「早く孫を」と言われる。
夫の実家に行くのが嫌になっていった。
数年後に妊娠。
喜びより驚き・戸惑いが大きく、妊娠したことを受け入れられない自分。
女性らしく丸みを帯びていく身体。お腹が大きくなるにつれ、嫌悪感は増していく。
自分が女であることを、こんなにも思い知らされる出来事は今までなかった。
『私はなぜ女なのか』
退院した時から、女らしさとは無縁の生活をしてきた。
女性であれば「当たり前」に受け入れられる「守りの姿勢」が受け入れられない。
妊娠したことを嬉しく思えない自分。
つわりもひどく、何もかも嫌になってくる。
でも、赤ちゃんが産まれたらきっと嬉しいに違いない。
そして予定日。
今まで経験したことのない痛み、陣痛がやってきた。
痛みを「逃す」という行為は予想以上に難しく、こんな痛みが続くなら殺してくれ、と思った。
数時間後。
わが子が無事産まれた。
テレビでよく見る、出産後自分のお腹にわが子を乗せる感動のご対面シーン。
「よく頑張ったね」という言葉をかけてあげることすらできなかった。
出産後、病室を訪れた夫の家族からの心無い言葉。
我慢は限界に達し、退院後はわが家に来ないでほしい、と泣きながら夫に電話をした。
初孫に会わせない私は鬼かもしれないが、このままだと私がノイローゼになりそうだったのだ。
出産後は自分でも驚くほど精神的に弱っていった。
夫は仕事が忙しく、休日も家にいないことが多い。
一番そばにいて欲しい人がいない。
一緒に住む意味はあるのだろうか。
この子を連れて、どこか遠くへ行けたら。
あんなに好きだった夫が嫌いになっていった。
男に生まれたかった。
何度そう思ったことだろう。
昨年を振り返ると
「私の人生の中で一番つまらない一年だった」
これが正直な気持ちだ。
でも、身体が妊娠前に戻り、精神的にも余裕が出てきたせいか、昔のような前向きな気持ちがよみがえってきた。
「相手に変化を求めるのではなく、自分が変わろう」
わが子のためにも、夫や夫の家族と仲良くしよう。
『産まれてきてくれてありがとう』
出産時に言えなかった言葉を心の中で呟きながら、「かわいい!」と毎日わが子を抱きしめている私は、きっと親バカな顔をしていることだろう。
◆前回の執筆者からの質問
「親離れ・子離れはどうすればうまく乗り切れるの?」への回答◆
子供自身がいろんなことに対し『自分の力で乗り越えたい』『親に迷惑をかけたくない』という気持ちが芽生えれば自然に親離れしていくと思います。『お前なら大丈夫』というメッセージが子供に伝わっていれば、安心して子供も親元から巣立っていけるはず。わが子の苦難にあえて手を貸さず、信頼し見守る姿勢が子離れには必要だと思います。
「独身時代に思い描いていたお母さん像とのギャップは?」
さかさかさん
30歳、主婦。埼玉県在住。夫(30歳)と長男(1歳)の3人家族。
「子供が大きくなったら一緒にスポーツをするのが夢。一緒にキャッチボールやサッカーをしたい。親子マラソン大会にも出て、手をつないで一緒にゴールしたいなあ。頑張って身体を鍛えねば」