高石陽子さん
これまでインテリアデザイナーとしてモデルルームや新築住宅、マンションリフォームなどのインテリアデザインに携わる。
さらに現在は個人邸の整理収納計画から音や香り、食器の選定なども含む店舗デザイン、セミナー講師など幅広い分野で活躍。インテリアの基礎を教えるインテリアサロンCASAも主宰。オランダ在住。
Yoko Takaishi Design 代表
インテリアデザイナー
/整理収納アドバイザー
/The Interior Design School Diploma
取得 /BIID 英国インテリアデザイン協会 正会員
紅葉が始まり毎日落ち葉を踏みしめて歩いています。こちらはすっかり秋です。日も確実に短くなってきています。朝は深い霧が立ち込め、これから始まる冬を予感させます。
ヨーロッパでは寒い冬が始まる前のこの季節に、たくさんのイベントが各地で催されます。ドイツ・ミュンヘンのオクトーバーフェスト、フランスのロンシャン競馬凱旋門賞、各地でジャズフェスティバルや映画祭、オランダではダッチ デザイン ウィーク(http://www.ddw.nl)が10月21日から29日に開催されます。
イギリスでは9月16日から24日にロンドンデザインフェスティバル(http://www.londondesignfestival.com )が開催されました。今年で15回目になるデザインの祭典です。期間中はロンドン各地で様々なデザインに関するイベントが350以上も行われ、世界中のバイヤーたちがロンドンを訪れました。
アムステルダムの前にロンドンに住んでおりましたので、デザインフェスティバルに行くのは今年で3回目になります。
インテリアデザインスクールの恩師や現在所属する英国インテリアデザイン協会のデザイナーたちにお会いできる貴重な機会でもあり、期待に胸を膨らませ今年もロンドンに行って参りました。
ロンドンデザインフェスティバルの各会場はそれぞれに特色があり、大別すると二つの潮流に分けられます。
一つはFocus、Decorexなどハイエンド向け高級インテリア商材を扱う展示会。チェルシーやリッチモンドなど落ち着いた雰囲気のあるウェスト側のエリアで行われます。
もう一つはDesign Junction、Tent London、100%Design など、コンテンポラリーデザインや若手アーティストによるプロダクトが多く集まる展示会。イーストと呼ばれる若者が多く集まるエリアで開催されます。
ロンドンはエリアごとにはっきりと街の特徴が違いますので(東京も同様ですが)、西と東などその地域性がインテリアの展示会自体の特徴に一致するところがわかりやすいです。
ビクトリア&アルバート博物館は是非訪れていただきたいミュージアムのひとつです。常設展だけでもその膨大なコレクションとレベルの高さに驚きを隠せません。
デザインフェスティバル期間中はオーストラリアのアーティスト、フリン・タルボット氏による光のインスタレーション「リフレクション・ルーム」が見られました。
これほど見応えのある美術館でも、イギリスは国営ミュージアムが全て無料。いつ行ってもこのシステムに感動します。どんな人にも芸術に触れる機会は平等に与えられています。
無料なら気軽にサッと見て、また別の日に改めて行くこともできますし、アートが身近な存在です。国営ミュージアムの無料化を日本もせめて子どもと学生だけでも導入できないかといつも思います。
インテリアにもトレンドがあります。展示会に行くのは、トレンドをいち早く把握するためでもあります。ただ、洋服と違ってソファやカーテンをトレンドに合わせてすぐに買い換えるのは難しいでしょう。
新築時に一式揃えたカーテンを何十年も使いたいと考える方もいらっしゃるかもしれません。長く使うからベーシックなアイテム、つまり「ザ・無難」でまとめることに陥りがちなのも事実です。でも、そんなベーシックなアイテムも月日の経過とともに少しずつ「何か違うかも…」と時代遅れ感が出てくるものです。
そんなとき、トレンドが威力を発揮します。クッションカバーやベッドカバー、アート、観葉植物など、気軽に変えられるものにトレンドを少し加えると、ガラリと部屋全体の雰囲気が変わります。一式とは言いません。花瓶と花だけでもいいのです。ほんの少しだけトレンドのエッセンスをインテリアに加えてみてはいかがでしょうか。
特に、布製品は比較的簡単に取り入れやすいアイテムです。トレンドを意識して街のディスプレイを見るだけでも楽しいものです。大切なのは意識すること。インテリアは楽しいのです。
イギリス人のインテリアに掛ける情熱は半端なく、ホームセンターには有名メーカーの壁紙からペンキ、取っ手、洗面器まで各種DIY用品が揃っており、その種類の多さに最初は度肝を抜かれました。
イギリスの百貨店 John Lewis(ジョン・ルイス https://m.johnlewis.com/)に行けば、カーテンや家具、食器、家電まで住まいに関する全てのアイテムが揃います。イギリス時代の大家さんも、「インテリア用品で足りないものがあれば、とにかくジョン・ルイスへ行くこと!」と口癖のように言っていました(笑)。こんなにインテリアに特化した百貨店はイギリスならではだと思います。
一方、オランダ人も負けず劣らずインテリアが大好き。キッチンを美しく保ちたいから料理はしたくない、なんて話はイギリス人と同じかもしれません(苦笑)。とにかく美しい室礼に注力しています。
しかし、明らかに違うのは家具のスケール感。オランダの家具は明らかに大きく背も高いです。平均身長世界一のオランダ人の体格に合わせたら当然かもしれませんが、オフィスなどの机と机の間隔、店内の什器の間隔も明らかにイギリスより広いです。
また、窓装飾の考え方が全く違います。イギリスの窓の形は縦に細長く、窓自体が細切れに分割されています。そこにドレーパリーと呼ばれる厚地カーテンを付けるので、窓が非常に小さく縦長になるケースが多いです。その結果、バランス(カーテンレールを隠す上飾り)は凝ったものが多く、非常に装飾的。窓辺が小さいからか、窓の外のバルコニーを花で美しく飾ります。
オランダは宗教的な歴史背景があり(No.3 『オランダ建物探訪春の街歩き』参照)カーテンは一日中ほとんど閉めません。開けっ放しな上、窓は横長にかなり大きく、日本で言うとタワーマンションの窓のように光がいっぱい差し込む形状が多いです。 そこに、デコラティブなカーテン装飾はほとんど存在しません。眩しいときは、カーテンではなく窓の外に設置したオーニング(日よけ)を下ろします。
窓が大きく家の中が丸見えなので、窓辺を競い合うかのように美しくデコレーションします。壺やアートオブジェ、季節のフラワーアレンジメントがドンと窓の内側に置かれています。オランダに来た友人が、ここじゃカーテン屋さんが売れなくて大変でしょうね、と言っていたのが印象的でした。
今回のロンドン訪問で最も大きな収穫のひとつは、世界的なインテリアデザイナーStephen Ryan(スティーブン・ライアン)氏の自邸に伺う機会に恵まれたことです。
ライアン氏は東京のホテルオークラ本館の客室やホテルオークラ・アムステルダムのデザインも手掛けた方です。英国の一流インテリア誌が毎年企画する“100人のリーダーデザイナー”で彼の名前が挙がらないことはないというスターデザイナーです。
その空間に一歩足を踏み入れた瞬間、心奪われたのはアートの力。美術館レベルのアートがどの部屋にも効果的に配されていました。
本物が醸し出す圧倒的な存在感、上質で上品な佇まい、ほんのりエロティックな要素、全てが調和していました。そしてデザインの全てに意味がありました。どれほど考え抜かれたものなのでしょう。ここでも結論は同じです。
インテリアは楽しい!! 是非、秋のインテリアを一緒に楽しんでみませんか。
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