高石陽子さん
これまでインテリアデザイナーとしてモデルルームや新築住宅、マンションリフォームなどのインテリアデザインに携わる。
さらに現在は個人邸の整理収納計画から音や香り、食器の選定なども含む店舗デザイン、セミナー講師など幅広い分野で活躍。インテリアの基礎を教えるインテリアサロンCASAも主宰。オランダ在住。
Yoko Takaishi Design 代表
インテリアデザイナー
/整理収納アドバイザー
/The Interior Design School Diploma
取得 /BIID 英国インテリアデザイン協会 正会員
https://www.houzz.jp/pro/yoko-t326
次にアムステルダム中央駅に向かって中心地を歩いてみましょう(前編はこちら)。
革新的なデザイン建築とは一転、カナルハウスが歴史ある落ち着いた風情を醸し出しています。 運河内の旧市街地は17〜18世紀に建てられたものが多く、以前に住んでいたロンドンのヴィクトリア様式の建物にも似ていてホッとします。
しかしどうも何かが違います。 建物が明らかに前に倒れかかっているのです。
横に傾いているものもあります。つまり、建物全体が歪みでガタガタです。
干拓地ゆえ地盤沈下による歪みは避けられない問題です。ただ、前に傾いているのには別の理由がありました。
カナルハウスは建物の間口の広さによって課税されており、鰻の寝床のように入口は狭く奥行きのある構造になっています。1階から上階へ荷物を搬入するのはとても困難。
そこで、建物の上部についた滑車で荷物を吊り上げ窓から搬入します。荷物が壁にぶつかって傷付かないよう、最初から壁は前に傾けて作られているのです。
実際に、滑車で建築資材を吊り上げ搬出入をしているリフォーム現場を何度か見たことがあり、現在も使われています。
オランダ人はカーテンを使わないと言われています。
外から見ると(わざと見てるのではなく見えてしまうのです)中でのんびりお茶をしたりお花に水をあげる様子が丸見え。
もっと言うと、リビングを通り越して中庭で筋トレしているところまで見えることもあります。夜になってもカーテンは常に開けっ放し。
わが家もLDKはドレーパリーと呼ばれる厚地のカーテンはありません。レースだけです。 大家さんに「レースだけじゃ夜丸見えだし、冬は寒いと思う」と話したところ「全然大丈夫だよ!ヒーターで寒くないし」 と軽く受け流されました。
よく見ると、カーテンレールがそもそも一本しかありませんでした(笑)。幸い最上階で道を歩く人からは見えないのですが、お向かいさんからは見えると思います。
何せオランダの窓はとてつもなく大きいのです! オープンで裏表のないオランダ人らしいのですが、開けっぴろげにもちゃんとした理由がありました。オランダはプロテスタントが多く、神に誓ってやましいことや隠し事はなく、質素で慎ましやかな生活をしている証明としてカーテンを全開にするという歴史的背景があります。
しかし、オランダ人の友人に聞くと、「今はそれはあまり関係ない、みんな自分の部屋がおしゃれなのを自慢するためだよ」と言われました。正反対の理由だと思うのですが(笑)。
どちらが本当かはわかりませんが、実際どの家もとても美しく、室内も綺麗に整頓されています。
合理的なオランダ人は、節約して割り切るものと長く使う大切なものは別と考えています。例えば、長年使う自転車やチーズナイフにはこだわりを持って良いものを選び、お金もかけます。
建築でも、歴史的価値のある旧い建物はリノベーションして新しく活用されているものを多く見かけます。元教会の本屋、元トラムの操車場の映画館、元刑務所のホテルまで!
新しく生まれ変わった建物でも歴史の名残をほのかに感じることができます。
それとは逆に、一見自由で斬新に見える新しいデザイン建築にも、どこかに伝統的なモチーフが隠れていることが多いです。
ロッテルダムのデザイン建築には、カナルハウスのように前に倒れかかるものやオランダ絵画によく出てくる昆虫や花のモチーフが描かれたものもありました。
伝統と革新、双方の融合がダッチデザインを魅力的なものにしているのではないでしょうか。
デザインの過程を想像しながら見る建物探訪は興味深いものです。オランダ建物探訪はまだまだ続きそうです。
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