間取りの裏話。
ちばてつや先生とお会いしたのは2013年8月6日のこと。ハリスの旋風やあしたのジョー、そしてあした天気になぁれ。それぞれの家についてお話を伺った。
◇『ハリスの旋風』は長屋ですか?
……「ハリスの旋風は子供のころのイメージでしかないので何も考えていない間取りだよ」
◇『あしたのジョー』については前述の河川法の話をしたところ…。
……「橋の下の建物って昔はたくさんあったんだよ。そんなイメージから。今は無理だろうね」
◇『あした天気になぁれ』についてはしっかりと間取りが書き込まれているのですがモデルがあるのではないですか?
……「あぁ、あれはモデルというか短い間だったけど実際に住んでいた家。戦後、満州から引き揚げてきたときに一時身を寄せた父親の生家の八百屋さん。千葉の九十九里浜だったんだけど、命からがらついたときに親戚が集まってきてくれて米を炊いてもらって、魚の煮つけ・イモを食べて…。スイカはみずみずしくておいしかったな。絶対に忘れない瞬間なんです」。
これでもか!というほどの作者の完璧な取材と知識に脱帽!
このマンガはアニメになって俄然生きてきました。ストーリはもとより、その背景となる音楽・JAZZのチョイスがすばらしい。
甘酸っぱい想いと音、そして作品の作りこみ方いずれをとっても近年稀に見る名作です。
原作は小玉ユキ先生。女性漫画家では類を見ない緻密な設定。特に第4話「But not for me」の台詞。
時代背景も鑑みて、よくここまで切り込んだ表現をしたものだと感心すると同時にその時にチョイスした曲が皮肉めいたものであることまで突っ込んでいる奥深さ。
◇米軍軍人が集まるバーでムカエレコード店主率いるカルテットが演奏をしていると、初老の白人の酔っ払いが、I cant stand that coon music jazz! It sounds like jumble of noise! At least play something white!と叫ぶ。
「黒人のジャズなんか我慢できない! 音がごちゃ混ぜだ! 雑音だ!白人のジャズをやれよ!」と叫んだ。
さもありなん。この時代設定は1966年。しかも米軍基地のある佐世保。1963年ワシントン大行進においてリンカーン記念堂の前で「I have a dream!」と演説し、1964年にノーベル賞を受賞したアフリカ系アメリカ人公民権運動の指導者キング牧師が人種差別の終わりを告げたといっても、強硬派であったが故のマルコムX暗殺でも分かるように白人社会と黒人社会はまだまだ遺恨を残していた。
折りしも1965年からはベトナム戦争に参戦。日本にまで来てわざわざ黒人音楽なんか聴きたくない!といった表現は、当時の世相を反映したかなりリアリティーな脚本になっている。実際その時代の基地のある街では黒人・白人ともその行動するエリアを棲み分けしていた。
ただ、この場でのほかの若い軍人はそんなに気にした風ではない。初老のその酔っ払いだけが怒鳴ったわけだ。
そこで、そのリクエストに応えて、曲をチョイスし直すのだけれども、それが「But not for me」で、ウエストコーストスタイルに変更。ウエストコーストジャズとは、簡単に説明すると正統的な音楽教育を受けた白人が譜面どおりに演奏するもの。
この曲を選んだことが何故?皮肉なのかというと、このウエストコーストジャズが流行したのは本当に短い間。いずれ黒人ジャズが台頭してきたわけで「結局あんたの望んだ曲はあんたの時代だけはやったもんなのさ、チェット・ベイカー(白人)のものは既にマイル・スデイビス(黒人)が取り返しているんだぜ」と。いうことを示唆するためではなかったのだろうか。
これはまじめにジャズの深いところまで知らないと書けないストーリー。感心することしきり。
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その他の店舗・事務所
第1回『ふくふくふにゃ〜ん』/第7回『猫の事務所』/第16回『750ライダー』/
第22回『猫ラーメン』/第23回『深夜食堂』/第26回『ハイスクール!奇面組』/
第42回『たまゆら』/第54回『しろくまカフェ』/第55回『夏雪ランデブー』/
第61回『グレーテルのかまど』/第64回『寺内貫太郎一家』/
第68回『究極超人あ〜る』/第82回『ギブリーズepisode2』/
第84回『ドクターX〜外科医・大門美知子〜』
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ここは間取りの解説ではなく、ちょっと気になったストーリの背景を。
スペースコロニーに移住が始まった理由は?
人口が90億人突破・環境破壊が進みすぎた結果ということなのだけれども、アムロの地球の家辺りはリンゴ畑がある農村地帯で人口の過密化はあまり感じられません。
環境破壊といえども砂漠地帯には広大な土地があり、サイド7のようなスペースコロニーを作る技術があればどうにかできたのではないかと思ってしまいます。
しかも、第1期移民が完了した時点で、移民をストップ。地球連邦の利権に群がる政治家・官僚・富裕層は地球で生活し続けていました。
この移民にかかわった組織は2つあって一つは宇宙引っ越し公社。移民した民間人の財産をコロニーへと運んだNGO団体。もう一つは地球連邦が100%出資したコロニー公社。第3セクターで、コロニー自体を作った会社です。
探偵目線で妄想してみると…。
(1)コロニー移住の技術が確立した。
(2)どうにかこの技術を運用してお金にしたい。
(3)人口増加と環境破壊を理由に推し進めよう!
そして地球連邦との癒着が始まって。
ということではないかしら?
その後、それにかかわる特殊法人がたくさんでき、コロニー自体が利権によって植民地のようになりジオン公国が独立を目的とした自治権を請求して戦争へ。そうならないように、今の地球を守りましょう〜!
ここでは登記法の関係を…
まずは、作品内に記載されているロボット法を見てみます。
(1)ロボットは人間を幸せにするために生まれたものである。
(2)ロボットは人間につくすために生まれてきたものである。
(3)ロボットは人を傷つけたり、殺したりしてはならない。
(4)ロボットは造った人間を「父」と呼ばなくてはならない。
(5)ロボットは何でも作れるが、お金だけは作ってはならない。
(6)男のロボット、女のロボットは互いに入れ替わってはならない。
(7)無断で自分の顔を変えたり、別のロボットになったりしてはいけない。
(8)大人に造られたロボットが子どもになったりしてはいけない。
(9)人間が分解したロボットを別のロボットが組み立ててはいけない。
(10)ロボットは人間の家や家具を壊してはいけない。
(11)その目的にかなうかぎり、すべてのロボットは自由であり、
自由で平等の生活を送る権利を持つ。
(12)ロボット省の許可なくして無断で国を離れ行動をとるものは、
エネルギー無期限差し止めまたは解体の刑に処する。
(13)ロボットは人間を信ずべし。
以上
建物にかかわってくる条文分は(10)と(11)。(10)はもちろんだけれども、(11)によってアトムに与えられた『居宅』がこの家。ロボットだけれども人間と同等に暮らす権利を有するとうこと。
ただ、この建物を登記する際は、「居宅」とはできない。それはトイレがないから。
恐らく建物の種類としては「倉庫」「物置」でしか登記できないのである。
まぁ格納庫と思えばそうか。アトムの家ではなく、アトムをしまう倉庫が正解。でもそういう言い方は味気ないわね。
未来では違った登記の方法があるのかな?
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未来の物件(リンク)
第57回『宇宙兄弟』/第86回『パワーパスガールズ』/
第93回『スタートレック〜宇宙大作戦〜』
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さて、次回はどうやってマンガ・アニメなどから間取りを推理しているのか?探偵オリジナルの奥義を紹介します。
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