初夏のスウェーデンでしか味わえない、私と夫が毎年楽しみにしている美味しいもののひとつは、とれたての新鮮な蜂蜜です。この時期の蜂蜜は、６月のちょうど白夜の始まりの頃から、蜜蜂たちが、野に飛んで花に立ち寄り集めてきた、花のエッセンスを凝縮したような蜜なのです。

蜂蜜が好きなので、蜂蜜は年中いただいていますが、スウェーデンの初夏の頃の蜂蜜の味は、絶品です。黄金色のキラキラした蜂蜜は、クセがなく、軽くて、確かに北欧の森のようなきれいな味がします。

濃い目に抽出した紅茶に、とれたての蜂蜜と温かいミルクをたっぷり入れた朝食の蜂蜜ミルクティ−は、最高です。スウェーデンではプロの養蜂家はもちろん、田舎では、趣味として庭で蜂を飼い、自家製の蜂蜜を作っている人たちもいます。

ある日の蚤の市の帰り道、たまたま道路脇に『NY PLOCKA HONUNG（新鮮とれたて蜂蜜）』の手作りの看板を見つけました。看板に従って進むと、そこは明らかに普通の田舎のおうちです。躊躇していると、庭仕事をしていたこの家のご夫婦が声をかけてくれました。

「看板を見たんですけど、ここで蜂蜜を買えるのですか？」と聞くと、奥様がにっこり笑って、「もちろん！」と、家の中のキッチンに案内してくれて「うちの庭の蜂たちが集めたものよ」と、誇らしげに、パントリーから美しい蜂蜜の瓶詰めを出してきてくれました。それを２瓶いただくと、「僕たちの蜂を見てみたい？」とご主人から楽しげな提案が！

裏の庭に廻ってみると、手作りのカラフルな木の巣箱が、並んでいました。蜂蜜は好きですが、こうして蜂たちが働く様子を見るのは初めて。こうして蜂蜜ができるのか、と感心してしまいました。

コテージに帰ってから、早速スプーンでそのまま一口ぺろりとお味見。うーん、うっとりするような素晴らしいお味です。その瓶が空っぽになるまでの日々は、美しい蜜色を眺めては、幸せな気持ちに満たされました。