スウェーデンの秋の訪れは早く、それは既に８月の終わり頃から始まります。

そのサインは森に入れば分かります。ふかふかの下草を踏みながら下を向いて歩いているとき、いろいろなキノコがひょっこりと顔を出しているのに遭遇したら、確かに秋が始まっている証拠です。

特にスウェーデンの人たちが大好きなキノコは、小さな黄色いラッパのような形をした『カンタレーラ』というキノコ。
甘いような独特の香りと触感が美味しいキノコで、シンプルにバターでソテーして塩胡椒し、トーストした薄いパンに乗せていただくのが定番の食し方です。

カンタレーラは日当たりの良い、しかし、ひらけ過ぎておらず、湿気の適当な、赤松の森のどこか！（＊諸説あります）に生えている、と言われているのですが、実はそう簡単に見つけることはできません。

それは、まるで秋の森の宝探し。ですから、もしカンタレーラの自生場所を発見しても、自分たちだけの秘密にしていて、家族やごく親しい友達にしかそのありかを教えないことも多いのです。

カンタレーラの季節になると、ひと気のない深い森の入り口に車がポツンと停めてあるのを目にします。それは、おそらく間違いなく、キノコ探しにきた人たちの車。そして、この森のどこかにカンタレーラが存在している、ということ！

ちなみに、まだ一度もカンタレーラを発見したことのない私たちは、その車を見るたびに、私たちも…と後に続きたくなりますが、車の存在はあくまで見せかけのカモフラージュ、実はその隣の森にこそカンタレーラがあるのだ、という噂もあるのですから、もはや自力での発見は、森の幸運の女神が前を照らしてくれる以外にないようです。