Jul（ユール）は、スウェーデン語で『クリスマス』という意味です。12月に入ると街はいっせいにクリスマスの飾りで彩られます。
といっても、スウェーデンのクリスマスは、ピカピカ点滅する派手で華やかなイルミネーション、というよりはオレンジ色の温かなキャンドルの灯りが似合うような、穏やかな雰囲気です。

クリスマスのお祝いは、北欧の人たちにとって、長くて暗い冬に一筋の明かりをもたらす大切な行事。
その日を迎えるための準備で、大人たちの楽しくも忙しい日々が始まるのもこの頃です。

スウェーデンの家庭は共働きの夫婦がほとんどなので、毎日少しずつ計画的に準備をしなければ、理想的なクリスマスを過ごすことはできません。

たとえば、ホームメイドの料理や焼き菓子もそのひとつ。クリスマスは日本のお正月のようなもの。家族で集まって語らい、伝統的なクリスマス料理やお菓子をいただきます。

できるだけ我が家に伝わる味を手作りで、と女性たちは奮闘します。日持ちのする焼き菓子などは、12月に入ると少ずつ焼きためて、クリスマス柄の缶などに入れて保存しておきます。

12月の町の広場のマーケットには、パンやチーズなどの食材から、飾り用の雑貨、ツリー用のもみの木までクリスマスに必要なものがいろいろ並び、いよいよ家の飾り付けにも気合いが入ります。

スウェーデンのクリスマスの飾りは、まず窓際からスタートします。キャンドル型の電飾が並んだ照明器具を窓台に置き、大きな星形の照明器具を窓の真ん中にくるように吊り下げます。

家はもちろん、街のオフィスビルの窓にでさえ、このような照明器具が飾られて、クリスマスを迎えるムードが徐々に高まってゆくのです。

室内には、クリスマスのサンタクロース（スウェーデン語では『ユールトムテ』と言います）の置物を飾りますが、面白いことにスウェーデンのサンタクロースは、実は小さなおじさんで、しかも複数存在するとされています。

たくさんのおじさんユールトムテの人形が部屋のあちこちに飾られている様子は、ちょっと不思議な光景ですが、スウェーデンの人たちにとっては、昔ながらの家庭の懐かしいクリスマスの光景でもあるのです。