日本の便器は、フタが自動で開いたり、水中が光ってみたり、音楽が流れたり、年々進化し続けています。一方、スウェーデンの便器は機能も形もいたってシンプル。今までもそうだったように、当面大きく進化する気配すらなさそうです。

スウェーデンの一般的な便器はたいてい背中のタンク部分の上に、大きなスイッチのようなボタンがついています。右に１回押せば『小』、左に押せば『大』用という選択です。機種によっては、小さなドアノブのようなものがついていることもあります。

この場合は上に向かって引き上げると同時に、
ジャーっと水が流れる仕組みです。水が流れる、という以外の機能は一切なし。便座を温めることもありませんし、色は白のみです。

ちなみに、スウェーデンの森の中のサマーハウスやコテージでは、下水設備が整っていないために、トイレがくみ取り式というのも珍しくはありません。しかも、業者が引き取りに来るのではなく、自分で掃除をしなければならないタイプのものです。こちらは年々少しずつ進化していて、『落とし物』が『落とし主』からできるだけ見えないように、便座の下に開閉式の弁を設けて目隠しの工夫がされていたり、臭いがこもらないように換気機能がついたものなどが販売されています。

スウェーデンの間取りでは、洗面所とトイレ、バスタブまたはシャワーブースが同じ空間の中に組み込まれていることが一般的です。ひとつの部屋として考えているので、タオルなどを収納するキャビネット家具を置いたり、まるで部屋のインテリアを考えるように、トイレの中もしつらえます。暗い、汚いというイメージはまるでなく、壁に絵を飾ったりしてリラクゼーションスペースのような雰囲気を演出しています。

床の素材にはタイルを使うことも多いのですが、たいてい床暖房されているので、冬場でもタイルのひんやり感で足元が冷えることもありません。また、パネルヒーターなどで部屋全体も暖めているので、他の部屋との温度差もあまりなくヒートショックなどによる身体への負担が少ないように考えられています。