英国では、築数百年経った古い家が非常に多く、今も大切にされています。
そのため、その家の建てられた年代によってデザインの特徴がはっきりと現れています。これを様式スタイルと呼びますが、「ジョージアンスタイル」「ヴィクトリアンスタイル」などという用語に聞き覚えのある方も多いでしょう。
例えばジョージアンスタイルは、左右対称等の均整の取れた外観に、6枚パネルデザインの玄関ドア、窓は大きな上げ下げ窓がきれいに並んでいるのが特徴です。
そして、その後のヴィクトリアンスタイルは、過去の様々な要素をミックスさせた遊び心ある外観に、ステンドグラス入りの玄関ドア、多用された装飾が特徴です。
また、古い時代は、建材の流通手段も今のように便利ではなかったため、基本的にその地域で採れる材料を使って建築されました。
このことから、地域性も良く現れています。良質の木材が採れる地域では木造の家、コッツウォルズなど、石の採れる地域では石造りの家、いずれも採れない地域では、土をこねて焼いたレンガの家が建てられたのです。
日本でも洋風住宅のスタイルとして人気のある、木の梁材を外壁にあしらったスタイルの家は「ハーフティンバースタイル」と呼ばれる英国の住宅スタイルで、上記の木造の家の一つです。
英国の家の間取りは、LDKのような大きなひとくくりの部屋はあまり無く、比較的小さめの部屋が小分けに配置されています。
まず、玄関を入るとホールがあり、2階建ての家の場合はここに階段もあります。そして多くの場合、ホールの隣には、フォーマルなリビングが配置されています。
昔の日本の応接間のようなお客様を招ける部屋で、暖炉を中心にソファが置かれ、英国らしいインテリアであしらわれています。
ヴィクトリアン以降の家には、「コンサバトリー」と呼ばれるサンルームを持つ家も多く、自慢のガーデンを眺めながらティータイムを楽しめる、英国らしい空間です。
浴室に関しては、洗い場のある日本の浴室とは違い、一室にバスタブ・洗面台・トイレが設置されています。
(これは古い家の歴史に対して、お風呂の誕生は後だったため、もともと寝室だった部屋にバスタブと、洗面台、トイレを設置して作られた「後付けバスルーム」が原点でもあります。
前述の通り、英国の家には年代別の様式スタイルや地域性がありますので、英国スタイルの家を作るためには、これらの特徴を上手に取り入れる必要があります。
特に外観は家のスタイルを大きく印象付けますので重要です。
素材で言うと、例えばコッツウォルズのスタイルの家ならコッツウォルズ地方で採れるハチミツ色のコッツウォルド・ストーンを外壁に使用し、湖水地方のスタイルの家ならブルーグレー色のカンブリア・ストーンを使用したいものです。
また、英国の家の玄関ドアは、様式スタイルによってデザインに特徴がありますので、是非併せて取り入れたいポイントです。
ジョージアンスタイルなら、6枚パネルデザインのドアとその上の明かり取り窓。そしてヴィクトリアンスタイルなら、ステンドグラス入りの4枚パネルドアが良いでしょう。
屋根に付いた煙突も英国スタイルの家のチャームポイントです。飾りの煙突が付くだけで、とたんに英国らしく、愛らしい印象の家になります。
インテリアでは、リビングに暖炉・マントルピース(暖炉周囲の飾り枠のことです)を設置することで、英国らしさが一気に増します。
このほか、小さなパーツも演出効果絶大です。ブラックアイアンのドア金物を使えば英国カントリーサイドのコテージの雰囲気が出ますし、真鍮製のドア金物を使えば、重厚な英国アンティーク家具の似合うクラシックな空間が完成します。
インテリアにおいても様式スタイルを大切にするのが英国流です。
出来るだけスタイルに沿った家具を置いて、統一感を出しましょう。
英国のアンティーク家具は、落ち着いた色味と派手過ぎないデザインが、日本人にも馴染みやすく人気です。
日本の家のサイズにも良く合う小ぶりなものも多く、伸縮式のダイニングテーブル(ドローリーテーブル)や、机部分が開閉式のデスク(ライティングビューロー)などは特に取り入れやすいアイテムです。
設備に関しては、洗面台やキッチンを英国スタイルにすることをお薦めします。洗面台は、ボウル・水栓ともにクラシックで凝ったデザインのものが多く、それだけで水廻りが華やかになります。中には、花柄など絵柄の入ったボウルもあり、毎回の手洗いや歯磨きも楽しくなりそうです。
キッチンは、優しい色でペイントされた木製のキャビネットが主流です。
設備機器というよりも、ぬくもりのあるお洒落な家具のようで、お客様にもお見せしたくなる自慢のキッチンになることでしょう。