ここ数年日本でも、北欧のテキスタイルを買えるショップが増えてきました。色鮮やかな植物や動物柄、幾何学模様、モダン、カジュアル、そのデザインの幅のなんと多いことでしょう。実はヨーロッパの中でも、特に北欧のテキスタイルデザインの洗練された美しさは、広く知られています。

素材は上質なコットン、リネンが中心で、これらの生地は、インテリア用ファブリックとして、カーテン、クッションカバー、椅子の貼り地、などに使われます。最近は特殊な溶剤を使って、部分によって透け感を出すポリエステル素材の薄い生地も、カーテン生地として人気です。

ところで、スウェーデンの人たちにとって、カーテンは窓を隠すためのものではなく、より綺麗に見せるためのもの、という考え方があります。

窓は外の明るい光をふんだんに取り入れるためのフレーム、カーテンはそこに彩りを添えるための欠かせないアクセサリーです。
特徴的なのはその使い方。窓の両脇にまるでタペストリーのように下げるだけで、寝室以外のカーテンは夜になっても閉めない人も多いのです。

では、部屋の中は外から丸見えなの？
―そうなのです。夜スウェーデンの町を散策していると、家々の窓からはオレンジ色のライトが外に漏れて、中の様子もしっかり見えてしまいます。それでも、カーテンは閉めないのです。

「なぜなの？」とスウェーデン人の夫に聞いたことがあります。窓際に置いた植物やオブジェ、ランプ、素敵なカーテンもせっかくきれいに飾っているのだから、見えたっていいじゃない？とのこと。日本人からすれば、ちょっとカルチャーショックな考え方ですが、確かに窓際が素敵な家は、通りを行く人の気持ちを楽しくさせてくれます。よく手入れの行き届いた美しい庭のお家の前を通ると、心が和むのと同じ感覚でしょうか。

ちなみに、一般的なスウェーデンのカーテンの縫製は、ヒダをたくさんとってドレープを作るスタイルよりも、フラットな縫製の仕方が断然ポピュラーです。その方が、生地に描かれた豊かなデザインがより見やすくなるからです。

スウェーデンのテキスタイルデザイナーたちは、ほんとうに優れたデザインを生み出しますが、それをさらに美しく見せる工夫ができる、スウェーデンの一般の消費者の美意識も相当高いのです。