お父さんのナイショ話〜ひそかな親ごころ〜

お父さんの気持ちを聞いてみたい! そんな好奇心から生まれた「お父さんのナイショ話」は、一般公募で選ばれたお父さんたちによる子育てリレーエッセイです。

vol.15 息子に性教育をするとき

「ただいま」
「お帰り」
帰宅したわが家のいつもの風景に、見慣れない女の子が学生服姿でニコニコ微笑みながら居間に座っている。
どこかで見たような気がするが名前が浮かばない。中三の次女の友達かなと、ふと思った。

「誰の友達かな?」
ソファに腰掛けながら、子供たちに聞く。「俺の」と嬉しそうに答える高二の長男。
「お前たち、ひょっとして結婚するつもりか」
思わず浮かんだ言葉がこれ。
もちろん胸の奥にしまいこんだ。こんなしょうもないこと言ってはいけないと自分に言い聞かせる。
はっきり言って動揺しているから、何を言っていいのか分からない。
しかし、息子も堂々としたもので、こんなに自然体で彼女を家に連れて来て、家族に紹介するとはとても意外。
これはいいことだと思ったが、想定外のできごとなので何も考えきれない。

ひとまずその夜は息子の彼女を車で家まで送った。
すると、彼女の高校がわが家のすぐ近くで、夏休み中ということもあり、毎週のようにわが家を訪問してくる。
結構物怖じしない、いい感じの子なので、父親としてもそう悪い気はしない。
だが、相手の娘さんの家族の場合はきっと心穏やかではないだろう。
実際、私も長女の高校時代に彼氏から電話がかかってきたとき、「君はどこの高校?」「家族は?」「住まいはどこ?」という感じで、ついつい口調が刑事のような尋問調になってしまった。
そのことが原因ではないが、結局娘とその彼氏は別れてしまった。でも実は、父親としての私はとても嬉しかった記憶がある。

「じゃあ部屋に行こうか」
頃合いを見て息子が彼女を自分の部屋に誘う。
トントントンと階段を上がる二人の足音が聞こえた。二階の子供部屋が開放的な間取りになっていることに感謝した。
そして、これはついに息子の性教育をしなければならいのかと思った。
長女の場合は家内がやってくれたので何も考えずにすんだが、今度はそうはいかない。

どこで何をどのように伝えるかで知恵を絞った。家内と密かに打ち合せをした後、息子を2階のベランダに呼び出した。少し身構えつつ息子がベランダにやってきた。
「おほん(咳払い)。そうだな、お前たち二人の交際を認める上で条件がある」
と切り出したのは、私。
息子は認めると聞いて、パッと笑顔になった。その場の空気が和んだ。
「まず夜暗がりで二人きりにならないこと」
「自分の部屋で遊ぶのはいいが、ドアや窓を閉め切らないこと」
「お互い高校生らしく節度のある交際をすること」
一番言いにくかったのはズバリ「SEXは責任の取れる大人になって結婚してから」ということ。誘惑に弱い男の性欲と、それに伴う男の責任をとくとくと説いた。

すると、「わかった。その通りにするよ」と、息子は意外なほどすんなりと素直に親の注意を受け入れた。息子の表情には別に不快な感情もふざけけた感じもなく、拍子抜けするほどスムーズな会話だった。
そして今でも息子の彼女は、時々わが家を訪問する。わが家に娘が増えたようで、ついつい口元がゆるんでしまうのはとても隠しきれない。


◆前回の執筆者からの質問
「子供が20歳になるとき、子供とどんな関係でいたいですか?」への回答◆

子供の悩みや問題を一緒に考えて、解決してあげられる関係が理想です。しかし、気がつけばすでに長女は24歳。父親にとって女の子はデリケートで謎の多い生き物。コミュニケーションは失敗だらけで、ひたすら反省の日々です。

 

次回の執筆者への質問

お金の教育を何歳くらいから始めましたか? あるいは始めたいと思いますか?

プロフィール

50までに復活ライダーさん
47歳、会社員。沖縄県在住。家族は妻(43歳)、長女(24歳)、長男(17歳)、次女(15歳)、次男(10歳)、犬(7歳)の5人と1匹。
趣味は、アウトドアで遊んでほのぼのすること。本や映画にハマること。教会や図書館に通ってトクした気分になること。

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ページ公開日:2008年9月20日
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