お父さんのナイショ話〜ひそかな親ごころ〜

お父さんの気持ちを聞いてみたい! そんな好奇心から生まれた「お父さんのナイショ話」は、一般公募で選ばれたお父さんたちによる子育てリレーエッセイです。

vol.14 笑顔のリレー

自分で言うのもなんですが、
2歳を過ぎた娘は、なかなか愛嬌があって、
よく言葉をしゃべり、
よくいろんな歌を適当に歌い、
そしてよく笑います。

そして、それは多くの人の笑顔を呼んでいるように感じます。

たとえば、
娘を連れて八百屋に行けば、
八百屋のおばさんがやたらと微笑んでくれます。

娘を連れて近所を散歩すれば、
通りすがる人や、はたまた散歩の犬さえも(?)が、
笑顔であいさつをしてくれます。

父を亡くしてしばらく気持ちが沈んでいた僕の母も、
娘が生まれて以来、すっかり笑顔が戻りました。

子供の笑顔は、本当にすごい力を持っています。
それゆえ、子供の笑顔を意識して子育てをすることは、
やはり欠かせないように感じます。

ところで、僕は、娘の名前を決めるとき、
こんなことを考えました。

“現代はまれにみる超ストレス社会。
皮肉にもそんな時代に生まれた彼女のこれからの人生は、
何かを憎みたくなることが少なくないかもしれない。

でも、だからといって
その憎しみを憎しみで返してばかりいては、
いつまでたっても争いが収まらない。
悲劇は絶対繰り返しちゃいけない。

つらいことや苦しいことがあっても、
憎しみや恨みを表すのではなく、ぐっと耐え、
努めて笑顔を返せる人間として成長してほしい。”

と。

僕は彼女の名前にそんな思いを込めました。

そして、だからこそ、まずは僕が、
娘の笑顔に笑顔を返すことに努めるようにしています。


ところで、僕の子育てのみならず、
娘の笑顔の原点には、僕の父、
つまり彼女のおじいちゃんの存在が、
あるように思えてなりません。

おじいちゃんは、娘が生まれる7年前、病に倒れて天国へ逝きました。
団塊世代ゆえか、とにかく厳格でしたが、子供が大好きで、
子供たちの前では、いつも素敵な笑顔を見せる人でした。

きっと孫を抱くまでは生きたいと強く思っていたことでしょう。

でも、大丈夫。
叶わなかったおじいちゃんの思いは、
笑顔という手段によって、おじいちゃんから僕へ、
そして、僕から娘へとしっかり受け継がれています。

笑顔は必ずリレーするのです。

毎日、仏壇の前で手を合わせ、
写真でしか見たことのないおじいちゃんに、
笑顔で呼びかける娘の声は、きっと天国に届いているはず。

娘がいつまでも同じ笑顔で笑えるように。
娘の笑顔が世界中の人々の笑顔につながるように。

そんな思いで今日も、そしてこれからもずっと、
娘が笑顔になるたびに、僕は笑顔を返します。



◆前回の執筆者からの質問
「子育てで感動したことは何ですか?」への回答◆

出掛けに見送ってくれた後、姿が見えなくなってから、「パパぁ!早く帰ってきてね。」と大きな声が聞こえて感動しました。僕の存在が必要とされていると、心から感じました。

 

次回の執筆者への質問

子供が20歳になるとき、子供とどんな関係でいたいですか?

プロフィール

松本祐一さん
33歳、会社員。東京都町田市在住。妻(33歳)、長女(2歳4か月)と3人暮らし。趣味は旅行、ミュージカル鑑賞、ゴルフ(最近始めました!)。

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ページ公開日:2008年9月6日
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