お父さんのナイショ話〜ひそかな親ごころ〜

お父さんの気持ちを聞いてみたい! そんな好奇心から生まれた「お父さんのナイショ話」は、一般公募で選ばれたお父さんたちによる子育てリレーエッセイです。

vol.11 大切な時間

2007年3月、わが家に待望の第一子が生まれた。
妻が2か月間の産後休暇を取った。そこで問題が判明した。
妻の職では、育児休暇が取れないことがわかったのだ。また、今の職を辞めるつもりもないという。

それならば、と私は上司に掛け合った。幸い、私の勤める会社では、男性でも育児休暇を取れる制度がある。ただ、前例はなかった。
当然、上司からは猛反対にあった。
それでも、制度がある以上、意志の固まった私を止めることはできなかった。
こうして私は、それからの2年間を専業主夫として生きることになったのである。

周りの反応はさまざまだった。
一番多かったのは、「いいなあ、これから仕事しなくていいんだろ。好きなことできるじゃん」という反応。私もまんざらではなく、笑っていた。
「空いた時間に好きな読書でもしよう」なんて、本気で思っていたのである。
今思い返すと、いい気なものだ。

そして主夫生活がスタートした。
始まってみてびっくり! 息子と遊び、おむつを換え、ミルクをあげ、泣けばあやし、散歩に出かけ、お風呂に入れて、料理をして、とするうちに、1日があっという間に過ぎていく。
寝る前に思い出してみても、今日一日何をしたのかわからない。すっかり会社での成果主義に染まってしまった頭では、今日のアウトプットがないことに、かなりの不安を覚える。
かと言って、ぼーっとしていたわけではないのだ。
誰にともなく、言い訳をしてみる。
でも、昼間は家で息子と二人っきり。そんな言い訳を聞いてくれる人もいない。

「空いた時間に読書」なんて夢物語だったのだ。そのとき初めて気がついた。
もっと楽なものを想像していたのに、だまされた気分がした。
でも、始まってしまったものはしょうがない。やるしかないと自分に言い聞かせた。

そんな生活も、いつの間にか2か月が過ぎた。
私もだんだん慣れてきて、この生活を楽しむ余裕が出てきた。
毎日午後3時の散歩。これが最近の私のお気に入りだ。
平日の真昼間を、ベビーカーを押して、のんびり歩く。最初は、周りの好奇な視線に戸惑った。でも、今ではもう慣れっこだ。
そんなことよりも、息子と一緒に過ごせるこの時間を、今は楽しんでいる。

そして何よりもうれしいのは、息子も私との散歩を楽しみにしてくれているということ。もうすぐ生後4か月を迎える息子は、最近表情が豊かになってきて、うれしいときにはにこっと笑う。
「さあ、今日も散歩に行くよ」とベビーカーに乗せると、この笑顔を見せてくれるのだ。
まだ言葉は話せない息子だが、この笑顔で十分、気持ちは伝わる。
この笑顔を見るたびに、明日もまた頑張ろうと思える。

子供の日々の成長を、一番近くで見守れる幸せ。きっと、他のお父さんには体験することのできない、とても大切な時間だ。
空いた時間なんて、なくていい。今はただ、この幸せをかみしめながら、一日一日を大切に生きていきたい。


◆前回の執筆者からの質問
「子供と一緒に行ってみたい海外の国はどこですか?」への回答◆

カナダ。20代のころ1年間滞在した国だから、子供を連れて思い出の地をまわりたいです。

 

次回の執筆者への質問

理想の父親像は? また、父親としての自分に点数をつけるなら、理想に対して何点?

プロフィール

よしだよしおさん
30歳、会社員。現在は2年間の育児休業中。東京都在住。妻(30歳)と長男(4か月)の3人家族。趣味は旅行。「子供ができてからなかなか行けません。なので今は、息子との散歩が趣味です」。

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ページ公開日:2008年7月12日
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