お父さんのナイショ話〜ひそかな親ごころ〜

お父さんの気持ちを聞いてみたい! そんな好奇心から生まれた「お父さんのナイショ話」は、一般公募で選ばれたお父さんたちによる子育てリレーエッセイです。

vol.7 伝えるもの、教えるもの、そして……

「駄目なものは駄目なんだよ」
「何でさぁ……」
「お父さんが駄目と言ったら駄目なんだ」
「……」
春には二年生になる次男坊が、不機嫌な顔つきで私の顔を見ているのである。
誕生日のプレゼントの話なのである。
「携帯ゲームがいい!」と私に言ってきたのだが、私が反対した。理由を尋ねる息子に「駄目なものは駄目」と言ったのだ。

断っておかなくてはいけないが、「ゲームに反対」なのではない。私も納戸にしまってあるゲームで年甲斐もなく遊ぶときがあったからだ。
遊びに出掛けた先や、子供の行事などに行くと、携帯型のゲームで遊んでいる子供をよく見かけるのだが、これだけはいただけない。
「静かにしているし、何よりも本人が楽しいのだから良いじゃない!」と反論を受けることを覚悟で書いてしまえば、「それは親として今やるべきことを手抜きしている言い訳ではないか?」と思う。

次男坊の年くらいの子供はいろいろなモノを見たり、感じたりする時期なのではないかと思う。そんな大切な時期なのに、どこへ行ってもゲームに夢中では、大切な時期を逃してしまうのではないかと思う。
今はいろいろなことを見聞きして泣いたり、笑ったり、怒ったりする時期だと思う。いろいろな経験をするからこそ選択肢の幅も広がるのだと思う。
だから「今の時期で携帯型ゲーム機は駄目」なのだ。

わが家は長男を筆頭に、男ばかりの三人兄弟。
長男は医療過誤にあってしまい、重複障害を持っている。
子供心に、「お兄ちゃんはほかの人と少し違う」と三男坊も感じていると思う。時折、周りの人たちが色眼鏡で見ることもあるかもしれないが、そんなことはどうでもいい。
買い物に出掛けたときや遊びに出掛けたときなども、どちらかが言うまでもなく長男の手を取って私たちの代わりをしてくれる優しさには、本当に頭が下がる思いだ。
お前たち二人が大人になり、この家から独立した後、カミさんと長男の三人で、慎ましく暮らしていくだけの、幾らかの貯蓄をすることが精一杯だろうと思う。

私も男4人兄弟の末っ子として育てられたけど、お前たちのお爺ちゃんからは「独立独歩でやっていきなさい」と教えられた。
それは「自由」ということと同時に、「自分で判断し責任を負う」が一緒になっていることだと気がついたのは、カミさんと結婚してからだ。
お前たちに、残せるモノがあるとすれば「お爺ちゃんの教え」であり、「自分で考え、判断し、行動する」ということくらいだと思う。
そして、今の時代は何が良いのか判りにくいけれど、「どんなに時代が変わっても人としての基本は絶対に変わらない」ということ。

誕生日には家庭用ゲーム機を買ってやろう、みんなで遊べばいいと思う。
「駄目なモノは駄目」は理不尽に聞こえるが、それは世に出ればたくさん経験することで、時には「我慢」だって必要になる。
普段は理由を話す私が、今回だけはなぜ言わないのか?
お前たちが大人になれば、きっとわかる。

みんなから元気を貰っている父さんより。
長男へ、優しい二人へ、そして妻へ。


◆前回の執筆者からの質問
「これから子供と一緒にしたい体験は?」への回答◆

一緒に泣いて、一緒に笑って、一緒に怒って、思い出を作ってあげたい。

 

次回の執筆者への質問

「自分に似ているなぁ……と感じるときは?」

プロフィール

まさたろうさん
会社員、38歳。栃木県在住。妻38歳、長男10歳、次男7歳、三男4歳の5人家族。趣味はモーターサイクル、ジェットスキー、ゴルフ、スキー、読書、料理。

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ページ公開日:2008年2月22日
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