お父さんのナイショ話〜ひそかな親ごころ〜

お父さんの気持ちを聞いてみたい! そんな好奇心から生まれた「お父さんのナイショ話」は、一般公募で選ばれたお父さんたちによる子育てリレーエッセイです。

vol.6 「生ゴミ」にしないで!

ウチには二人の幼い子供がいる。しかし、仕事が忙しく、平日は帰宅すると寝る準備をしているか、すでに寝ている。
休みの日も、当たり前のように休日出勤の日々。明らかにコミュニケーション不足。今はまだよいが、大きくなったら「生ゴミ」みたいな扱いをされてしまうかもしれない。それだけは、なんとしても避けたい!
妻にも「このままだとやばいよ」なんて言われる始末。わかっている。親離れする前の今が大切だってことぐらい、わかっているのだ。

そんなとき、妻が「子供の小学校入学までに家を建てたい」なんて言い出した。
「オイオイ、家なんてまだいらないよ。アパートの方が気楽だし、土地だってないし、ましてローン地獄なんてヤダよ」
たまの休みに、妻に連れられ渋々展示場に。そこは住宅公園で、20件くらい家が並んでいた。とりあえず、端から順番に見ることにする。しかし、私は3件廻って飽きた。

「木造? 鉄骨? ツーバイフォー? 俺にはみんな同じにしか見えねーよ! 貴重な時間を返せー!」
外で待つことにする。ふと見るとなんか気になる家がある。屋上のある家だ。妻を待ち行ってみる。二階からさらに階段を上り、扉を開く。
思い出した! 遠い昔の記憶を!

子供のころ、校庭の真ん中に寝転がり、空を見るのが好きだった。
空の中心はどこまでも高く、青く、宇宙まで見えているようだった。普段見慣れている端っこの方と、明らかに違っていた。
そして、見渡す限りの空がまるで、宙に浮いているかのように感じさせたものだ。
それから、二階の屋根に登ったことがあった。そこにはあの校庭と同じ景色が広がっていた。住宅地に突如出現した360度の空間。その驚きが、より感動を際立たせた。

屋上は、それと同じ景色だったのだ。
「あ−、子供たちとあの感動を共有できたら、コミュニケーション不足も3年分くらい取り戻せるかもしれないな。いやいや、屋上でシャボン玉飛ばしたり、天体観測やバーベキューなんかしたら、5年分は軽い!」
そんな妄想をしていたら、がぜん建てる気になった。
「土地探し? ローン地獄? まとめてかかってこい!」

それから、トントン拍子に事が進み、約1年後に屋上付きマイホームが完成した。
いよいよである。あの感動を共有する時がきた。
屋上に人工芝を敷き、子供たちと横になる。うーん、やはりあの時と同じ空だ!
子供たち「あ、飛行機が飛んでるー」「あの雲、恐竜みたーい」。うんうん、そうかそうか。それから?? えっ、寒いからおウチに入る? なにー! もう飽きたダー?

取り戻せたのは3年分どころか、いいとこ3日分くらいだった。トホホ……。
子供たちよ……、大きくなってもパパのこと「生ゴミ」にしないでネ!


◆前回の執筆者からの質問
「子供が生まれて自分の何かが変わりましたか?」への回答◆

自分の時間ははるかに少なくなったが、毎日が充実するようになった。子供の成長は早く、日々いろいろなことができるようになり、それを見ているのがとても楽しい。
親として一緒に成長できればいいのだが、私はまだまだ「ガキ」です(カミサンはずいぶんと親らしくなったが)。

 

次回の執筆者への質問

「これから子供と一緒にしたい体験は?」

プロフィール

シド@BNR32さん
会社役員の37歳。妻37歳、長女7歳、長男5歳の4人家族。昨年の春、マイホーム完成。趣味は車(MTに限る)、自転車旅行、登山、洞窟探検など。

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ページ公開日:2008年2月8日
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