お父さんのナイショ話〜ひそかな親ごころ〜

お父さんの気持ちを聞いてみたい! そんな好奇心から生まれた「お父さんのナイショ話」は、一般公募で選ばれたお父さんたちによる子育てリレーエッセイです。

vol.8 ちびっ子ヒーロー

うちには4歳になる「ヒーロー」がいる。
最近では「ママは僕が守る!」なんて一丁前なことを言い出しましたが、ここまで来るには結構大変でした。
1歳くらいかな? 歩き出してすぐのころは、ある意味「外出恐怖症」になりかけたように思います。同じくらいの子供とすれ違うときに、突然襲い掛かるんです! ガリッって、爪で。
相手のお子さんには申し訳ないし、ご両親には申し訳ないし……。うちの「ヒーロー」の爪の餌食になってしまったお子さまたち、ごめんなさい。

そんなときです、わが家に「父と息子の2人だけの会議室」が出来上がったのは。
まだうちのヒーローがヒーローになっていない「半熟ヒーロー」だったころ、聞き分けがないとき、悪さをしたとき、かみさんの手には負えなくなったとき、「会議室」に集合がかかりまして、軽いミーティングが行われます。
和室を閉め切って、まずは「泣くな!」。
こんなフレーズからスタートした記憶があります。
1歳半の乳飲み子と29歳の成人男性の真剣勝負です。目線を合わせ、泣き止むのを待ち、本気で話し合いました。
言葉はまだ喋れないので、半熟ヒーローはジェスチャーで。
不思議なもので、最初は気持ちが伝わらないことにまた泣き出したりしていましたが、そのうち大きくうなずいたり、大きく首を振ったり、手を使って表現してきたり、そして最後には2人で抱き合って終了。
こんなことを繰り返しながら2歳になり、3歳になり、幼稚園に行きだしました。

ある日、嫁さんが私にこんな話をしてきました。
「今日、幼稚園でお友達の顔面に蹴りを入れた。その子のお母さんに、けんかはいいけど顔はやめてねと言われた」と。
しかし、先生に怒られ、嫁さんにそんなことしちゃ駄目と言われても、反省をするどころか……ほぼ無視! らしい。
私は馬鹿なパパ。
ちょー親馬鹿です。
親馬鹿でない親は馬鹿なんて思ってるくらい親馬鹿です。
何となく、直感でこの子にはこの子の理由があるはず! なんて考えまして、「よし! ちゃい(私は子供をこう呼んでます)風呂入るぞー」

そして、お風呂でまたまた2人で話し合いました。
「絶対に怒らないから、何で○○ちゃんの顔を蹴ったのか教えて?」
そして、ちゃいの言い分はこうでした。
そのお友達が悪いことをしたと、ジャングルジムの登ってはいけない方から登ってきた、危ないから注意したのに聞いてくれなかったから蹴ったと……(そこで蹴るほうが危ないじゃん)。
「ちゃいの気持ちはわかった。でも、もしちゃいが幼稚園でほかのお友達に蹴られたりして怪我したら、パパとママは嬉しいと思う? 悲しいと思う?」
「悲しいと思う」
「じゃあ、○○ちゃんのママは今嬉しいと思う?」
「悲しいと思う」
「でしょ? だから何があっても顔を蹴ったりしたら駄目なの、もし、今度同じようなことがあったら、お話をして教えてあげて。わかった?」
「お話をしてもわからんかったら?」
「もっとお話するの、わかってもらえるようにお話するの、わかった?」
「わかった、もう僕はお友達を蹴ったりしない!」

それから、今では私が早く帰ったときなどは報告会が行われるようになりました。
「今日はお友達に意地悪されてもやりかえさんかった! 僕強いけ!」
「そうそう本当に強いのはやり返すことじゃないもんね、えらいなぁ、ちゃい」
「今日はパパが帰って来るまでママを守っとったよ」
「そっかーえらいなぁ、男の子は女の子を守らんとね」
そんなこんなで、今では私の心強い「ちびっ子ヒーローちゃい」がわが家の平和を守ってくれています。


◆前回の執筆者からの質問
「自分に似ているなぁ……と感じるときは?」への回答◆

何といっても右投げ左蹴り。私もそうですが、これは結構感心しました。親子って変な所が似るもんだなぁと思ったことを覚えています。あとは泣き虫なところですね。私も小さなときはよく感極まり泣いていたのを覚えています。

 

次回の執筆者への質問

子供を見ていて「親子だなぁ」と思う行動やしぐさは?

プロフィール

ちゃいパパさん
会社役員、32歳。広島県広島市在住。妻(33歳)、長男(4歳)の3人家族。

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ページ公開日:2008年3月8日
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