お父さんのナイショ話〜ひそかな親ごころ〜

お父さんの気持ちを聞いてみたい! そんな好奇心から生まれた「お父さんのナイショ話」は、一般公募で選ばれたお父さんたちによる子育てリレーエッセイです。

vol.19 お父さんの子育て奮闘記―サンタへの手紙

我が家では、子供達が15歳になるまで、サンタクロースが本当にいると信じられるように様々な演出をし、クリスマスを迎えてきた。子供達が通っていた幼稚園の牧師先生が、15歳になるまでサンタを信じさせることで、心に「信じる」という小部屋を育むことができる、という話をしてくれたことがキッカケだ。

父親の私は、子供たちがサンタの存在を信じられるよう、この15年間色々と努力を重ねてきた。それには理由がある。長男が2歳、長女が1歳の時から、我が家は父子家庭として親子3人肩を寄せ合って生きてきた。大人の勝手で、子供達に悲しい思いをさせた。選択肢も与えず、今の生活を受け入れさせた。子供達にとって信じることの原点である母親を、彼らから奪い取ってしまった罪は重い。そんな彼らの心に、「人を信じる」という種を蒔くことは、唯一私にできる罪滅ぼしであった。

罪を背負ったサンタの役目は大きい。サンタへの手紙に書かれた希望プレゼントとは別に、私自身からのクリスマス・プレゼントも買い揃える。クリスマス・イブには、子供達を早く寝かしつけ、寝息を確認するや、眠りの記憶に残るよう鈴の音を微かに響かせる。ツリーの根元に飲みかけ食べかけの紅茶とクッキーを用意して、隠してあったプレゼントを並べる。早朝、「今年も、サンタさん来てくれたみたいだよ」と言って、子供達を起こす。これが、我が家の恒例行事だ。

昨年は少々問題が発生した。例年通り、子供達はサンタへ手紙を書いた。ところが、我が家のツリーには、息子の手紙しか飾られていなかった。サンタへの手紙がないことは、私にとって一大事だ。何故なら、娘が何をサンタに頼んでいるかわからないからだ。その上、終業式まで帰宅しないといっていた。終業式後では、サンタからのプレゼントが間に合わない。驚き慌てた私は、私立中学の寮に入っている娘に直ぐ電話をした。

「サンタへの手紙はまだかな?」と冷静を装って電話で娘に訊いてみた。すると娘は、「大丈夫だよ、サンタへの手紙は寮のツリーに飾っておいたから」と屈託なく答えた。「あっ、そうか。だけど、サンタわかるかな?」と、私はかなり動揺した。すると娘は、「サンタは空飛んで来るから、大丈夫でしょ」と笑った。困り果てた私は、「だけど、サンタは手紙が置いてあった場所にプレゼント持ってくるらしいよ」と娘に告げた。すると、「ウソ」と今度は娘が動揺した。「クリスマスは冬休み中だから、寮は閉まっているよね?」と私は畳み掛けた。娘は間髪を入れず、「明日、サンタへの手紙送るから、お家のツリーに飾っといて」と言った。私は胸を撫で下ろした。

一件落着だ。正直、一時はどうなるかと思った。しかし、娘は15歳になってもまだ、サンタが来ることを信じてくれていることがわかった。これほど、嬉しいクリスマス・プレゼントはない。思わず15年間のクリスマスの思い出が蘇ってきた。長かった。でも、素敵なクリスマスばかりだった。


◆前回の執筆者からの質問
「今、一番子供にしてあげたいことは?」への回答◆

背伸びをせず、自分の歩幅で、自分らしく人生を歩む幸せを伝えてあげたい

次回の執筆者への質問

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プロフィール

恩田将葉(おんだ しょうよう)
1959年8月生れ。 カリフォルニア州立大学で国際関係学を専攻、政治や国際情勢を学び、朝鮮半島問題専門で卒業。アメリカで約10年間の会社経営の後帰国。編集者、記者を経て、株式会社政財界出版社と株式会社内外タイムス社社長を歴任。現在はフリーランスとして、国際情勢、政治をはじめ、ジャンルを問わぬ執筆活動を展開中。映画「クレーマークレーマー」を彷彿とさせるパパさんライターとしても知られる。
48歳、長男(16歳)、長女(15歳)、母(73歳)と4人家族。

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ページ公開日:2008年8月6日
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