お父さんのナイショ話〜ひそかな親ごころ〜

お父さんの気持ちを聞いてみたい! そんな好奇心から生まれた「お父さんのナイショ話」は、一般公募で選ばれたお父さんたちによる子育てリレーエッセイです。

vol.5 ひとりで読書

幼稚園の年中に通う息子のさいちゃんは、絵本が大好き。園や図書館から毎週借りてきては、妻や僕に読んでくれとせがみます。
もちろんこちらも最初は笑顔で引き受けますが、何度も要求されるとしだいに声もかれ……。「おしまい!」の一言に納得できないさいちゃんと、けんかになることもしばしば。
こんなときは、早くひらがなくらい読めるようになってよ、という気分にもなります。先日届いたダイレクトメールには、読むどころかそろそろ書く練習を始めましょう、なんて書いてあったし。

一方で、自分の子供時代を思い出してみると、ひらがなを書く練習は小学校で初体験、読むほうも年長くらいだったと思います(祖父に教わったので、「てふてふ」とか「〜でせう。」なんてのもありました)。
それならそんなに慌てなくてもいいのかなと思う反面、「時代も違うし、小学校でさいちゃんだけひらがなを書けなかったら……」とか、「それどころかいきなり授業について行けなくて学校がつまらなくなったら……」など、心配の種も尽きません。

そういえばさいちゃんが2才になったばかりのころ、おばあちゃんにもらったアルファベット練習用のおもちゃを気に入って正解連発していたことがありました。
ならば、好きなネタでやる気にさせればあるいは? と、「これはカブトの『か』、次はカブトの『ぶ』、じゃあ次のこれは?」「……(さいちゃん考え中)……『か』?」なんてとんちんかんな問答をくり返したり。
ほかにも、先日さいちゃんが絵本を開いて内容を声に出してしゃべっているのを見かけ、知らぬ間に読めるようになった! と狂喜乱舞したら、なんと聞いた内容を覚えて暗唱しているだけだった、なんてことも。

でも、文字はからっきしのさいちゃんも、ブロックを真剣な表情で組み立てて立派なロボットを作ったり、雑誌付録のプラネタリウムを気に入って毎晩天井に映して見ていたり、自分が歩くと月も一緒についてくるのを不思議がったり、テレビで聞いた歌を楽しそうに歌ってみせたり……。
毎日、全身で世界の秘密を探検しているみたいです。
そんな考える力、感じる力を身につけることは、親や学校ではなかなか教えることができないから――外の世界へのセンサーが急速に開いてきたこの時期に、本人がやりたいことを精一杯やらせてあげられれば――なんて、いつも結局はそんなところに落ち着くのです。

そして、今日もさいちゃんは絵本を持ってやってきます。
いつか自分で必要だと感じたとき、きっとひとりで読めるようになるのでしょう。今までもそうだったように。
そのときは、僕が子供のころ読んで目を輝かせていた――広い宇宙の謎を教えてくれる図鑑、未来からやってきて便利で楽しい道具を出してくれるロボットの話、パイプゆらしてどんな難事件も見事に解決してみせる名探偵――いろいろな本を教えてあげられるのにな。やっぱり早くひらがな読めるようになってね、さいちゃん。


◆前回の執筆者からの質問
「子供が生まれて最初に考えたことは?」への回答◆

目の前のこの子は、僕の一番大事な人が命を懸けて僕たちのもとに送り出してくれたんだということ。この大切な命を全力で守り育てていかなければいけないということ。そんなことを漠然と考えながら、妻への感謝で涙がこぼれそうになっていました。

 

次回の執筆者への質問

「子供が生まれて自分の何かが変わりましたか?」

プロフィール

さいパパさん
34歳、会社員。夫婦+子供1人の3人家族。趣味は読書(好きな作家は篠田節子と小川洋子)。

【読者アンケート】

この記事の感想



※コメントはイエマガ内で掲載させていただく場合がございます。

性別


←Vol.4


ページ公開日:2008年1月18日
ページのトップへ戻る