昨年、家を建てました。結婚して10年目のことです。それまではずっと借家住まいでした。借家と言っても少し変わっていて、1階が大家さんが経営する会社の事務所で、我が家はその2〜3階を間借りする形でした。大家さんは非常に良い方で、会社の駐車場で行われるバーベキューに呼んでくださったり、庭で取れた果物を持ってきてくださいました。
でも、私たち夫婦は家を買うことを選択しました。一つには、財産になること。もう一つは、子どもの成長を考えてのことでした。借家はとても古い建物で冬寒く夏暑いため、子どもたちは霜焼けやアセモに悩まされました。また、住宅設備が壊れた時に自分の判断ですぐ修理できなかったことがあり、ストレスになりました。大家さんの好意で家賃は相場よりかなり安くしていただいてたので、修理代が大家さんから「折半で」と持ちかけられても強く出られず、結局折半にしたのですが内心は「大家負担のはずなのに」と納得できませんでした。それ以後、自分の家は自分の判断で維持したいと強く考えるようになりました。
さて、家は財産になると書きましたが、どんな家でも財産になるわけではありません。建物は時間が経てば価値がなくなるので、土地の条件には妥協しませんでした。不動産屋さんを周ったり自分の足でも探したりして粘ること8年目、理想の土地が見つかりました。運良く購入話はトントン拍子に進み、良い工務店さんと出会って住みやすい家を建てました。新しい家でも住宅設備の故障は何回か起きていますが、すぐ修理をお願いすることができて満足しています。
実は上棟式の直前に大家さんが病に倒れ、会社は廃業することになりました。私たちは上棟がすんでから大家さんに家を建てることを報告するつもりだったのですが、それも叶わず大家さんは1年後に亡くなられました。会社が廃業することが決まった時点で社員の方々が我が家に来られ、「この建物もいずれ競売にかけられます。まだしばらくは住めると思いますが、新しい家を探された方が良いと思います。社長も心配しています。」と言われました。我が家はたまたまタイミングが良かったのですが、突然家を探せと言われたら困っていただろうなと思いました。